ALS(筋萎縮性側索硬化症)に負けないで
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G-CSFはSOD1変異モデルマウスの骨格筋機能不全を改善する
▽G-CSF(Granulocyte Colony-Stimulating Factor)はSOD1変異モデルマウスの病態改善効果があることが報告されてきました。しかしながら、G-CSFが骨格筋や筋芽細胞に直接的な効果を有するのかどうかはよくわかっていませんでした

▽今回、研究者らは、G-CSFとその類似体であるpegfilgrastim(PEGF)のSOD1変異モデルマウスの骨格筋マーカーや筋芽細胞に与える影響について調べました

▽その結果、PEGFは、モデルマウスにおいてその受容体であるCsf3rの発現増加をもたらし、変異SOD1蛋白質に起因した骨格筋マーカーの増加を減少させることがわかりました。さらに筋芽細胞の増殖を直接的に刺激することがわかりました

▽以上の結果は、G-CSF類似体であるPEGFがALSモデルマウスにおいて病態改善効果を有することを示唆しており、G-CSFとPEGFが骨格筋における直接的な病態緩和作用を有することを示唆するものです

(この研究は、スペイン、Universidad de Zaragoza-CITAのRandoらにより報告され、平成28年8月20日付のNeurodegenerative Diseases誌に掲載されました)
BDNFはALS細胞モデルの機能的回復を促進する
▽ALSにおいては、BDNF、IGF-1、FGF-2、VGFなどの神経栄養因子のmRNA濃度が減少していることが報告されています。孤発性ALS患者由来の髄液を用いた細胞実験においても同様の現象が再現されています

▽今回、研究者らは孤発性ALSの細胞モデルを用いてBDNFの作用について調べました。

▽ALS患者由来の髄液に暴露されたNSC-34細胞を用いて、内因性BDNF発現量、BDNF受容体のTrkB、リン酸化ニューロフィラメントなどが測定されました

▽その結果、モデル細胞においては内因性BDNF発現量の減少がみられました。BDNF投与により、減少していた内因性物質の発現量の回復がみられました。またカルシウム代謝の正常化によるアポトーシスの抑制作用も推測されました。一方で細胞内器官の構造変化については部分的にしか回復しませんでした

▽以上の結果は、BDNF投与が部分的に変性変化を改善しうる可能性を示唆するものです。しかし全ての変化を改善しうるわけではないことから、BDNF以外の栄養因子の投与も必要である可能性が示唆されました。BDNFのALSに対する有効性に関する臨床試験の結果が芳しくなかった理由の1つである可能性があります。

(この研究は、インド、National Institute of Mental Health and NeurosciencesのShruthiらにより報告され、平成28年9月13日付のNeurodegenerative Diseases誌に掲載されました)
特定のRNA結合蛋白質がALSの一部の病態に関与する可能性
・ScienceDailyの10月20日付記事からです

▽遺伝性ALSはALS全体のわずか10%を占めるのみですが、それらの多くがRNAに結合する蛋白質の変異に起因するものです。カリフォルニア大学の研究者らは、今回RNA結合蛋白質であるhnRNP A2/B1の変異に起因したALSの病態について調べました

▽10月20日付のNeuron誌に公表された結果です。研究者らは、まずALS患者の皮膚検体を採取し、hnRNP A2/B1変異の有無について調べました。その結果4名中3名においてこの蛋白質の遺伝子変異がみられました。

▽さらに、研究者らは、採取した細胞からiPS細胞を作成し、そこから運動神経細胞を分化誘導しました。この細胞における変異hnRNP A2/B1蛋白質の影響を調べるために、数千種類の遺伝子の活性が調べられ、健常者と比較されました。

▽その結果、ALSに関連したhnRNP A2/B1変異は、核内の不溶性hnRNP A2/B1蛋白質の増加によると思われる、RNAの広範なスプライシングの異常をもたらし、運動神経細胞死をもたらすことが明らかになりました

▽また、ALS患者由来の運動神経細胞をストレス下に暴露すると、健常者由来細胞と比較して、hnRNP A2/B1蛋白質がストレス顆粒中に凝集しやすいことが明らかになりました。

▽ストレス起因性の過剰反応を弱めるような治療戦略や、これらRNAをターゲットにした治療法開発が、異常蛋白質の発生を防ぎ、治療戦略として有望な可能性があります

引用元
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/10/161020120832.htm
C9orf72蛋白質はコフィリンと相互作用し運動神経細胞におけるアクチンの動態に影響を与える
C9orf72遺伝子のイントロン領域における6塩基繰り返し配列の過剰伸長はALSと前頭側頭型認知症をもたらす遺伝子異常としてしられています。しかし、ALSの病態を主因となるものが、機能喪失なのか、過剰伸長RNAなのか、⾮ATG依存性翻訳によるジペプチドなのか、よくわかっていません。

▽今回、研究者らは、運動神経細胞におけるC9orf72のインタラクトーム解析を行い、C9orf72蛋白質がコフィリンやその他のアクチン結合蛋白質との複合体中に存在することを見出しました

C9orf72遺伝子除去運動神経や、ALS患者由来リンパ芽球、患者iPS細胞由来運動神経細胞においては、コフィリンのリン酸化が亢進していました。C9orf72蛋白質は低分子GTP結合蛋白質であるArf6とRac1の活性を調節し、LIMK1/2(LIM-kinases 1および2)の活性亢進をもたらしました。このため、C9orf72遺伝子を除去すると、運動神経における軸索のアクチン活性が減弱することがわかりました。

▽C9orf72蛋白質は、正常機能として、軸索のアクチン動態を制御している低分子GTP結合蛋白質の機能を調整していることがわかりました。

(この研究は、ドイツ、University Hospital of WuerzburgのSivadasanらにより報告され、平成28年10月10日付のNature Neuroscience誌に掲載されました)
血液中の抗体がALSのバイオマーカーや重症度の指標になる可能性
・ALS NEWS TODAYの10月6日付記事からです

▽sulfoglucuronosyl paragloboside (SGPG) と呼ばれる糖脂質に対する抗体の一群は神経疾患と関連があることが指摘されてきました。

▽SGPGは運動神経細胞膜に発現し、免疫系の異常により抗SGPG抗体が産生され、運動神経を攻撃する可能性があります

▽これまでALS患者の一部において、抗SGPG抗体の存在が指摘されてきました。今回、研究者らは113名のALS患者と50名の健常者を対象に抗SGPG抗体の存在の有無などを比較しました。

▽その結果、ALS患者の13%において抗SGPG抗体が検出されました。またALS患者において、高齢であるほど、また疾患の重症度が高いほど、抗SGPG抗体の存在率が高まりました。抗SGPG抗体の存在は、ALSのバイオマーカーになりうるのみならず、新たな治療戦略の開発においても有用である可能性があります。

引用元
https://alsnewstoday.com/2016/10/06/antibodies-may-serve-as-biomarkers-diagnosing-als-and-disease-severity
オリゴデンドロサイトと運動神経細胞死の関連性
▽オリゴデンドロサイトはALSの病態に寄与している可能性が近年報告されています。今回研究者は試験管中での実験によりSOD1変異マウス由来のオリゴデンドロサイトが、健常マウスの運動神経細胞の過活動性をもたらし、運動神経細胞死をもたらすことをみいだしました

▽さらにヒトALS患者由来のオリゴデンドロサイトを作成し、それらの培養液を投与した場合や、共に培養した場合に、運動神経細胞死が生じることがわかりました。

▽培養液による運動神経細胞死は、乳酸産生と放出の減少と関連していることがわかりました。一方共生培養した際には乳酸の産生とは関連せず、可溶性因子以外の関与が考えられました。

▽ヒトSOD1ショートヘアピンRNAを投与し、オリゴデンドロサイトが未成熟な段階で、SOD1遺伝子の発現阻害をしたところ、運動神経細胞死が阻害されました。一方オリゴデンドロサイトが成熟後に投与しても、効果はありませんでした。

▽早期からのSOD1遺伝子のノックダウンは細胞毒性を回復しましたが、C9orf72遺伝子の過剰伸長を有する細胞においては、効果はみられませんでした。

▽以上の結果は、SOD1遺伝子変異は直接的ないし間接的にオリゴデンドロサイトの毒性発揮に関与しており、早期からのSOD1阻害により病態改善効果が期待できる可能性を示唆するものです

(この研究は、イギリス、University of SheffieldのFerraiuoloらにより報告され、平成28年9月29日付のPNAS誌に掲載されました)
蛋白質凝集を阻害する新たな発見
・ScienceDailyの9月22日付記事からです

▽ノースカロライナ大学の研究者らは、SOD1蛋白質凝集による病態が、SOD1蛋白質の安定化により改善しうることを示し、Structure誌に公表しました。

▽今回研究者らは、SOD1蛋白質の安定化が運動神経保護作用を発揮することを示したのみならず、初めてSOD1蛋白質を安定化させる変異をもたらす方法を示しました。

▽この変異はリン酸化を模倣する変異(phosphomimetic mutation)であり、正常細胞において内因性に備わった蛋白質凝集阻害作用であると考えられます。

▽SOD1蛋白質のリン酸化機構について理解することは、細胞が毒性を有するSOD1蛋白質の凝集に対してどのように対処しているかについての知見をもたらすのみならず、新たな治療法開発の視点を与えうるものです

▽SOD1蛋白質では二量体を形成し、正常機能を発揮しますが、三量体を形成した場合に、毒性を発揮することが推測されています。研究者らは特定の部位のリン酸化により三量体形成を阻害し、安定化させうることをみいだしました。

▽細胞モデルでの検証においても、変異SOD1蛋白質にリン酸化模倣変異を導入したところ、病態が改善し、細胞死を防ぐことができました。

▽SOD1変異に起因したALSは全体の1-2%を占めるのみですが、その他のALSにおいても、SOD1蛋白質の凝集が病態に関与することが報告されており、この治療戦略が治療的に有効である可能性もあります。

引用元
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/09/160922124305.htm
筋肉と運動神経のCNTF受容体αは運動神経軸索の保持に寄与する
▽成体における運動神経支配を維持する分子機構は、発達段階におけるものと比較してよくわかっていません。ALSなどの神経変性疾患において、神経筋接合部の機能喪失は重要な病態の一部であり、機能を保持する機構を解明することは重要です。

▽これまでにCTNF(ciliary neurotrophic factor)受容体が成体の運動神経軸索の維持に寄与していることが報告されています。今回研究者らは、成人期の生体において、運動神経および筋肉のCNTFα受容体を遺伝子的に除去する技術を用いて、その機能を調べました

▽その結果、筋肉と運動神経細胞のCTNFα受容体除去は、運動神経末端の喪失と、遠位から近位に向かっての軸索変性をもたらしました。このことはCTNFα受容体が軸索保持に重要な機能を果たしていることを示唆しています。運動神経のCTNFα受容体のみを除去しても軸索の変性はみられませんでした。また筋肉のCTNFα受容体のみを除去しても軸索変性はみられませんでした。

▽以上の結果は、運動神経と筋肉のCNTFα受容体は運動神経軸索保持に相補的な機能を果たしていることを示唆しています。また、神経筋接合部異常を呈する変性疾患において、CNTFα受容体が治療対象となりうる可能性があります。

(この研究は、アメリカ、University of CincinnatiのLeeらにより報告され、平成28年9月7日付のEuropean Journal of Neuroscience誌に掲載されました)
Ubiquilin-2(UBQLN2)はプロテアソームによる凝集蛋白質分解に関与する
・ALS FORUMの8月15日付記事からです。

▽8月11日付Cell誌に掲載された報告からです。Ubiquilin-2(UBQLN2)はHSP70と協働し、凝集蛋白質を分解するためにプロテアソームに運搬する役割を有することがわかりました。

▽この機構は自食作用とは独立した凝集蛋白質排泄機構であり、ALSにおいてこの機構が障害されている可能性があります。UBQLN2遺伝子の機能喪失型の変異はALSの病因となりえます。

▽ユビキチン鎖によって標識された蛋白質は、プロテアソームに結合した受容体との直接的な相互作用によって、プロテアソームに運搬されるか、もしくは様々なポリユビキチン化された蛋白質と関連する誘導体を介してプロテアソームに運搬されます。

▽酵母では、このような誘導体はDsk2と呼ばれており、脊椎動物ではUBQLN2などの蛋白質がこれに該当します。UBQLN2は熱ショック蛋白質であるHSP70と相互作用をする部位を有しています。

▽研究者らはUBQLN2の役割について調べました。その結果、熱ショックストレス下において、UBQLN2の性質が活性化し、HSP70やプロテアソームなどとの相互作用が増加することがわかりました。UBQLN2をsiRNAにより除去すると、細胞が熱ショックに過敏となり、ユビキチン化した蛋白質凝集体の排泄が障害されました。

▽UBQLN2の興味深い性質は、自食経路が作用しない核内における蛋白質凝集体の排泄促進においても機能する点です。

▽HSP70とUBQLN2との相互作用は、HPS70の基質である分解されるべき蛋白質の存在下において促進することが明らかになりました。さらにこれら複合体がプロテアソームと結合し、蛋白質の分解につながります。

▽プロテアソームは、これまでは可溶性の蛋白質のみ分解すると考えられていました。今回の発見により、プロテアソームはUBQLN2の存在下において蛋白質凝集体の分解にも関与していることが明らかになりました。有害蛋白質にHSP70が結合し、その結果、HSP70のUBQLN2結合部位が露出し、UBQLN2がHSP70に結合し、さらにこれら相互作用により、UBQLN2がプロテアソームに結合するという流れが推定されています。

▽さらにこの後にHSP70が凝集蛋白質の折り畳みを解除し、その結果、プロテアソームが蛋白質分解作用を発揮できるようになるというシナリオが考えられています。

▽新たな凝集蛋白質の分解機構が判明することにより、ALSの病態理解と、新規治療法探索が促進することが期待されます。

引用元
http://www.alsresearchforum.org/ubqln2-helps-the-proteasome-tackle-aggregated-proteins/
ALS患者由来髄液のアストログリアへの影響
▽ALSにおいては非細胞自律性の障害機序が想定されています。ALSにおいてグリア細胞が病態に果たす役割は十分にわかっていません。

▽今回研究者らは、ALS患者由来の髄液に暴露されたアストログリアの特性について細胞モデルを用いて調べました。

▽その結果、患者由来髄液への暴露により、アストログリアからの炎症性サイトカイン(IL-6、TNF-α、COX-2、PGE-2)の放出が増加しました。同時に抗炎症性サイトカインのIL-10やVEGF、GDNFなどの栄養因子の産生は減少しました。

▽患者由来髄液暴露されたアストログリアを培養した馴化培養液は、神経細胞モデルの変性をもたらしました。

▽以上の結果は、アストログリアが孤発性ALSにおいて神経炎症に起因した神経変性に関与している可能性を示唆するものであり、今後の治療法開発において重要な視点を与えうるものです。

(この研究は、インド、 National Institute of Mental Health and NeurosciencesのMishraらにより報告され、平成28年8月30日付のJournal of Neuroinflammation誌に掲載されました)
optineurin変異ALSの病態の一部解明
・麦酒王さんより御提供いただいた話題です

・大阪市立大学の研究チームにより、optineurin変異に関連したALSの病態機序が報告されました。
引用元
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20160825-OYTET50020/?catname=news-kaisetsu_news

・病態解明により治療法開発につながることが期待されます

・麦酒王さん、ありがとうございます
発症前SOD1変異モデルマウスへの、抗ヒスタミン薬clemastine投与は病態改善効果を有する
▽抗ヒスタミン薬のclemastineはFDAに認可されている薬剤ですが、近年、SOD1変異モデルマウスのミクログリアにおいて、M1(傷害性)/M2(保護性)スイッチに影響を及ぼすことが報告されています。

▽今回、研究者らは、SOD1変異ALSモデルマウスに対してclemastineを投与し、病態進行に与える影響について調べました。

▽その結果、発症前(生後40日齢)から生後120日齢までのclemastine(50mg/kg)投与は、発症を有意に遅延させ、生存期間を約10%延長させました。clemastine投与は運動神経細胞を保護し、炎症パラメータを減少し、SOD1蛋白質濃度を減少させました。

▽長期間のclemastine投与は、生存期間を改善しませんでした。長期投与は病態改善に有益な効果を与えませんでした。培養神経細胞においてclemastineは自食作用を亢進させることがわかりました。

▽以上の結果は、発症前から早期におけるclemastine投与がSOD1変異ALSの病態改善に有益な効果を有する可能性を示唆しており、今後の検証がまたれます

(この研究は、イタリア、Santa Lucia FoundationのApolloniらにより報告され、平成28年8月22日付のJournal of Neuroinflammation誌に掲載されました)
内因性のマクロファージ遊走阻害因子が折り畳み異常SOD1蛋白質の凝集を阻害する
▽SOD1変異ALSにおいては、折り畳み異常構造を有するSOD1蛋白質が、ミトコンドリアや小胞体などの細胞内器官の細胞質側に蓄積することがしられています。

▽近年、マクロファージ遊走阻害因子(MIF)が直接的に折り畳み異常SOD1蛋白質の蓄積を阻害することが報告されました。しかし内因性のMIFが生体内でSOD1蛋白質の折り畳み異常に対してどのような作用を有するかはわかっていませんでした。

▽今回、研究者らは、MIFの欠損したSOD1変異ALSモデルマウスを用いて、MIF非欠損SOD1変異モデルマウスと比較しました。その結果、MIF欠損モデルマウスでは不溶性SOD1凝集体が脊髄において有意に非欠損モデルマウスよりも多く観察されました。

▽さらに、神経細胞においてMIF発現を亢進させたところ、折り畳み異常SOD1蛋白質の凝集が阻害され、細胞死が抑制されました。MIFの欠損は病態進行を早め、生存期間を短縮しました。

▽以上の結果は、MIFが生体内において、折り畳み異常SOD1蛋白質に対して毒性発揮を阻害する役割を果たしていることを示唆しており、MIF発現亢進させることがSOD1変異ALSに対して治療的に有効である可能性があります。

(この研究はイスラエル、Ben-Gurion UniversityのLeyton-Jaimesらにより報告され、平成28年8月22日付のPNAS誌に掲載されました)
有害蛋白質の凝集を阻害する手がかり
・ALS NEWS TODAYの8月18日付記事からです

▽プロテアソームは細胞内の蛋白質濃度を適切に保つための細胞内器官です。マサチューセッツ総合病院の研究者らは、線虫の実験から、プロテアソームの機能異常を探知し、修復する経路における重要な分子を同定しました。

▽この研究成果は、異常蛋白質の凝集が病態をなすALSなどの変性疾患における治療法探索の手がかりとなる可能性があります。

▽プロテアソームは破損した不要な蛋白質を分解し、細胞内の適切な蛋白質濃度を維持しています。プロテアソームが機能しなくなると、有害蛋白質の蓄積を防ぐため、プロテアソーム構成成分の産生が亢進します。

▽プロテアソームの機能を賦活することは、異常蛋白質の凝集が病態をなす疾患の治療戦略となりえます。線虫における実験により、転写因子であるSKN-1の機能が、プロテアソームが機能異常を呈した際の細胞の反応を誘導する際に重要であることが指摘されていました。

▽しかし、SKN-1がプロテアソームの構成成分の発現をどのように誘導するかはわかっていませんでした。研究者らは、線虫モデルを用いて、どの遺伝子変異がSKN-1の活性化を阻害しうるかを調べました。その結果およそ100の変異が、プロテアソーム機能異常に対して応答しない状態をもたらすことがわかりました。

▽これらの遺伝子変異のうち、2つが注目されました。1つがPNG-1であり、もう1つがプロテアーゼ酵素のDDI-1です。

▽SKN-1の活性化は、PNG-1によるSKN-1の切断および糖鎖除去に依存することがわかりました。さらにDDI-2(ヒトにおけるDDI-1と等価)がプロテアソーム欠損の際の反応において必要不可欠であることがわかりました。

▽DDI-1はプロテアソームへのストレスを探知する際に重要な機能を果たしており、薬剤開発のターゲットとなりうる酵素であることから、ALSなど神経変性疾患における治療法開発の一つの方向性となりうる可能性があります。

引用元
https://alsnewstoday.com/2016/08/18/study-suggests-target-for-protein-aggregation-in-als-other-neurodegenerative-diseases/
NF-κBとIRF1は内因性レトロウイルスK発現を誘発する
▽ヒト遺伝子中には数千の内因性レトロウイルス由来遺伝子が存在しています。内因性レトロウイルスの活性化は疾病状態や健常時においても広く観察されています

▽どのようなシグナルが内因性レトロウイルス発現を活性化するかはよくわかっていません。生命情報学的分析により、内因性レトロウイルス-K(ERVK)のウイルスプロモーターは、炎症性転写因子に反応することが指摘されています。

▽今回、研究者らはALSにおいて内因性レトロウイルスK発現が亢進している一つの理由として、ウイルスプロモーターにおける機能的なISREs(interferon-stimulated response elements)の存在が関与する可能性を示しました。

▽転写因子過剰発現の分析により、IRF1とNF-κBのアイソフォームにより内因性レトロウイルスの発現亢進が生じることが明らかになりました。またアストロサイトと神経細胞に、TNFαおよびLIGHTサイトカインを投与すると内因性レトロウイルスの発現亢進がみられ、この作用はIRF1とNF-κBがISREsに結合することによるものでした。

▽さらに研究者らはALSの脳組織を用いて分析し、神経細胞における内因性レトロウイルスKの再活性化が核内へのIRF1とNF-κBアイソフォームの局在化と関連することをみいだしました

▽動物実験においても内因性レトロウイルスKの発現亢進は、運動神経細胞の変性をもたらしました。

▽以上の結果は、ALSにおける内因性レトロウイルスKの再活性化において、神経炎症が主要な誘発要因であることを示唆しており、抗レトロウイルス治療や免疫抑制治療がALSにおいて治療的に有効である可能性を示唆するものです。

(この研究は、カナダ、University of WinnipegのManqheraらにより報告され、平成28年8月10日付のJournal of Virology誌に掲載されました)

カルシウムチャネルの変異がALSに関連
・ALS NEWS TODAYの8月9日付記事からです

▽チェコ科学アカデミーの研究者らは、ALSに関連する新たな遺伝子変異を報告しました。これらの変異はカルシウムチャネルの機能に関連する遺伝子です

▽今回、Channels誌に掲載された報告により、ALSに関連する遺伝子変異についての新たな知見が加わりました。

▽孤発性ALSにおいても遺伝子変異がみいだされることがあります。その変異が劣性遺伝形式である場合、対立遺伝子の双方の変異が発症に必要なため、発見は困難となります。

▽今回、そのような変異を有する症例が報告されました。27歳で診断された男性は、カルシウムチャネルをコードするCACNA1H遺伝子の変異が同定されました。さらに研究チームは、この変異がどのように病態に影響を及ぼすかについて調べ、チャネルの機能不全により視床網様体核の神経細胞の障害が生じる可能性が明らかになりました。

▽ALSの病態に新たな知見を加えるものであり、今後の病態解明に寄与することが期待されます。

引用元
https://alsnewstoday.com/2016/08/04/ALS-Mutations-in-Calcium-Channel-Disrupt-Deep-Brain-Neurons-Contributing-to-Movement
RIPK1はALSにおいて炎症とネクロプトーシス促進により軸索変性をもたらす
・最新号のScience誌に報告された研究です

optineurin(OPTN)遺伝子変異は家族性および孤発性ALSの病因であることが報告されています。しかしながら中枢神経におけるOPTN蛋白質の機能およびALSの病態に果たす役割はよくわかっていませんでした

▽今回、研究者らは、OPTNはRIPK1依存性シグナル経路を抑制することをみいだしました。OPTN喪失は、中枢神経においてRIPK1、RIPK3、MLKL(mixed lineage kinase domain-like protein)を含むネクロプトーシス経路による、進行性の脱ミエリン化と軸索変性をもたらしました。

▽さらに、RIPK1およびRIPK3の関与する軸索変性機序は、SOD1変異ALSモデルマウス、ヒトALS患者由来サンプルにおいても観察されました。従って、RIPK1およびRIPK3は進行性の軸索変性において重要な役割を果たしていると考えられます。

▽RIPK1阻害は、ALSやその他軸索変性を特徴とする神経変性疾患の治療において、軸索保護作用による新たな治療戦略をもたらす可能性があります

(この研究はアメリカ、Harvard Medical SchoolのItoらにより報告され、平成28年8月5日付のScience誌に掲載されました)
ALSとSMAにおける遺伝子スプライシング機構の障害
・ALS NEWS TODAYの8月2日付記事からです

▽運動神経病の病態過程における分子機構についての新たな知見により、ALSとSMA(脊髄性筋萎縮症)の病態機序における共通点がみいだされました

▽最新号のNeurobiology of Disease誌に掲載されたフランスの研究チームからの報告によると、SMAの病因となるSMN遺伝子変異により、スプライソソーム核内低分子リボヌクレオタンパク質(snRNPs)とよばれる、転写されたmRNA前駆体からイントロンを取り除いて成熟RNAにする機能を持つ複合体が正常な構造をとることが阻害され、スプライシング機構が障害されることにより、運動神経細胞の変性につながる可能性があるとのことです。

▽現在まで、このスプライシング機構の障害がSMAにおいて存在することは証明されておらず、ALSにおいても同様の病態が存在することが考えられてきました

▽今回のショウジョウバエモデルでの実験により、SMN遺伝子変異が、スプライシング機構において重要な機能を果たしている Tgs1蛋白質ないしpICln蛋白質の機能異常をもたらし、運動神経細胞変性をもたらすことがわかりました。

▽スプライシング機構の障害による影響を運動神経細胞は受けやすく、そのため、運動神経細胞が選択的に障害されやすいとのことです。このような病態機序はALSにおいても存在すると考えられ、共通した治療法発見につながる可能性があります。

引用元
https://alsnewstoday.com/2016/08/01/Genetic-Cutting-Tool-Defective-in-ALS-and-Spinal-Muscular-Atrophy-%28SMA%29
脱リン酸化酵素であるカルシニューリンは病的なTDP-43のリン酸化を制御する
▽ALS患者の90%以上において不溶性TDP-43封入体が神経細胞において観察されます。TDP-43蛋白症においては、凝集したTDP-43蛋白質は翻訳後修飾を受けており、中でもリン酸化TDP-43の存在は最も典型的な病的TDP-43封入体の特徴です。

▽異常リン酸化TDP-43はTDP-43が毒性を発揮する要因と考えられています。現在までTDP-43のリン酸化をもたらす酵素がいくつか同定されています。しかしTDP-43のリン酸化を正常化する脱リン酸化酵素については報告されていませんでした。

▽今回、研究者らは、脱リン酸化酵素であるカルシニューリンがTDP-43のC末端における病的リン酸化を脱リン酸化する作用を有する事を試験管内の実験においてみいだしました

▽TDP-43蛋白症の線虫モデルにおいては、カルシニューリンを遺伝子的に除去すると、過剰リン酸化TDP-43の蓄積が観察され、病態の悪化がみられました。

▽ヒト培養細胞においては、カルシニューリン阻害薬であるタクロリムスの投与は、異常リン酸化TDP-43の蓄積につながりました。

▽以上の結果は、カルシニューリンが異常リン酸化TDP-43の脱リン酸化酵素として作用する可能性を示唆しており、カルシニューリン阻害作用のある薬剤はTDP-43蛋白症の増悪につながる可能性があることを示唆するものです。

(この研究は、アメリカ、Geriatrics Research Education and Clinical CenterのLiachkoらにより報告され、平成28年7月29日付のActa Neuropathologica誌に掲載されました)
シャペロンであるHSPB8はTDP-43の毒性より細胞を保護する
▽ALSにおいてはTDP-43とその切断断片であるTDP-25およびTDP-35の蓄積がみられます。TDP-25およびTDP-35はTDP-43の凝集および機能変化、毒性発揮に際して起点的な役割を果たしており、TDP-25およびTDP-35の凝集を抑制し、それらの分解を促進することは、細胞毒性を軽減することにつながると考えられます。

▽HSPB8の発現亢進は、そのような目的を達成するための1つの手段として有望なものです。なぜならHSPB8はTDP-43の断片の排泄を促進する作用を有しており、ヒトALS患者の残存運動神経細胞においては発現が亢進しています。

▽研究者らはHSPB8の過剰発現がTDP-25およびTDP-35の凝集を減少させ、TDP-43の異常局在化による病態から保護的な作用を有する事を、動物モデルにおいてみいだしました

▽ショウジョウバエALSモデルを用いた病態観察において、TDP-43およびTDP-25の過剰発現は軽度の神経変性をもたらすのに対して、TDP-35の過剰発現は、重度の神経変性をもたらすことがわかりました。ヒトHSPB8に対応するHSP678cの過剰発現により、TDP-35の毒性が緩和されました。

▽以上の結果は、HSPB8の過剰発現がTDP-43断片に起因した細胞毒性を緩和し、治療的効果を有する可能性を示唆するものです

(この研究はイタリア、Mondino National Neurological InstituteのCrippaらにより報告され、平成28年7月27日付のHuman Molecular Genetics誌に掲載されました)
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