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遺伝子治療と幹細胞治療の希望
・12月19付ALS FORUMの記事からです

▽12月11日から13日までオーランドで開催された第26回国際ALS/MND会議では800名以上の研究者らが集いました。この場で参加者らは、早急な治療法の開発の必要性について実感し、同時に新規治療法や研究の進歩を感じました。

▽特に遺伝子治療のセッションでは将来に希望の持てる内容がプレゼンされました。それはオハイオ州コロンバス小児病院のBrian Kasparの発表であり、脊髄性筋萎縮症の遺伝子治療の最新の結果について公表されたものです。

▽脊髄性筋萎縮症は通常生後2年以内に致死的となる疾患ですが、Kasparらの臨床試験において、2014年春に治療を開始された小児は、現在も生存しており補助なしで起立可能であり、このような状態は未治療の脊髄性筋萎縮症患者ではなしえない状態とのことです。

▽この臨床試験は第1/2相臨床試験として行われており、アデノ随伴ウイルス9(AAV9)を用いる遺伝子治療です。脊髄性筋萎縮症は常染色体劣性遺伝形式であり、SMN1遺伝子のミスセンス変異(コードされるアミノ酸が別のアミノ酸に置き換わる)ないし欠損変異により生じます。

▽SMN1遺伝子は運動神経細胞の生存に関与する蛋白質をコードしています。SMN遺伝子にはSMN2遺伝子が存在します。SMN2遺伝子はSMN1遺伝子と相同性が高いですが、SMN1遺伝子と一塩基のみ異なるSMN2遺伝子は、選択的スプライシングにより主としてエクソン7を欠くSMN蛋白質を生じます。しかしSMN2遺伝子よりわずかに産生されるエクソン7を含む完全長のSMN蛋白質の存在により、SMN1遺伝子の対立遺伝子双方の変異を有する罹患患者の症状を緩和することがわかっています

▽そのため、脊髄性筋萎縮症は重症度に幅があり、その程度はSMN2遺伝子から完全長のSMN蛋白質が産生される発現量によります。SMN1遺伝子変異のキャリア(片方の対立遺伝子のみ変異を有する)においても軽度の症状を呈することがあり、IV型に分類されており、30代以降に発症します。最重症型のI型では、SMN2遺伝子から産生される完全長のSMN蛋白質がほとんどなく、幼児期に発症し重篤な経過をたどります

▽今回は研究者らはアデノ随伴ウイルスベクター9(AAV9)を用いて正常なSMN1遺伝子を運動神経細胞に導入することを目指しました。AAVはサブタイプにより異なる構造、ターゲットとする細胞を持ちます。

▽AAV9は血液脳関門を通過することが可能であり、ガラクトースの結合した細胞蛋白質に結合します。この性質により運動神経細胞とアストロサイトをターゲットにすることができます。AAV9が一旦ターゲット細胞に結合すると、運搬遺伝子は核内に挿入され、染色体外のDNAとして長期に保存されます。このことにより、原理的には一度のみの治療により、SMN蛋白質を生涯にわたり供給することが可能となります。

▽重度SMNのモデルマウスにおいては、この遺伝子治療により27週間以上の生存効果が観察され、未治療の場合には2週間前後で死亡したとのことです。

▽研究者らは今回の臨床試験において、9ヶ月齢未満の18名の幼児をエントリーしました。全員が6ヶ月齢未満で発症し、重症型の特徴を有するものでした。被検者らは正常SMN1遺伝子を運搬するAAV9の静注を1度のみ受けました。18名は3つの異なる用量に分けられました。

▽最小の用量では、3名の幼児が体重1kgあたり6.7×10の19乗個のウイルスを注入されました。最高用量では体重1kgあたり3.3×10の20乗個のウイルスが注入されました。

▽通常の経過であれば、10.5ヶ月の経過で約半数の患者が呼吸器を必要とする状態になります。このような自然経過と被検者の経過が比較される予定です。2017年6月にこの臨床試験は終了予定です。

▽現段階では、最高用量を投与された被検者はまだいません。今回の会議では、3名の最低用量の投与を受けた被検者と、7名の中間用量の投与を受けた被検者のデータが一部公表されました

▽現在までのところ、副作用はみられないとのことです。最初の患児がエントリーされた2014年4月から、今年の9月30日までの間で、死亡した被検者はなく、呼吸器が必要となった被検者もいないとのことです。

▽さらに、遺伝子治療を受ける前よりも運動は良好とのことです。さらに中間用量の投与を受けた患児は、最低用量の投与を受けた患児よりも症状改善が良好とのことです。

▽一方で、AAVを用いた治療法とは別に、残されたSMN2遺伝子の機能を活用しようとする遺伝子治療の試みがあります。SMN2遺伝子はSMN1遺伝子と99%共通した配列を有します。コーディング領域においては、単一のシトシンからチミンへの置換がエクソン7の挿入を妨げます。そこで、研究者らは、完全長のSMN2蛋白質を得るためエクソン7の欠損を防ぐ方法を考案しました。

▽チミンへの置換は、エクソン7をmRNAに保持させるのに必要な、スプライシング活性化因子への親和性を減弱させます。研究者らは、近傍に位置するスプライシング抑制因子を阻害することにより、エクソン7を保持させようと考えました。

▽そのために、研究者らはIsis製薬と共同で、スプライシング抑制因子を阻害するためのアンチセンス・オリゴヌクレオチドを設計しました。通常アンチセンス・オリゴヌクレオチドは、ターゲットとするmRNAのRNase Hによる破壊を促進させます。そこで、研究者らはアンチセンス・オリゴヌクレオチドをRNase Hにより認識されないように改良しました。

▽この方法により、モデルマウスにおいて、エクソン7の挿入率を15%から80%以上に改善させることに成功し、生存期間についても10日間から平均的な8ヶ月間に延長させることに成功しました。

▽アンチセンス・オリゴヌクレオチドは通常血液脳関門を通過しないため、髄腔内投与が必要となります。さらにオリゴヌクレオチドは髄液中において4-6ヶ月の半減期で消失します。そのため、治療的に用いるためには4-6ヶ月毎に注入することが必要となります。

▽2014年にISIS社はアンチセンス・オリゴヌクレオチドであるNusinersenの第2相臨床試験を開始しました。16名の幼児を対象とした試験では、6mgの用量では人工呼吸が必要となる期間が平均16.3ヶ月であり、12mgでは13.8ヶ月でした。これらは自然経過での10.5ヶ月より長いものです。

▽また12歳以上のSMN 2型ないし3型の患児に対して行われた試験では、56名の患児に様々な用量の投与が行われました。2014年時点での報告では、投与を受けた患児らは評価尺度において1.5から3.7点の改善を示しており、良好な経過とのことです。

▽現在Isis社は第3相臨床試験へのエントリーを募集しています。7ヶ月齢未満の幼児111名と2-12歳までのより軽症型の小児117名が対象となっています。2017年には終了の予定です。

▽ALSにおいても、遺伝子治療の進展は急速なものがあります。SOD1変異家族性ALSにおいて、ヘアピンRNAをAAVにより導入し、SOD1発現を抑制することで治療的効果を期待する試みが始まっています

▽モデルマウスでの実験では、1度のAAV投与により7週間程度の生存期間延長効果が確認されています。

▽さらに、神経栄養因子を分泌するように誘導されたアストロサイトを移植する試みも進行中です。現在、18名の患者を対象とした第1/2相臨床試験が予定されており、2016年3月に開始予定となっています。

引用元
http://www.researchals.org/page/news/15182
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コメント
コメント
ありがとうございます
HIDEさん、いつもありがとうございます。

いつもこのサイトから勇気をもらっています。
感謝です。
2015/12/25(金) 08:54:39 | URL | 麦酒王 #- [ 編集 ]
やっぱり
HIDEさん

いつも希望をありがとうございます。

やっぱり、遺伝子治療ですね。
2012年9月に東大の郭先生がAAVによる研究を発表されて以来、この遺伝子治療の早期臨床応用を期待する日々ですが、今回の脊髄生筋萎縮症の発表で更に確信を持つことが出来ました。

何年も前から言い続けていますが、研究は優秀な研究者にお任せする外ないわけですから、我々は有望な研究が出てきた時に早期臨床応用出来る環境づくりに注力すべきだと思います。
日本ALS協会などの協力も得難く、一言で環境づくりとは言っても大変なわけですが。

でも、地球上に未承認の治療薬、治療法が出来た時に法律の壁によって間に合わないということでは納得出来ませんし、近い将来、あり得る話かもしれません。
AAVは既に他疾患では臨床応用され、その安全性は確認されたウイルスです。しかし、株式会社遺伝子治療研究所などのパイプラインでは臨床応用までは数年を要する計画となっています。
この問題は研究者の問題ではなく、患者の問題ではないでしょうか。しかし、少数の患者の声では何も動かすことは出来ません。

2016年、ALSが治るかどうかは別として、治療を受ける権利を社会が容認してくれるといいなと思います。
2015/12/25(金) 11:37:21 | URL | いのべた #- [ 編集 ]
Re: ありがとうございます
>麦酒王さん

こちらこそ、いつも情報を御提供いただきありがとうございます。
今後ともよろしくお願いします
2015/12/26(土) 23:33:45 | URL | HIDE #- [ 編集 ]
Re: やっぱり
>いのべたさん

いつもありがとうございます。
確かに日本発のAAV治療、大きな期待が寄せられていますね。ただ実現までに時間がかかりそうで、時間が命のALSでは、もどかしい限りです。
動き出した患者申出療養制度が、実際に患者の権利実現のために運用されることを期待します。
2015/12/26(土) 23:37:28 | URL | HIDE #- [ 編集 ]
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