ALS(筋萎縮性側索硬化症)に負けないで
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間葉系幹細胞はTGF-β産生を通じてミクログリアの機能変化をもたらす

▽神経変性疾患においてミクログリアは治療ターゲットの1つとなっています。これまで研究者らは間葉系間質細胞におけるTGF-β産生能が、ALSに対する自家間葉系間質細胞移植における有効性の指標となりうる可能性を指摘してきました

▽しかし、間葉系間質細胞におけるTGF-βがミクログリア機能に与える影響についてはよくわかっていませんでした

▽今回、研究者らは間葉系間質細胞からのTGF-βが、ミクログリアの神経炎症における機能に与える影響について調べました。その結果、間葉系間質細胞培養上清は、ミクログリアの炎症促進性サイトカイン発現を抑制し、活性化ミクログリアマーカーの正常化をもたらしました。

▽さらに、これらの効果については、主として間葉系間質細胞培養上清におけるTGF-βが、ミクログリアにおけるNF-κB経路を抑制し、TGF-β経路を回復させることによりもたらされることがわかりました。

▽以上の結果は、間葉系間質細胞由来のTGF-βがミクログリア機能の正常化をもたらし、治療的効果をもたらすことができる可能性を示唆するものであり、TGF-β産生能の重要性を示唆するものです。

(この研究は、韓国、Hanyang UniversityのNohらにより報告され、平成28年7月8日付のStem cells translational medicine誌に掲載されました)
GM604が欧州でOrphan Drug指定の認可
・Genervon社の6月6日付Press Releaseからです

▽Genervon社が開発中のALS治療薬候補であるGM604が欧州においてOrphan Drug指定を受けました

▽GM604は胎生期におけるシグナル伝達の制御物質の類似物質であり、インスリン受容体のチロシンキナーゼのβサブユニットへの結合性を有します。そこから様々なシグナル伝達経路の活性を調節し、神経系の発達や、神経保護的に作用する遺伝子発現を活性化すると考えられています

・今後の具体的なプランなどについては、記載がありませんでした。GM604はFDAにおいては既にOrphan Drug指定を受けています。Orphan Drug指定は税制上の優遇措置や優先的な審査などが受けられる制度であり、承認の是非とは直接的な関係のないものである点に注意が必要です。

引用元
http://www.genervon.com/genervon/PR20160606.php
患者由来iPS細胞を機能的な骨格筋細胞に分化
▽近年、ALSは様々な要因の関与する疾患であり、いくつかの細胞が運動神経細胞変性に関与していると考えられています。運動神経細胞以外の中枢神経細胞や、非神経細胞が非細胞自律性の機序により運動神経細胞変性に影響を及ぼしていると考えられています。

▽近年患者由来iPS細胞を用いて、実験室で運動神経細胞に分化させ、病態を研究する試みが報告されています。今回研究者らは、新規MyoD発現系を用いて、ALS患者由来iPS細胞から、機能的な骨格筋細胞を分化させることに成功しました。

▽このことにより、ALSにおける複雑な運動神経細胞とその周辺の微小環境における病態経路を、個別に明らかにしていく手段が得られたことになり、病態解明にむけての進展が期待されます。

(この研究は、イタリア、Sapienza University of RomeのLenziらにより報告され、平成28年6月8日付のStem Cell Research誌に掲載されました)
iPS細胞由来神経幹細胞がALSモデルマウスの症状を改善
▽今回、研究者らはiPS細胞由来の神経幹細胞を用いて、治療的効果を検討しました。この神経幹細胞はLewis X-CXCR4-β1-integrin陽性の幹細胞が選ばれました。

▽この神経幹細胞を、ヒトALS患者由来神経細胞と、患者由来アストロサイトを共に培養した試験管内に注入し、神経細胞の生存期間や軸索伸長などの様子を観察したところ、生存期間の延長と、軸索伸長の増大効果が観察されました。

▽また、この神経幹細胞をSOD1変異ALSモデルマウスに移植したところ、運動神経細胞の保持と、神経筋接合部機能の保持、ミクログリオーシスとマクログリオーシスの減少などが観察されました

▽以上の結果は、iPS細胞由来の神経幹細胞が、多様な機序により神経細胞と神経筋接合部の保護機能を発揮し、ALSに対して治療的効果を有する可能性を示唆するものです

(この研究はイタリア、University of MilanのNizzardoらにより報告され、平成28年6月6日付のHuman Molecular Genetics誌に掲載されました)
幹細胞治療総説
・幹細胞治療の簡潔な総説がありましたので、ホームページ掲載用に大まかに訳してみました(2014年の総説ですので、少し情報が古いかもしれません)

3種類の主な細胞源

▽現在までにALSに対する幹細胞移植に使用されている細胞は大きく2種類に大別され、さらにiPS細胞を加えると3種類となります

▽1つ目は間葉系間質細胞です。これらには、骨髄間葉系間質細胞、脂肪由来幹細胞、骨髄由来CD133+造血幹細胞、臍帯血由来CD34+前駆細胞などが含まれます。

▽2つ目は、神経組織由来の神経幹細胞です。これらには、胎児由来の脊髄細胞や嗅覚神経鞘細胞などが含まれます

▽さらに、近年iPS細胞由来の細胞が各種動物モデルに移植され、良好な成果が報告されています。遺伝子編集技術とiPS細胞から神経細胞に分化させる技術の進歩により、遺伝子的に編集した細胞の生成が可能となっており、多くの可能性を秘めています。

▽▽▽▽▽ALSに対する細胞移植治療▽▽▽▽▽

間葉系間質細胞移植

▽多能性体性幹細胞は骨髄、脂肪細胞、臍帯血細胞などから分離されます。間葉系間質細胞は特定の条件化で3種の胚葉に分化することができます。

▽間葉系間質細胞は古い組織を若返らせることができ、この作用は血液系組織のみならず、軟骨や平滑筋、神経系などで報告されています。研究者らは、外部から間葉系間質細胞を注入することにより、これら細胞が、有害な炎症性サイトカインを除去し、保護性のサイトカインを放出することにより、症状緩和作用を発揮することを報告しています。

(1)骨髄由来間葉系間質細胞移植(Brainstorm社NurOwn細胞がここに属します)

▽骨髄由来間葉系間質細胞の骨髄からの精製は比較的容易です。外部から注入した骨髄由来間葉系間質細胞は、運動神経細胞に分化することはないため、神経栄養因子をもたらす細胞に分化し、運動神経の生存を補助する働きによる治療的効果を期待します。

▽ALSにおいてはアストロサイトやオリゴデンドロサイトやその他のグリア細胞による細胞非自律性の障害機構の存在が知られています。非神経細胞による神経細胞の代謝補助の喪失や、毒性代謝産物の生成は運動神経細胞死をもたらします。

▽近年、間葉系間質細胞は制御性T細胞の調節を通じて、直接的な免疫系への調節作用を有する事が報告されています。

▽現在、間葉系間質細胞を用いたALSに対する臨床試験が進行中です。イタリアのMazziniらは、第1相臨床試験の結果を報告しました。この試験では10名の患者が自家骨髄由来間葉系間質細胞の脊髄実質への注入による移植を受けました。

▽2名の患者が過去の臨床試験における臨床経過と比較して、有意な進行遅延を認めました。しかし大半の患者では期待されるような結果ではありませんでした。この試験では、健常群から採取された間葉系間質細胞と、患者から採取された間葉系間質細胞とで、成長因子の放出や、神経保護作用などにおいてほとんど差がなかったことが報告されています。

▽近年、韓国において骨髄間葉系間質細胞移植の臨床試験が行われました。2014年に終了した第2相臨床試験において、37名のALS患者が自家間葉系間質細胞の髄腔内移植を1ヶ月の間隔で2回受けました。

▽この臨床試験ではALSFRS-Rを用いて、治療反応群と非反応群に分類され、治療反応群における治療反応性を予測するバイオマーカーが検討されました。その結果、VEGF、アンギオゲニン(ANG)、TGF-βなどが移植による治療反応性を予測する因子となる可能性が示唆されました。

▽また、ALS症状進展遅延効果が優れていた、ALS患者由来の骨髄間葉系間質細胞による、HLAハプロタイプのマッチした同種骨髄幹細胞(HYNR-CS)のクモ膜下腔内移植がALS患者に対して韓国食品医薬品局の条件付承認を得ています(2014年7月)。

▽メキシコでの臨床試験においては、自家CD133+幹細胞が末梢血より採取され、運動野皮質に移植されました。合計10名の患者に移植され、良好な結果が報告されています(http://alexkazu.blog112.fc2.com/blog-entry-994.html)

▽スペインでも小規模の臨床試験で、自家骨髄間葉系間質細胞の脊髄内移植が行われ、TDP-43の有意な減少と、運動神経細胞数の保持が観察されました。

(2)脂肪由来幹細胞移植

▽脊髄損傷モデル動物での実験において、脂肪由来幹細胞移植の報告がなされています。ALSモデルマウスにおいても、脂肪由来幹細胞移植による治療的効果が報告されています。前臨床試験段階では良好な成績が報告されており、ヒトにおいてもいくつかの臨床試験が行われています

(3)臍帯血由来幹細胞移植

▽臍帯血由来幹細胞移植による報告は、基礎実験で骨髄幹細胞移植の成績と同等の成果が報告されています。動物モデルにおいて有効性が報告されており、現在臨床試験が進行中です


神経系幹細胞移植

(1)神経幹細胞移植


▽上記の骨髄間葉系間質細胞や胎児由来幹細胞、造血幹細胞など未分化な細胞を移植する方法については、その治療効果を明確に説明しうる根拠が乏しい状況です。成人の脊髄は、移植した幹細胞が運動神経細胞に分化するのに適した環境ではありません。

▽間葉系幹細胞と比較して、脊髄由来の神経幹細胞は、実験段階で、成長因子の分泌能において優れているのみならず、運動神経そのものに分化し、適切なシナプス形成が可能であるという点で異なります。

▽ALSモデルマウスに対してヒト神経幹細胞を移植することにより、治療的効果が報告されています。ヒト胎児脊髄由来の神経幹細胞はALSにおいて変性する運動神経細胞に置き換わる細胞として有力な候補となります(Neuralstem社のNSI-566はこの治療戦略をとるものです)

▽NSI-566の臨床試験では、安全性が確認され、幾人かの患者において治療的効果が認められたことが報告されました

(2)嗅覚神経鞘細胞移植

▽嗅覚神経鞘細胞は嗅覚シュワン細胞として知られ、ミエリン化されていない嗅神経細胞を髄鞘化するものです。嗅覚神経鞘細胞は軸索伸長と適切な経路探索、シナプス形成などを補助します。

▽中枢神経細胞を末梢神経細胞とシナプス形成させる能力と、分化の多能性により、ALS細胞移植治療の有力な候補と考えられています。

▽前臨床試験段階の基礎実験では、良好な結果が報告されています。中国で2つの臨床試験が実施され、胎児由来嗅覚神経鞘細胞が脊髄内に移植され、安全性が確認されました。しかし治療的効果については芳しいものではありませんでした。

▽移植回数を増やした場合においては、機能的改善が報告されたケースもあり、頻回移植を増やすことの有効性が示唆されています

▽▽▽▽▽iPS細胞を用いた新しい技術▽▽▽▽▽

▽ノーベル賞の受賞対象となったiPS細胞技術は、ALS治療法開発において2つの新たな手段を与えました。

▽1つ目は、患者由来のiPS細胞を用いたALS研究が可能になったことです。患者自身の細胞により、患者の病態を反映したモデルを得ることが可能となります。

▽2つ目は、iPS細胞技術により、ALS患者に対する細胞移植手段として自家移植の新たな手段が得られたことになります。

▽ES細胞とiPS細胞は運動神経に分化するために必要な性質を備えています。iPS細胞により移植手段が拡大し、従来技法と比較してより望ましい細胞に分化しうる細胞の移植が可能になります。

▽iPS細胞の多能性はES細胞と比肩するものです。しかしiPS細胞においては、エピジェネティック(後天的な遺伝子修飾)な記憶が保持されており、ES細胞と比較して、より発生元の組織への分化が容易であるといわれています。ただし基本的にはiPS細胞を分化させることは、ES細胞を分化させることと同一の現象となります。

▽現在までに多様な神経系細胞への分化が報告されており、多様な神経系細胞により正確に分化させることが可能なため、研究者らがiPS細胞を用いて、神経系疾患をモデリングしたり、治療源として用いることを可能としています。

▽YamanakaのiPS細胞技術を用いて、ALS患者由来のiPS細胞を生成する臨床試験が実施されています。近年、患者由来iPS細胞を用いて、細胞モデルを構築し、治療法探索に応用する研究が報告されています。

▽SOD1変異ALS患者由来のiPS細胞を運動神経細胞に分化させ、ミトコンドリア機能異常や小胞体ストレスを制御する遺伝子発現が減少していることなどが報告されており、病態解明に近づいています。

▽C9ORF72遺伝子変異ALS患者由来のiPS細胞を用いた研究でも、同様な病態が報告されており、今後の治療法開発にも役立つことが期待されています

▽iPS細胞を用いた治療法探索において、kenpaulloneが運動神経細胞の生存期間を延長することが報告されており、新規治療法開発の可能性があります。

iPS細胞を用いた細胞移植治療

▽iPS細胞を用いた自家多能性幹細胞移植治療の方向性も探索されています。骨髄由来間葉系間質細胞などの体性幹細胞と比較して、iPS細胞は成熟した運動神経細胞に分化する能力が優れています。

▽さらに様々な細胞に分化することが可能なため、多くの治療的可能性が開けています。動物モデルを用いた研究によりiPS細胞が様々な特異的な組織に分化することが可能であることが示されています。

▽近年、iPS細胞由来の神経前駆細胞が、ヒト胎児由来神経前駆細胞と同等の性質を有する事が示され、胎児由来の同種細胞を、自家iPS細胞に置き換えることが出来る可能性が示唆されています。

▽ALS患者由来のiPS細胞の遺伝子変異を遺伝子編集技術を用いて修復し、移植することにより、有力な治療手段となることが期待されています。

(これまで当ブログでは、intracecalを髄腔内と翻訳していましたが、より正確な表現のため、以後クモ膜下腔内と翻訳します)

引用元
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4174611/#B8
C9ORF72遺伝子の繰り返し配列過剰伸長による毒性獲得が、アンチセンスオリゴヌクレオチドにより緩和
・SOD1変異に対しては変異SOD1遺伝子RNAに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドによる遺伝子治療(Isis社による)の臨床試験が開始されているところですが(http://alexkazu.blog112.fc2.com/blog-entry-862.html)、今回、C9ORF72遺伝子変異ALSのモデルマウスにおいて、アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた実験的治療が奏功したとの報告です。

C9ORF72遺伝子の6塩基繰り返し配列の過剰伸長は家族性ALSの最も頻度の高い遺伝子変異として知られています。

▽今回研究者らは、C9ORF72遺伝子のGGGGCC繰り返し配列数が450回までのモデルマウスを用い、C9ORF72遺伝子の対立遺伝子の片方ないし両方の発現を不活性化し、病態を調べました。

▽その結果、C9ORF72遺伝子発現が50%減弱した場合には、運動症状は呈しませんでしたが、脾腫やリンパ節腫脹、社会的相互作用の障害などの特徴がみられました。6塩基繰り返し配列の繰り返し数が多くなればなるほど、年齢が高くなればなるほど、また発現量が多くなればなるほど、RNA凝集体の蓄積と、開始コドン非依存性の翻訳により生じたジペプチド繰り返し蛋白質の蓄積は増加し、海馬神経細胞の喪失と認知機能障害などを生じました。

▽反復配列を有するRNAに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドの単回投与により、RNA凝集体とジペプチド繰り返し蛋白質の凝集は減少し、行動障害の改善を認めました。

▽以上の結果は、C9ORF72遺伝子の繰り返し配列の過剰伸長が毒性獲得により病態を惹起することを示唆しており、同時にアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた治療的介入の実現可能性を示唆するものです

(この研究は、アメリカ、University of CaliforniaのJiangらにより報告され、平成28年4月19日付Neuron誌に掲載されました)
運動野への幹細胞移植について(続報)
・先日も簡単に取り上げましたがメキシコのグループから、運動野への幹細胞移植の現在までの成果について、報告がありました。

まずは、Cytotherapy (2009) Vol. 11, No. 1, 2634に掲載されていたメキシコで行われた運動野への幹細胞移植の報告です。

▽2005年から2008年にかけて、メキシコで行われた幹細胞の脳実質への移植の報告です。

▽この試験には発症後1-3年の10名のALS患者が治療群としてエントリーされました。13名のALS患者が対照群として比較されました。

▽治療群に対して、まず3日間、300ugのG-CSF製剤を皮下注され、造血能を亢進させた後、3日目に末梢血を採血され、そこからCD133+幹細胞が分離されました。同時に腰椎穿刺により髄液を採取され、幹細胞と混合されました。

▽局所麻酔下で、定位脳手術により両側前頭運動野に幹細胞が移植されました。穿頭孔より硬膜切開され7mmの深さにハミルトンシリンジを用いて幹細胞が25万から75万個注入されました。

▽診断から経過観察終了までで、生存期間の中間値は、対照群では19ヶ月でしたが、治療群では66ヶ月と有意な延長効果を認めました。

▽また、ALSFRS-R得点についても、治療群ではベースラインの得点と比較して、治療1ヵ月後、2ヵ月後および6ヵ月後において有意な改善効果を認めました。治療群のベースラインのALSFRS-Rの平均点は24.6点であり、6ヵ月後は平均27.9点、12ヵ月後では24点でした。一方対照群では有意な増悪を認めました。

・以上の報告のように、当初の報告では症例数が少数ではありますが、有効である可能性を示唆する結果が報告されています。その後音沙汰がなかったのですが、先日の記事で少し触れたように、今月のCytotherapy誌に、同一グループによりさらに症例数を増やした報告が掲載されていました

運動野への幹細胞移植による長期生存

▽この論文では、2005年から2015年までの8年間で、39名のALS患者に対して、自家CD133陽性間葉系幹細胞を前頭運動野に移植し、その経過が報告されています。

▽いずれも孤発性ALS患者であり、上記論文と同一の手技で移植されました。移植を受けた患者の生存期間の中間値は35.7ヶ月であり、対照群10名の21ヶ月より統計的に有意に長かったとのことです。

▽また移植後1年後のALSFRS-Rの変化量は対照群では-18.8点、治療群では-7.4点であり、統計的に有意な進行遅延効果を認めました。

▽移植に関連して重大な副作用はありませんでした。

▽この手法による幹細胞移植による生存期間の延長効果は、これまでのどの幹細胞治療の報告よりも長く、有効性に関して今後のさらなる検証が期待されるものです。

引用元
http://www.celltherapyjournal.org/article/S1465-3249(16)30323-1/abstract
運動野への幹細胞移植について
昨日の記事で紹介した論文ですが、2009年のcytotherapy誌において、同一グループが9名のALS患者に対して実施した臨床試験の結果が報告されていました。この臨床試験はclinicaltrials.govには登録されていないようです。

▽患者の末梢血からCD133+単核細胞が分離され、運動野に注入されました。合計9名の患者が自家幹細胞移植を受け、10名の対照患者と比較されました。

▽その結果、安全性が確認され、対照患者と比較して、治療群では有意に生存期間延長を認めました

(詳細情報がわかりましたら追記します)

引用元
http://www.celltherapyjournal.org/article/S1465-3249(09)70245-2/fulltext?refuid=S1465-3249(09)70301-9&refissn=1465-3249
運動野への幹細胞移植
・症例報告ですが、平成28年4月15日付のCYTOTHERAPY誌に、自家幹細胞を前頭葉運動皮質に直接移植し、移植6ヵ月後にMRI拡散テンソル画像において皮質構造の改善を認めた報告がありました

・幹細胞を脳実質に投与するという治療戦略はこれまでほとんど(中国で1つあったようですが)なかっただけに、今後の展開が注目されます。

引用元
http://www.celltherapyjournal.org/article/S1465-3249(16)30323-1/abstract

以下現在までに米国国立医学図書館の臨床試験データベース(clinicaltrials.gov)にエントリーされているALSに対する幹細胞移植の臨床試験一覧です


・イタリア(Azienda Ospedaliera Santa Maria):第1相試験 胎児由来ヒト神経幹細胞の腰髄へのmicroinjection 2012年エントリー 試験終了
・スペイン(Hospital Universitario Virgen de la Arrixaca):第1/2相試験 自家骨髄幹細胞の髄腔内ないし脊髄内(椎弓切除術を伴う)投与 2010年エントリー 
・アメリカ(Neuralstem社:NSI-566):第2相試験:ヒト胎児由来脊髄神経幹細胞の脊髄内(椎弓切除術を伴う)投与: 2012年エントリー 試験終了
・中国(General Hospital of Chinese Armed Police Forces ):第2相試験:ヒト臍帯血由来間葉系幹細胞の髄腔内移植: 2011年エントリー 招待患者をエントリー中
・メキシコ(Servicio Hematología Hospital Universitario):第2/3相試験:自家造血幹細胞の髄腔内投与:2012年エントリー 試験終了 https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01933321?term=amyotrophic+stem+cell&rank=5
・イラン(Alzahra Hospital):第1/2相試験:自家間葉系幹細胞の脊髄内投与:2014年エントリー 試験中止(お金がないため)
・中国(China Medical University Hospital ):第1相試験:自家脂肪組織由来幹細胞の髄腔内および脳内投与(Compassionate Use):2015年エントリー 試験終了
・ポーランド(Pomeranian Medical University Szczecin ):第1相試験:自家骨髄由来幹細胞の髄腔内投与:2014年エントリー 招待患者をエントリー中
・アメリカ(Mayo clinic):第1相試験:自家間葉系幹細胞の髄腔内投与 2012年エントリー 募集終了し進行中
・韓国(Hanyang University Seoul Hospital ):第1相試験:HLAハプロタイプのマッチした骨髄幹細胞の髄腔内移植 2012年エントリー 状態不詳
・イラン(Royan Institute):第1相試験:同種脂肪組織由来間葉系幹細胞の静脈内投与 2015年エントリー 募集中
・インド(Neurogen brain and spine institute):第1相試験:自家骨髄由来単核細胞移植(髄腔内投与および筋注) 2014年エントリー 募集中
・インド(Neurogen brain and spine institute):第2相試験:自家骨髄由来単核細胞移植(髄腔内投与および筋注)2013年エントリー 試験終了
・韓国(Hanyang University Hospital):第1/2相試験: 自家骨髄由来幹細胞移植(髄腔内投与) 2011年エントリー 試験終了
・アメリカ(TCA Cellular Therapy):第1相試験:自家骨髄由来幹細胞の髄腔内投与 2010年エントリー 資金不足により延期中
・スペイン(Clinical Universitary Hospital Virgen de la Arrixaca):第1相試験 自家骨髄単核細胞筋注の有効性 2014年エントリー 募集中
・アメリカ(Q Therapeutics):第1/2相試験 Q cell(ヒトグリア前駆細胞)の脊髄内(椎弓切除術を伴う)投与 2015年エントリー 募集開始前
・イラン(Royan Institute):第1相試験 自家骨髄由来間葉系幹細胞の脳室内投与 2012年エントリー 試験中止(脳室内投与の際の固定術による呼吸不全リスクにより中止)
・イラン(Royan Institute):第1相試験 自家骨髄由来間葉系幹細胞の静脈内投与 2012年エントリー 試験終了
・イラン(Royan Institure):第1相試験 自家骨髄由来間葉系幹細胞の髄腔内投与 2013年エントリー 試験終了
・イスラエル(Hadassah Medical Organization:Brainstorm社のNurOwn細胞):第2相試験 自家骨髄間葉系幹細胞の髄腔内投与 2012年エントリー 試験終了
・アメリカ(Massachusetts General Hospital:Braistorm社のNurOwn細胞);第2相試験 自家骨髄間葉系幹細胞の髄腔内投与 2013年エントリー 募集終了し進行中
・スペイン(Hospital Regional Universitario Reina Sofía):第1/2相試験 自家脂肪組織由来間葉系幹細胞の静脈内投与 2014年エントリー 募集中

ヒトiPS細胞由来FUS変異細胞モデルを構築
・慶應義塾大学の研究グループからの報告です

▽今回、研究者らは、FUS遺伝子のミスセンス変異(H517D)のヘテロ接合体を有するiPS細胞と、ゲノム編集技術を用いて作成したミスセンス変異(H517D)のホモ接合体を有するiPS細胞とを、家族性ALS患者より作成しました。

▽これらの細胞由来の運動神経細胞は、FUS蛋白質の細胞質への異常局在化やストレス負荷下におけるストレス顆粒生成などの神経変性疾患にみられる特徴を再現しました。

▽さらに、運動神経前駆細胞をCLIP-seq datasetsを併用して、エクソンアレイ解析を行うことにより、家族性ALSの運動神経前駆細胞における遺伝子発現やスプライシングパターンの異常が明らかになりました。

▽以上の結果は、iPS細胞由来運動神経細胞が、ヒト運動神経病の病態解明のために有用なツールであることを示唆しています。

(この研究は、慶應義塾大学、Ichiyanagiらにより報告され、平成28年3月16日付Stem Cell Reports誌に掲載されました)
引用元
http://www.cell.com/stem-cell-reports/abstract/S2213-6711(16)00062-X?_returnURL=http%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS221367111600062X%3Fshowall%3Dtrue
モルフォリノによるSOD1発現減少がALSモデルマウスの病態を緩和する
▽変異蛋白質の蓄積による神経毒性は、神経変性疾患の病態として観察されます。SOD1蛋白質の変異は家族性ALSの原因となります

▽SOD1蛋白質は家族性ALSのみならず、孤発性ALSにおいても重要な役割を果たしていると考えられています。従ってSOD1蛋白質は治療対象として有望と考えられます。

▽今回、研究者らは、ALSモデルにおいて、SOD1発現量を減少させるように設計されたモルフォリノオリゴヌクレオチド(MOs)を用いて、神経筋機能の改善や生存期間の延長効果がみられることをみいだしました

▽モルフォリノオリゴヌクレオチド投与により、運動神経細胞数の増加と、アストログリオーシスおよびミクログリオーシスの減弱が観察されました

▽ヒト家族性ALS患者由来iPS細胞から分化誘導した運動神経細胞に対してモルフォリノオリゴヌクレオチドを用いることにより、生存期間の延長とアポトーシスマーカーの発現減少がみられました。

▽以上の結果は、モルフォリノオリゴヌクレオチドを用いた治療がALSに対して有効である可能性を示唆しており、今後の臨床試験での検証がまたれます

(この研究は、イタリア、University of MilanのNizzardoらにより報告され、平成28年2月16日付のScientific Reports誌に掲載されました)
慶応大病院にiPSコンサルテーション外来設置
・かなくんさんより御提供いただいた話題です。また今後受診される方がおられましたら、情報提供いただけますと幸いです

・「同外来ではパーキンソン病やALS(筋萎縮性側索硬化症)など14種類の難病に関し、遺伝性の病気や幹細胞を研究する医師らが最新の研究や、将来の治療の見通しなどを情報提供する」とのことです

元記事
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151228-00010004-yomidr-sctch
http://www.keio.ac.jp/ja/press_release/2015/osa3qr000001axvx-att/141224.pdf
http://cmg.med.keio.ac.jp/ips-consultation

・かなくんさん、ありがとうございました。
遺伝子治療と幹細胞治療の希望
・12月19付ALS FORUMの記事からです

▽12月11日から13日までオーランドで開催された第26回国際ALS/MND会議では800名以上の研究者らが集いました。この場で参加者らは、早急な治療法の開発の必要性について実感し、同時に新規治療法や研究の進歩を感じました。

▽特に遺伝子治療のセッションでは将来に希望の持てる内容がプレゼンされました。それはオハイオ州コロンバス小児病院のBrian Kasparの発表であり、脊髄性筋萎縮症の遺伝子治療の最新の結果について公表されたものです。

▽脊髄性筋萎縮症は通常生後2年以内に致死的となる疾患ですが、Kasparらの臨床試験において、2014年春に治療を開始された小児は、現在も生存しており補助なしで起立可能であり、このような状態は未治療の脊髄性筋萎縮症患者ではなしえない状態とのことです。

▽この臨床試験は第1/2相臨床試験として行われており、アデノ随伴ウイルス9(AAV9)を用いる遺伝子治療です。脊髄性筋萎縮症は常染色体劣性遺伝形式であり、SMN1遺伝子のミスセンス変異(コードされるアミノ酸が別のアミノ酸に置き換わる)ないし欠損変異により生じます。

▽SMN1遺伝子は運動神経細胞の生存に関与する蛋白質をコードしています。SMN遺伝子にはSMN2遺伝子が存在します。SMN2遺伝子はSMN1遺伝子と相同性が高いですが、SMN1遺伝子と一塩基のみ異なるSMN2遺伝子は、選択的スプライシングにより主としてエクソン7を欠くSMN蛋白質を生じます。しかしSMN2遺伝子よりわずかに産生されるエクソン7を含む完全長のSMN蛋白質の存在により、SMN1遺伝子の対立遺伝子双方の変異を有する罹患患者の症状を緩和することがわかっています

▽そのため、脊髄性筋萎縮症は重症度に幅があり、その程度はSMN2遺伝子から完全長のSMN蛋白質が産生される発現量によります。SMN1遺伝子変異のキャリア(片方の対立遺伝子のみ変異を有する)においても軽度の症状を呈することがあり、IV型に分類されており、30代以降に発症します。最重症型のI型では、SMN2遺伝子から産生される完全長のSMN蛋白質がほとんどなく、幼児期に発症し重篤な経過をたどります

▽今回は研究者らはアデノ随伴ウイルスベクター9(AAV9)を用いて正常なSMN1遺伝子を運動神経細胞に導入することを目指しました。AAVはサブタイプにより異なる構造、ターゲットとする細胞を持ちます。

▽AAV9は血液脳関門を通過することが可能であり、ガラクトースの結合した細胞蛋白質に結合します。この性質により運動神経細胞とアストロサイトをターゲットにすることができます。AAV9が一旦ターゲット細胞に結合すると、運搬遺伝子は核内に挿入され、染色体外のDNAとして長期に保存されます。このことにより、原理的には一度のみの治療により、SMN蛋白質を生涯にわたり供給することが可能となります。

▽重度SMNのモデルマウスにおいては、この遺伝子治療により27週間以上の生存効果が観察され、未治療の場合には2週間前後で死亡したとのことです。

▽研究者らは今回の臨床試験において、9ヶ月齢未満の18名の幼児をエントリーしました。全員が6ヶ月齢未満で発症し、重症型の特徴を有するものでした。被検者らは正常SMN1遺伝子を運搬するAAV9の静注を1度のみ受けました。18名は3つの異なる用量に分けられました。

▽最小の用量では、3名の幼児が体重1kgあたり6.7×10の19乗個のウイルスを注入されました。最高用量では体重1kgあたり3.3×10の20乗個のウイルスが注入されました。

▽通常の経過であれば、10.5ヶ月の経過で約半数の患者が呼吸器を必要とする状態になります。このような自然経過と被検者の経過が比較される予定です。2017年6月にこの臨床試験は終了予定です。

▽現段階では、最高用量を投与された被検者はまだいません。今回の会議では、3名の最低用量の投与を受けた被検者と、7名の中間用量の投与を受けた被検者のデータが一部公表されました

▽現在までのところ、副作用はみられないとのことです。最初の患児がエントリーされた2014年4月から、今年の9月30日までの間で、死亡した被検者はなく、呼吸器が必要となった被検者もいないとのことです。

▽さらに、遺伝子治療を受ける前よりも運動は良好とのことです。さらに中間用量の投与を受けた患児は、最低用量の投与を受けた患児よりも症状改善が良好とのことです。

▽一方で、AAVを用いた治療法とは別に、残されたSMN2遺伝子の機能を活用しようとする遺伝子治療の試みがあります。SMN2遺伝子はSMN1遺伝子と99%共通した配列を有します。コーディング領域においては、単一のシトシンからチミンへの置換がエクソン7の挿入を妨げます。そこで、研究者らは、完全長のSMN2蛋白質を得るためエクソン7の欠損を防ぐ方法を考案しました。

▽チミンへの置換は、エクソン7をmRNAに保持させるのに必要な、スプライシング活性化因子への親和性を減弱させます。研究者らは、近傍に位置するスプライシング抑制因子を阻害することにより、エクソン7を保持させようと考えました。

▽そのために、研究者らはIsis製薬と共同で、スプライシング抑制因子を阻害するためのアンチセンス・オリゴヌクレオチドを設計しました。通常アンチセンス・オリゴヌクレオチドは、ターゲットとするmRNAのRNase Hによる破壊を促進させます。そこで、研究者らはアンチセンス・オリゴヌクレオチドをRNase Hにより認識されないように改良しました。

▽この方法により、モデルマウスにおいて、エクソン7の挿入率を15%から80%以上に改善させることに成功し、生存期間についても10日間から平均的な8ヶ月間に延長させることに成功しました。

▽アンチセンス・オリゴヌクレオチドは通常血液脳関門を通過しないため、髄腔内投与が必要となります。さらにオリゴヌクレオチドは髄液中において4-6ヶ月の半減期で消失します。そのため、治療的に用いるためには4-6ヶ月毎に注入することが必要となります。

▽2014年にISIS社はアンチセンス・オリゴヌクレオチドであるNusinersenの第2相臨床試験を開始しました。16名の幼児を対象とした試験では、6mgの用量では人工呼吸が必要となる期間が平均16.3ヶ月であり、12mgでは13.8ヶ月でした。これらは自然経過での10.5ヶ月より長いものです。

▽また12歳以上のSMN 2型ないし3型の患児に対して行われた試験では、56名の患児に様々な用量の投与が行われました。2014年時点での報告では、投与を受けた患児らは評価尺度において1.5から3.7点の改善を示しており、良好な経過とのことです。

▽現在Isis社は第3相臨床試験へのエントリーを募集しています。7ヶ月齢未満の幼児111名と2-12歳までのより軽症型の小児117名が対象となっています。2017年には終了の予定です。

▽ALSにおいても、遺伝子治療の進展は急速なものがあります。SOD1変異家族性ALSにおいて、ヘアピンRNAをAAVにより導入し、SOD1発現を抑制することで治療的効果を期待する試みが始まっています

▽モデルマウスでの実験では、1度のAAV投与により7週間程度の生存期間延長効果が確認されています。

▽さらに、神経栄養因子を分泌するように誘導されたアストロサイトを移植する試みも進行中です。現在、18名の患者を対象とした第1/2相臨床試験が予定されており、2016年3月に開始予定となっています。

引用元
http://www.researchals.org/page/news/15182
ISIS社のSOD1変異ALSに対するアンチセンス治療の臨床試験が開始
・いよいよ家族性ALSに対するアンチセンス・オリゴヌクレオチドを用いた臨床試験が開始になるという話題です

・12月14付Nasdaqの記事からです

▽Isis製薬は、Biogen社と共同で、アンチセンス製剤であるISIS-SOD1RxによるSOD1変異家族性ALSに対する第I/II相臨床試験を開始することをアナウンスしました

▽無作為割付プラセボ対照試験として行われる本試験は、SOD1変異家族性ALS患者を対象とした安全性、有効性を評価する試験になります。患者は脊髄液中に直接ISIS-SOD1Rxの注入を受けます

▽72名の患者を対象に、約5ヶ月間追跡される予定です。

・良好な結果が期待されます

引用元
http://www.nasdaq.com/article/isisbiogen-initiate-amyotrophic-lateral-sclerosis-study-cm554741
自家骨髄単核球移植のALSに対する有効性
第26回国際ALS/MNDシンポジウム 抄録集その3

・インドで行われた75名のALS患者に対する自家骨髄単核球の髄腔内移植の後方視的解析の報告です

▽標準的なリハビリとリルゾール投与中の75名のALS患者に対して自家骨髄単核球移植を行いました
▽生存解析を行った結果、移植群の平均生存期間は93ヶ月であり、対照群と比較して長いものでした(有意差の有無は不明)。50歳未満で発症した群は、50歳以上で発症した群よりも長い平均生存期間でした(107ヶ月対85ヶ月:有意差の有無は不明)
▽移植後にリチウム投与を受けた群は、リチウム投与を受けなかった群と比較して、統計的に有意に生存期間の延長を認めました(104ヶ月対71ヶ月)
▽非介入試験のため、結果の信頼性は低いものですが、薬剤併用の有無により予後が変化する可能性があり、今後の質の高い臨床試験での検証が期待されます

・大規模臨床試験で有効性について否定的な結果のでたリチウムが登場しています。併用療法やサブグループによっては有効な可能性もあるかもしれません。今後の検証が待たれます

引用元
http://www.tandfonline.com/doi/pdf/10.3109/21678421.2015.1098819
第26回国際ALS/MNDシンポジウム 抄録集その2
SOD1変異に対するアンチセンス・オリゴヌクレオチド治療

・Biogen社より、再生医療として期待されているアンチセンス・オリゴヌクレオチドの動物実験での報告です

▽家族性ALSの一部はSOD1遺伝子変異に起因します。変異SOD1蛋白質は毒性を獲得(gain-of-function)し、発現することにより細胞毒性を発揮します。そのため、SOD1蛋白質の発現を抑制することが治療的となりうる可能性があります

▽今回、研究者らはSOD1に対するアンチセンス・オリゴヌクレオチドを開発し、SOD1変異モデルマウスにおいて検証しました

▽SOD1変異モデルマウスに対して、変異SOD1 mRNAを阻害するように設計されたアンチセンス・オリゴヌクレオチドが、生後50日目と95日目に300ug、脳室内投与されました。

▽その結果、単回投与後8週目までSOD1遺伝子のmRNA量は50%以上減少しました。治療群の生存期間は180日から246日であり、非治療群での平均174日と比較して有意な延長効果を認めました。

▽今回の結果はアンチセンス・オリゴヌクレオチドの中枢投与が安全かつ有効であることを示唆しており、今後ヒトでの臨床試験実現への弾みとなるものです

引用元
http://www.tandfonline.com/doi/pdf/10.3109/21678421.2015.1098819
ヒト間葉系幹細胞移植によるALSラットモデルに対する治療的効果
▽神経変性疾患において、成長因子などを分泌するように遺伝子操作を行ったヒトの幹細胞を移植する方法が注目を集めています。

▽研究者らは、家族性ALSモデルラットにおいて、骨格筋をターゲットとして、遺伝子操作を行った幹細胞を移植することにより、治療的効果があることを示しました

▽研究者らは、ヒト間葉系幹細胞を用いて、神経保護作用を有する成長因子(グリア細胞由来神経栄養因子や血管内皮成長因子など)を分泌するように遺伝子操作し、移植することで治療的効果を検討しました

▽この幹細胞をSOD1変異ALSモデルラットに筋注したところ、神経筋接合部の神経支配の増加や、運動神経細胞の生存期間の延長効果がみられました。将来的な治療法として有望である可能性があります

・Neuralstem社やBrainstorm社の幹細胞移植についても、同様の治療戦略をとるものですが、いずれも幹細胞に栄養因子を分泌させるように分化誘導するプロセスは企業秘密であり特許で保護された領域であったと思われます。今回は学術誌にこのあたりのプロセスも含めて(両社とは異なる方法とは思われますが)公表されるようですので、今後の幅広い発展が期待されます。

(この研究は、アメリカ、University of Wisconsin-MadisonのSuzukiらにより報告され、2016年のMethods in molecular biology誌に掲載予定です)
引用元
http://www.springer.com/series/7651?detailsPage=titles
iPS細胞での研究の進展
・かなくんさん、麦酒王さんよりご提供いただいた話題です
・慶應義塾大学と順天堂大学の研究グループが、iPS細胞から運動神経細胞を分化させ、病態の再現に成功したとのニュースです。
元記事
https://newswitch.jp/p/2584
・かなくんさん、麦酒王さん、ありがとうございました

・以下管理人の独り言ですが、iPS細胞におけるALSの基礎研究の話題については、ALSの病態が細胞自律性か非細胞自律性か、その両者かということが問題になるものだと思います。iPS細胞から分化させた運動神経細胞のみでALSの病態が再現できる場合には細胞自律性の病態ということになると思われます。しかし最近の報告では、ALS患者由来のアストロサイトを健常マウスに移植することで、ALS類似の病態が再現されたとの報告があったり、Brainstorm社やNeuralstem社が行っている神経幹細胞移植についても、神経栄養因子を分泌するように分化誘導した幹細胞を移植することから、非細胞自律性の病態の存在を前提にした治療ということになるでしょうか。全ての報告が正しいとすると、現段階での理解は、ALSの病態は細胞自律性でもあり、非細胞自律性の要因も関与している、ということになるのでしょうか。よくわからないのですが、病態の主座がどこにあるのかについての答えについても、iPS細胞の研究が進展すれば、明らかになることが期待されます。今後の病態研究の進展が期待されます。
Isis製薬がアンチセンス技術を神経変性疾患に適応
・ALS FORUMの10月23日付記事からです

▽RNAをターゲットとした治療法を開発しているIsis製薬は、Roche社と共同でアンチセンス・オリゴヌクレオチドを用いた治療を神経変性疾患への適応を目指しています。

▽最近、ハンチントン病と脊髄性筋萎縮症に対するアンチセンス製剤において進展が報告されました。ハンチントン病に対する治療薬であるISIS-HTTRxの第1相臨床試験が開始予定です

▽脊髄性筋萎縮症においても、モデルマウスでの実験において生存期間延長効果、筋萎縮抑制効果などがみられ、先月のPNAS誌に公表されました

▽ISIS製薬は、C9ORF72変異ALSにおいてもアンチセンス製剤を開発中です。今後の進展が期待されます

引用元
http://www.researchals.org/page/news/drug_news/15088
アメリカALS協会後援の最新の治療法についての会議開催
・ALS NEWS TODAYの10月23日付記事からです

▽アメリカALS協会が後援した会議がニューヨークで開催されました。研究者らがALSについての3つの治療分野について議論しました。アンチセンス治療、遺伝子治療、幹細胞治療の3分野です

▽アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた遺伝子治療は、対象とするRNAに結合する短鎖オリゴヌクレオチドを用いて、遺伝子発現を不活性化し、異常蛋白質生成を阻害するものです

▽このアプローチは現在、SOD1遺伝子変異とC9ORF72遺伝子変異に対する治療法として開発中です。ワシントン大学では、SOD1変異に対するアンチセンス治療を開発中であり、近日中に第1相臨床試験を開始したいとしています。

▽カリフォルニア大学ではC9ORF72遺伝子変異に対するアンチセンス治療を開発中であり、2016年にも第1相臨床試験を開始したいとしています

▽2つ目のアプローチは遺伝子治療です。Voyager Therapeutics社はSOD1遺伝子変異に対してウイルスベクターを用いた遺伝子治療を開発中です。現在前臨床段階にあります。オハイオ大学では遺伝子治療の有効性を前臨床試験段階で確認中です。ウイルスベクターを用いる治療法では、アンチセンスをコードした遺伝子を導入することもできますが、アンチセンスを用いる治療法よりも長い機能的な遺伝子を導入可能な利点があります。

▽3つ目のアプローチは幹細胞治療です。NSI-566の臨床試験を実施中のEmory大学のほか、Cedars-Sinai Hospitalでは、新たな幹細胞治療の第1相臨床試験を2016年に開始予定とのことです

引用元
http://alsnewstoday.com/2015/10/23/als-promising-therapies-take-center-stage-researchers-meeting/
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