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活性酸素による核酸の酸化に起因する神経変性のメカニズムを解明
九州大学(九大)は12月3日、代表的な酸化塩基である8-オキソグアニン(8-oxoG)のゲノムDNAへの蓄積を抑制する酵素(MTH1とOGG1)が効率よく神経変性を抑制するのに対し、MUTYHは8-oxoGに誤って取り込まれたDNAを構成する4つの塩基のうちの1つであるアデニンの塩基除去修復を介して神経細胞死とミクログリオーシスを誘導することを明らかにしたと発表した。
同成果は同大生体防御医学研究・ヌクレオチドプール研究センターの中別府雄作 主幹教授、同 盛子敬 助教らによるもの。詳細は米国科学雑誌「Journal of Clinical Investigation」に掲載された。

活性酸素ストレスは、神経変性疾患の原因の1つとして注目されているが、それがどのような分子メカニズムで神経細胞脱落を引き起こすかは明らかではない。パーキンソン病やアルツハイマー病、ハンチントン病など多くの神経変性疾患で神経細胞のミトコンドリアDNAにグアニン塩基の酸化体である8-oxoGが多量に蓄積することが報告されているため、8-oxoGが酸化ストレスによる神経変性のマーカー(指標)の1つとして注目されるようになっているが、神経変性の原因となるかどうかは不明であった。

これまで研究グループは、酸化ストレスに曝された細胞内でヌクレオチドプール中のdGTPGTPGTP(デオキシグアノシン三リン酸:ヌクレオチドの1つ)が酸化されて8-oxo-dGTPとなり、DNA複製に際して核やミトコンドリアDNAに取り込まれて細胞死の原因となることを明らかにしてきた。

今回の研究では、活性酸素ストレスによって引き起こされる神経変性疾患モデルとして、サトウキビなどに付着するカビが産生するミトコンドリア神経毒3-ニトロプロピオン酸(3-NP)の動物投与により、引き起こされるハンチントン病モデルを用いてMTH1、OGG1、MUTYHの欠損の影響解析を実施した。ちなみに3-NPはミトコンドリアのコハク酸脱水素酵素の不可逆的阻害剤であり、ミトコンドリアでの活性酸素生成を亢進させ、ヒトやサル、マウスが摂取すると線条体の変性を引き起こし、ハンチントン病様の神経機能障害を発生するものである。

その結果、MTH1、OGG1、MUTYHの3つの遺伝子をそれぞれ単独に欠損したマウスとOGG1/MTH1の2重欠損マウス、して野生型マウスに3-NPを投与したところ、2重欠損マウスが最も重篤な運動機能障害を呈し、線条体に高度な8-oxoGの蓄積を伴う神経細胞脱落を呈することが明らかとなった。3-NPによる8-oxoGの蓄積は線条体変性の早期に主に中型有棘神経細胞のミトコンドリアDNAに認められ、ミトコンドリア機能障害を介してカルシウムで活性化される細胞内タンパク質分解酵素の一種であるカルパイン活性化を伴う神経細胞死を引き起こした一方、線条体変性の後期には神経細胞脱落部に増生したミクログリアの核DNAへの8-oxoG蓄積が認められ、単量体のADP-riboseを結合させて重合体のpoly[ADP-ribose]を合成する酵素「poly[ADP-ribose]ポリメラーゼ(PARP)」の活性化とアポトーシス(プログラム細胞死)誘導因子(AIF)の核移行が認められたという。また、3-NPによる線条体神経細胞脱落、ミクログリオーシス、そして運動機能障害のいずれもカルパイン阻害剤、あるいはPARP阻害剤の投与により有意に軽減されることも確認されたという。
さらに、OGG1単独欠損マウスとOGG1/MUTYH2重欠損マウスの3-NP投与に対する応答を比較したところ、2重欠損
マウスにおいては運動機能障害が顕著に軽減し、線条体における神経細胞脱落およびミクログリオーシスもほとんど認められなかったほか、OGG1欠損マウス線条体の中型有棘神経細胞のミトコンドリアDNAとミクログリアの核DNAに認められた塩基除去修復の過程で生じる一本鎖切断の蓄積も2重欠損マウスにおいては完全に抑制されていることが確認された。

研究グループではこれまでの研究で、ヒトMTHを高発現するトランスジェニックマウスが3-NPによる8-oxoGの線条体蓄積と線条体変性に対して顕著な抵抗性を示すことを報告しているが、今回の2重欠損マウスが最も高いレベルの8-oxoGをミトコンドリアDNAに蓄積し、3-NPの神経毒性に対して最も高い感受性を示す事実と合わせて考えると、ヌクレオチドプール中のdGTPの酸化で生じた8-oxo-dGTPがミトコンドリアDNA中に取り込まれて蓄積したと結論付けられるという。

細胞分裂しない神経細胞では核DNAは複製されないが、ミトコンドリアは神経細胞の機能維持に不可欠なエネルギーを供給するためにそのDNAを常に複製し、新たなミトコンドリアをシナプスなどに供給している。ヌクレオチド
プール中に生じた8-oxo-dGTPがDNA中に取り込まれるためにはDNAの複製が不可欠だが、3-NPを投与した2重欠損マウスの神経細胞では複製するミトコンドリアDNAにのみ8-oxoGが高度に蓄積し、その後の複製に際してDNA中に
存在する8-oxoGに対して取り込まれたアデニンをMUTYHが除去することで開始される塩基除去修復の中間産物である一本鎖切断の生成が過剰となり、ミトコンドリアDNAが分解枯渇したと考えられると研究グループではしており、その結果として、ミトコンドリア膜電位が維持されなくなり、細胞質に放出されたカルシウムによって活性化
されたカルパインに依存した神経細胞死が誘導されることとなるとしている。

一方、神経細胞死は炎症反応としてミクログリアの活性化と増殖を誘発するが、活性化ミクログリアはそれ自身がNADPH oxidase(NOX)などにより活性酸素を生成するため、ミクログリアのヌクレオチドプールにも8-oxo-dGTPが蓄積。ミクログリアはその増殖に際して核DNAを複製することから、ヌクレオチドプールからその核DNA中に8-oxoGが取り込まれて蓄積され、核DNA中に多量に蓄積した8-oxoGもその後の複製に際してアデニンと対合し、MUTYHによる塩基除去修復の標的となるため、核DNAの新生鎖に一本鎖切断が蓄積し、PARPが活性化され、その下流でミトコンドリアに局在するAIFが切断され核に移行してアポトーシスを誘導することが明らかとなった。
このような状況はミクログリオーシスをさらに増悪させ、線条体の変性を著しく促進するものと考えられるという。8-oxoGはアルツハイマー病やパーキンソン病患者の剖検脳の解析でも神経細胞のミトコンドリアに顕著に蓄積 することが知られている。研究グループでは、このような神経変性疾患や活性酸素ストレスが関わるその他の臓器の変性疾患の発症にも今回明らかとなった分子メカニズムが関与する可能性が強く示唆されるとしており、ヒトのMTH1、OGG1、MUTYH遺伝子にはさまざまな遺伝子多型が報告されており、その解析から神経変性感受性の診断が可能になることが期待されるとする。また今後は、MTH1とOGG1の発現誘導および機能亢進、MUTYHの発現、機能抑制を分子標的とした新たな創薬により、老化とともに発症頻度が増加する変性疾患の新たな治療戦略の提供が可能になるものとの期待も示している。

▽九州大学プレスリリース
http://www.kyushu-u.ac.jp/pressrelease/2012/2012_12_03.pdf
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