ALS(筋萎縮性側索硬化症)に負けないで
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脱リン酸化酵素であるカルシニューリンは病的なTDP-43のリン酸化を制御する
▽ALS患者の90%以上において不溶性TDP-43封入体が神経細胞において観察されます。TDP-43蛋白症においては、凝集したTDP-43蛋白質は翻訳後修飾を受けており、中でもリン酸化TDP-43の存在は最も典型的な病的TDP-43封入体の特徴です。

▽異常リン酸化TDP-43はTDP-43が毒性を発揮する要因と考えられています。現在までTDP-43のリン酸化をもたらす酵素がいくつか同定されています。しかしTDP-43のリン酸化を正常化する脱リン酸化酵素については報告されていませんでした。

▽今回、研究者らは、脱リン酸化酵素であるカルシニューリンがTDP-43のC末端における病的リン酸化を脱リン酸化する作用を有する事を試験管内の実験においてみいだしました

▽TDP-43蛋白症の線虫モデルにおいては、カルシニューリンを遺伝子的に除去すると、過剰リン酸化TDP-43の蓄積が観察され、病態の悪化がみられました。

▽ヒト培養細胞においては、カルシニューリン阻害薬であるタクロリムスの投与は、異常リン酸化TDP-43の蓄積につながりました。

▽以上の結果は、カルシニューリンが異常リン酸化TDP-43の脱リン酸化酵素として作用する可能性を示唆しており、カルシニューリン阻害作用のある薬剤はTDP-43蛋白症の増悪につながる可能性があることを示唆するものです。

(この研究は、アメリカ、Geriatrics Research Education and Clinical CenterのLiachkoらにより報告され、平成28年7月29日付のActa Neuropathologica誌に掲載されました)
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シャペロンであるHSPB8はTDP-43の毒性より細胞を保護する
▽ALSにおいてはTDP-43とその切断断片であるTDP-25およびTDP-35の蓄積がみられます。TDP-25およびTDP-35はTDP-43の凝集および機能変化、毒性発揮に際して起点的な役割を果たしており、TDP-25およびTDP-35の凝集を抑制し、それらの分解を促進することは、細胞毒性を軽減することにつながると考えられます。

▽HSPB8の発現亢進は、そのような目的を達成するための1つの手段として有望なものです。なぜならHSPB8はTDP-43の断片の排泄を促進する作用を有しており、ヒトALS患者の残存運動神経細胞においては発現が亢進しています。

▽研究者らはHSPB8の過剰発現がTDP-25およびTDP-35の凝集を減少させ、TDP-43の異常局在化による病態から保護的な作用を有する事を、動物モデルにおいてみいだしました

▽ショウジョウバエALSモデルを用いた病態観察において、TDP-43およびTDP-25の過剰発現は軽度の神経変性をもたらすのに対して、TDP-35の過剰発現は、重度の神経変性をもたらすことがわかりました。ヒトHSPB8に対応するHSP678cの過剰発現により、TDP-35の毒性が緩和されました。

▽以上の結果は、HSPB8の過剰発現がTDP-43断片に起因した細胞毒性を緩和し、治療的効果を有する可能性を示唆するものです

(この研究はイタリア、Mondino National Neurological InstituteのCrippaらにより報告され、平成28年7月27日付のHuman Molecular Genetics誌に掲載されました)
SMN発現亢進はTDP-43変異モデルマウスの生存期間を延長させる
▽RNA結合蛋白質であるSMN(survival motor neuron)およびTDP-43の変異は、各々脊髄性筋萎縮症およびALSにおける進行性の運動神経変性の原因となります。

▽運動神経細胞においてSMNが低濃度であることは脊髄性筋萎縮症の病態につながりますが、近年、ALSにおいてもSMN濃度の異常と機能異常が報告されています。

▽今回、研究者らはTDP-43変異ALSモデルマウスにおいては、発症初期では運動神経細胞においてSMNの発現が亢進しており、TDP-43およびHuRを含有するSMN凝集体が運動神経細胞に存在することをみいだしました。

▽TDP-43蛋白症において、SMN濃度を上昇させることがどのような影響をもたらすかを調べるため、モデルマウスにおいてヒトSMN蛋白質を過剰発現させたところ、発症遅延と生存期間の延長がみられました

▽またSMNの発現亢進は、運動神経変性を防ぎ、アストロサイトとミクログリアの活性化を減弱させ、AMPキナーゼの活性化を回復させました。

▽以上の結果は、TDP-43変異ALSモデルマウスの運動神経細胞において、SMNを過剰発現させることは、発症遅延効果と病態改善効果を有することを示唆しています。さらにはヒトにおいてもSMN濃度を上昇させることが、治療的に有効な可能性があります

(この研究は、オーストラリア、 University of MelbourneのPereraらにより報告され、平成28年7月27日付のHuman Molecular Genetics誌に掲載されました)
Neuregulin-1は発症後のALSモデルマウスの機能的改善をもたらす
▽ALSにおいては、神経筋接合部の変性が遠位部より近位部に進行(dying back)し、さらに運動神経細胞の変性へとつながると考えられています。

▽Neuregulin-1(Nrg1)は神経筋接合部の発達と維持に必要な神経栄養因子であり、Nrg1受容体であるErbB4の機能喪失変異はALSの病因として報告されています。

▽今回、研究者らはSOD1変異ALSモデルマウスの筋肉においてNrg1 type I(Nrg1-I)の役割を調べました。研究者らはNrg1-Iをアデノ随伴ウイルスベクターを用いて過剰発現させ、神経筋接合部機能や、分子機構について調べました。

▽その結果、Nrg1-Iの発現亢進は、末端シュワン細胞に作用することにより、運動神経軸索の側枝発芽を促進し、AktおよびERK1/2経路を通じて筋肉変性を阻害することがわかりました

▽さらに、第4腰髄脊髄神経を切断することにより、部分的な筋肉変性モデルを作成し、Nrg1-Iアデノ随伴ウイルスベクターを筋注したところ、筋肉の再生が促進されました。

▽以上の結果は、Nrg1-Iが筋肉の側枝発芽過程において重要な役割を果たしていることを示唆しており、ALSの機能的回復を目指した治療法探索において新たな方向性をもたらすものです。

(この研究は、スペイン、 Universitat Autònoma de BarcelonaのMancusoらにより報告され、ひえ性28年7月23日付のNeurobiology of Disease誌に掲載されました)
ALS患者の3%に関連する新たな遺伝子変異の発見
・ScienceDailyの7月25日付記事からです

▽全ALS患者の約3%にみられる遺伝子変異が過去最大規模15000名以上のALS患者の遺伝子研究(Project MinE)により明らかになりました。研究成果は最新号のNature Genetics誌に公表されました。

▽全体の3%というと少なくみえますが、ALS全体の10%程度が家族性であることを考慮すると、ALSに関連した遺伝子変異に占める割合としては比較的高いものとなります。

▽この遺伝子はNEK1遺伝子とよばれるものです。NEK1遺伝子のALS関連変異は、遺伝子の機能喪失をもたらすと考えられています。NEK1遺伝子は神経細胞において様々な役割を果たしており、細胞骨格の維持や細胞内輸送などに関与していると考えられています。

▽さらにNEK1遺伝子は、ミトコンドリア膜機能の制御にも関与しており、これらの機能が喪失することにより、ALS発症リスクの上昇につながると考えられています

NEK1遺伝子の機能が明らかになることにより、新たな治療対象の発見につながる可能性があります。アメリカALS協会は、今回の研究に対して資金供与をしていますが、さらに新たなモデルマウスを作成するための研究に対しても資金供与を行っています。このことにより治療法開発が進展することが期待されています

引用元
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/07/160725151246.htm
ProMIS Neurosciences社が折り畳み異常蛋白質をターゲットとした治療法開発開始
・ALS NEWS TODAYの7月22日付記事からです

▽ProMIS Neurosciences社がTDP-43などをターゲットとした治療法開発に着手しました。

▽ProMIS社は折り畳み異常蛋白質の表面構造をターゲットとして、治療対象となる構造をみいだすために計算論的手法を用いています。また折り畳み異常蛋白質に対する抗体もいくつか同定しています

▽同社は今後、さらに特異性の高い、折り畳み異常TDP-43蛋白質に対する抗体を同定したいとしています。

引用元
https://alsnewstoday.com/misfolded-als-protein-is-focus-of-promis-neurosciences-research-effort
Amylyx社がAMX0035の第2相臨床試験のための資金確保
・ALS RESEARCH FORUMの7月21日付記事からです

▽Amylyx製薬は、同社のALS治療薬候補であるAMX0035(フェニル酪酸ナトリウムとタウロウルソデオキシコール酸の合剤)の第2相臨床試験に向けての資金をアメリカALS協会などから供与されました。

▽AMX0035は神経保護作用と抗炎症作用により治療的効果が期待されており、動物実験では有効性が確認されている他、各成分は臨床試験においても安全性が確認されています。

▽第2相臨床試験はアメリカで今年中にも開始予定とされています。良好な結果が期待されます

引用元
http://www.alsresearchforum.org/amylyx-secures-funds-for-phase-ii-trial-of-amx0035-in-als/
iPS細胞由来運動神経細胞は加齢でALS細胞モデルにより適合する
・ALS RESEARCH FORUMの7月19日付記事からです

▽7月18日付のNature Neuroscience誌に掲載された論文によると、研究者らは、ALSのiPS細胞由来モデルについて新たな知見を見出しました

▽iPS細胞由来の脊髄運動神経細胞のトランスクリプトーム解析を行い、胎児由来脊髄組織と、成人の脊髄組織とを比較した結果によると、iPS細胞由来脊髄運動神経細胞は、胎児由来組織により類似した性質を有する事が明らかになりました

▽さらに、研究者らは加齢に応じて活性化する遺伝子ネットワークの変化を明らかにし、ALSの病態がいかにこのネットワークを障害するかについて明らかにしました。

▽ALSの細胞モデルを構築する際には、加齢による性質の変化を考慮することで、より病態を正確に反映したモデルの構築が可能になるのではないかとのことです

引用元
http://www.alsresearchforum.org/ipsc-derived-motor-neurons-may-need-to-age-to-better-model-als/
BrainStorm社のNurOwn幹細胞移植のアメリカでの第2相臨床試験結果速報
・BrainStorm社7月18日付Press Releaseからです

・アメリカで施行された48名を対象とした第2相試験(プラセボ対照二重盲検試験)の結果速報です。ざっとみた感じ、なかなか良好な結果の印象です。プラセボ群の人数が少ないため、統計的有意差がはっきりしないところもありますが、NurOwn細胞について初めての、プラセボ対照での質の高い臨床試験での検証結果であり、期待のもてる結果といえそうです。

▽患者は骨髄より自家幹細胞を採取後に、神経栄養因子を分泌する細胞に分化誘導され(NurOwn細胞)、くも膜下腔内および筋肉内に単回投与されました。投与群は36名、プラセボ群は12名でした。投与後1ヶ月ごとに評価され、24週後まで経過観察されました

▽投与前のALSFRS-Rの変化率、静的肺活量の変化率と、投与後の変化率とが比較され、変化量の改善度により治療効果が判定されました。

▽その結果、ALSFRS-Rの変化率が、投与前と比較して50%以上改善した群を反応群と定義した場合(25%以上の改善で臨床的に有意、50%以上の改善で臨床的にかなり有意とされる)、反応率は、12週時点において、投与群の40%、プラセボ群の17%でした。

▽さらにALSFRS-Rの変化率の改善度が100%以上のものを反応群と定義した場合、投与4週後では投与群35名中19名、プラセボ群11名中4名が反応群に含まれ、投与12週後では投与群35名中10名、プラセボ群では12名中1名が反応群に含まれ、24週後では投与群35名中4名、プラセボ群では0名でした。

▽さらに変化率ではなく、投与前と比較して、ALSFRS-Rの変化量が1ヶ月あたり1.5点以上改善した群を反応群と定義すると、4週目、12週目、16週目で統計的に有意に投与群の方が反応率が高いとの結果になりました。

▽また髄液中のVEGFやHGFなどの栄養因子の量については投与群において治療前後で統計的に有意な増加がみられ、炎症マーカーについては統計的に有意な減少がみられました。

▽副作用については、重大なものはなく、概ね軽度から中等度であり、移植に伴う頭痛や背部痛、発熱などが主でした。

引用元
http://ir.brainstorm-cell.com/phoenix.zhtml?c=142287&p=RssLanding&cat=news&id=2186054
ALSの治療に新たな視点
・ScienceDailyの7月15日付記事からです

▽Harvard Stem Cell Instituteの研究者らは、ALSの一部の患者においては骨髄移植が治療的に有効な可能性があることを報告しました

▽今週のScience Translational Medicine誌に報告されたモデルマウスでの研究結果によると、ALSにおける最も頻度の高い遺伝子変異を有する場合には、血液系や免疫系にも異常をきたしうる可能性が示唆されました

C9ORF72遺伝子を完全にノックアウトされたマウスにおいては、肝脾腫とリンパ節腫脹を呈し、対立遺伝子の一方が機能しないマウスでは、より軽度ながら類似の病態がみられました。

▽これらの結果は、C9ORF72遺伝子が免疫系に影響を与えることを示唆しています。ノックアウトマウスに対して骨髄移植を施行したところ、生存期間の延長(平均43日間)が観察されました。

▽これまで抗炎症作用を有する薬剤や骨髄移植がALSに対して有効かどうかについては、長年議論されてきました。臨床試験では全体としては芳しい結果は得られていません。また患者において炎症反応が観察されることもあれば、観察されないこともあり、混乱を招いてきました。

▽ALSの原因となりうる遺伝子変異の種類は多く、今回の結果を踏まえると、骨髄移植などの免疫系に対する治療が、一部のALSの亜型において有効である可能性があり、今後の臨床試験は対象を適切に選択して行う必要があるといえそうです

引用元
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/07/160715171306.htm
間葉系幹細胞はTGF-β産生を通じてミクログリアの機能変化をもたらす

▽神経変性疾患においてミクログリアは治療ターゲットの1つとなっています。これまで研究者らは間葉系間質細胞におけるTGF-β産生能が、ALSに対する自家間葉系間質細胞移植における有効性の指標となりうる可能性を指摘してきました

▽しかし、間葉系間質細胞におけるTGF-βがミクログリア機能に与える影響についてはよくわかっていませんでした

▽今回、研究者らは間葉系間質細胞からのTGF-βが、ミクログリアの神経炎症における機能に与える影響について調べました。その結果、間葉系間質細胞培養上清は、ミクログリアの炎症促進性サイトカイン発現を抑制し、活性化ミクログリアマーカーの正常化をもたらしました。

▽さらに、これらの効果については、主として間葉系間質細胞培養上清におけるTGF-βが、ミクログリアにおけるNF-κB経路を抑制し、TGF-β経路を回復させることによりもたらされることがわかりました。

▽以上の結果は、間葉系間質細胞由来のTGF-βがミクログリア機能の正常化をもたらし、治療的効果をもたらすことができる可能性を示唆するものであり、TGF-β産生能の重要性を示唆するものです。

(この研究は、韓国、Hanyang UniversityのNohらにより報告され、平成28年7月8日付のStem cells translational medicine誌に掲載されました)
ALS原因、一部解明=治療薬開発に期待―慶応大
・かなくんさんより御提供いただいた話題です
・以前こちらの記事(http://alexkazu.blog112.fc2.com/blog-entry-962.html)にて御紹介した内容の続報でしょうか。
・詳細は以下を御参照ください
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/files/2016/7/4/20160704_1.pdf
・今後益々の成果が期待されます
・かなくんさん、ありがとうございました。
発症後のmasitinib投与は神経炎症を緩和しALSモデルラットの症状を緩和する
▽SOD1変異ALSモデルマウスにおいてはグリア細胞の異常な活性化が病態に関与していると考えられています。そのため活性化したグリア細胞の影響を薬理学的に緩和することが治療的に有効であることが期待されています

▽研究者らはグリア細胞の異常活性化はそのキナーゼ受容体活性化に依存しているとの仮説の下、チロシンキナーゼ阻害剤であるmasitinibが神経炎症を抑制することにより、モデル動物において治療的効果を発揮することができるのではないかと考えました。

▽SOD1変異ALSモデルラットから分離したミクログリアを用いて、masitinibの作用が検証されました。また症状出現後のモデルラットに対してmasitinibが経口投与され、効果が検証されました

▽その結果、masitinibは選択的にチロシンキナーゼ受容体であるCSF-1Rの活性を阻害しました。さらにミクログリアからの炎症活性化物質の放出を抑制しました。またモデルラットへのmasitinib投与は異常グリア細胞数を減少させ、ミクログリーオーシスを減少させ、生存期間を40%延長しました。

▽以上の結果は、masitinibがミクログリオーシスを抑制し、ALSにおける神経炎症をコントロールし、症状発現後であっても病態遅延効果をもたらすことができる可能性を示唆するものです

(この研究はウルグアイ、Institut Pasteur de MontevideoのTriasやAB Science社の研究グループにより報告され、平成28年7月11日付のJournal of Neuroinflammation誌に掲載されました)
Isis社のアンチセンス製剤の第1相臨床試験募集開始
▽Isis社のアンチセンスオリゴヌクレオチド製剤であるISIS-SOD1RxによるSOD1変異家族性ALSに対する第I/II相臨床試験が募集開始となっています。

▽72名を対象としてプラセボ対照の二重盲検試験が行われる予定です。

▽家族性ALSに対する新規治療であり、成功すればその他の家族性ALSについても応用が可能となる可能性があり、良好な結果が期待されます。

引用元
http://www.als.net/als-clinical-trials/254/
ALS治療薬候補としての抗てんかん薬
▽ペランパネルが話題になっていますので、ALSと抗てんかん薬の臨床試験について、すこし記事にしておきます。

▽これまでに、ALSに対する抗てんかん薬についてはガバペンチン、バルプロ酸が第3相試験まで到達し、現在Ezogabineが第2相臨床試験実施中です。

▽ガバペンチン、バルプロ酸については残念ながら有望な結果を得ることはできませんでした。

▽作用機序としては、ガバペンチンは正確にはよくわかっていないようですが、電位依存性カルシウムチャネルの抑制など、バルプロ酸についてはGABAトランスアミナーゼ阻害による興奮抑制など、Ezogabineについてはカリウムチャネル開放による興奮抑制などが考えられています。

▽ペランパネルはグルタミン酸AMPA受容体阻害による興奮抑制であり、さらに選択性も高いことから、これまでの抗てんかん薬とは作用機序が異なります。トピラマートがAMPA受容体抑制作用を有するとされますが、その他の機序も想定されており選択的特異性は高くないようです。

▽ペランパネルがALSに有効かもしれない、とのプレスリリースがありましたが、その根拠は、ADAR2ノックアウトALSモデルマウスでの有効性が報告されたことによります。

▽ADAR2の発現が阻害された状況では、AMPA受容体がカルシウム透過性となり、その結果、運動神経細胞死が生じるとされています。従って、モデルマウスではAMPA受容体を阻害すれば、病態進行を阻止しうることが予想され、その予想通りになったとの今回の報告です。

▽この結果をヒトにあてはめることができるかどうかは、ヒトにおける病態とモデルマウスの病態がどの程度一致しているかによります。

▽一致していれば、期待はできると思われますが、抗てんかん薬の副作用の可能性を考慮すると(最近の抗てんかん薬は比較的安全性の高いものもありますが、どうしても臨床家としては、抗てんかん薬といえばカルバマゼピンなどでみられうる重症薬疹などの重大副作用などのイメージがあり、その使用については慎重にならざるをえないところです)、臨床試験の結果を待ちたいところです。

▽自由診療や個人輸入などでの内服については、自己責任となりますが、ペランパネルの注意すべき副作用は、以下となります。

▽精神症状系副作用(Epilepsia. 2015 Aug;56(8):1252-63):狭義の(narrow:standard MedDRA queriesの定義による)攻撃性や敵意の出現が8mgで2.8%、12mgで6.3%でした(プラセボでは0.7%)。ただしこの副作用については、てんかん患者におけるものであり、てんかんに随伴する精神症状の要素が関連している可能性もあります。

▽身体的副作用(Epilepsy Res. 2015 Feb;110:216-20):第3相試験で報告された副作用出現率です。めまいは18-65歳までの29%、65歳以上では45%でした(プラセボは9%)、倦怠感は18-65歳では9%、65歳以上では25%でした(プラセボは4%)、転倒は18-65歳では5%、65歳以上では25%でした(プラセボは4%)

▽65歳以上の高齢者の25%で転倒がみられており、筋力低下がある方については、特に転倒に注意が必要です

▽重症薬疹(DRESS)の症例報告が1例ありました(Neurology. 2014 Dec 2; 83(23): 2188)

▽別の報告(Epilepsia. 2014 Jul;55(7):1058-68. )で平均1.5年間の長期使用中に出現した副作用の割合ですが、めまいが全体(1216名中)の46.8%、傾眠が21.2%、頭痛が18.3%、倦怠感13.1%、イライラ感11.5%、体重増加10.9%などとなっています(10%以上のもののみ)。血液生化学検査所見上の異常については低頻度で、血球減少については3-5%とのことです(併用薬剤があるためペランパネルによるものかは不明)。

▽また、エーザイ社のホームページ(http://www.eisai.co.jp/news/news201274.html)での重要な安全性情報として、以下が記載されています。
・精神的症状:本剤は、攻撃的な行為あるいは攻撃性の増幅(殺人企図を含む)、敵意、怒り、不安、神経過敏、不信感、およびその他の行動や気分に異常なあるいは極端な変化があらわれることがある。本剤を服用中にこのような変化が見られた場合には、すみやかに担当医師に連絡をすること。(これらの症状については添付文書の警告欄に記載されている。)
・自殺念慮および自殺行為:本剤を含む抗てんかん剤投与により、非常にまれに(約500例に1例)、自殺念慮および自殺行為があらわれることがある。本剤を服用中に、うつ症状の発現や悪化、気分、感覚、行動の異常なあるいは急激な変化、自殺念慮や自殺行為、あるいは自傷念慮の発現や増幅が見られた場合には、すみやかに担当医師に連絡をすること。
・浮動性めまい、回転性めまいおよび歩行障害:めまいによるふらつきで歩行障害があらわれることがある。これらの症状は、本剤の用量を増加した際におこる可能性がある。また、これらの症状の発現リスクは高齢者で高くなる可能性がある。
・眠気および疲労:本剤投与により、眠気や疲労感があらわれることがある。本剤投与中の患者は、これらの症状の影響が確認できるまで、自動車の運転や重機械の操作やその他の危険な活動をしないこと。また、これらの症状の発現リスクは高齢者で高くなる可能性がある。
・転倒:本剤の投与により、転倒およびそれに伴う怪我を生じる可能性がある。また、転倒の発現リスクは高齢者で高くなる可能性がある。
Herantis社のALS治療薬開発に進展
・ALS NEWS TODAYの7月11日付の記事からです

▽Herantis Pharma社は同社が開発中の薬剤の、神経栄養因子CDNF(cerebral dopamine neurotrophic factor)について、FDAよりOrphan Drugの指定を受けたことを公表しました

▽cerebral dopamine neurotrophic factorは神経保護作用と神経栄養因子としての作用を有しており、ドパミン産生神経の新生と保護作用を有すると考えられています。

▽パーキンソン病モデル動物での実験的有効性を示す結果が報告されているほか、ALSにおいても実験段階で有効性を示唆する結果が得られています

▽Herantis社は今回の決定を受けて、さらに開発を進め、臨床試験を実施したいとしています。

▽Orphan Drug指定は、希少疾患に対する創薬などにおいて、薬理学的信頼性の高い薬剤候補に対して与えられ、指定された場合、課税や一部申請過程における費用軽減や、販売後7年間の市場独占権が認可されます。

引用元
https://alsnewstoday.com/2016/07/11/herantis-pharma-potential-treatment-for-als-designated-orphan-drug-by-fda/
アデノ随伴ウイルス9型によるVEGF遺伝子注入はM2ミクログリアの活性化によりモデルマウスの生存期間を延長する
▽ALSの病態においてミクログリアの活性化がおきていることが報告されています。今回研究者らはSOD1変異ALSモデルマウスに対してアデノ随伴ウイルス9型を用いてVEGF遺伝子を注入し、病態改善効果がみられることを報告しました

▽VEGF遺伝子の注入によりBcl-2濃度上昇などが観察され、このような効果が運動神経細胞の生存期間延長に寄与していると考えられました。さらに活性化ミクログリアマーカーの発現量の減少や、M2ミクログリアの活性化マーカーの減少なども観察されました。

▽以上の結果は、アデノ随伴ウイルスベクター9型によるVEGF注入がALSに対して治療的に有効である可能性を示唆するものです

(この研究は、中国、Hebei Medical UniversityのWangらにより報告され、平成28年7月5日付のBrain Research誌に掲載されました)
双生児研究によりALSにおける免疫系機能のエピジェネティックな変化が判明
・ALS FORUMの7月7日付記事からです

▽一卵性双生児の一方がALSに罹患し、一方が非罹患の場合、ALSの病態におけるエピジェネティック(DNAの後天的修飾)な要因や環境因子についての糸口を与えてくれます

▽7月1日付のFASEB journal誌に掲載された報告によれば、一卵性双生児の末梢血単核球において、ALS罹患者と非罹患者との間でエピジェネティックな相違がみられたとのことです

▽DNAメチル化解析を用いた手法により、研究者らはALS罹患者においてCD14陽性マクロファージの増加と、T細胞の減少をみいだしました。さらにサイトカイン産生の相違もみられ、ALS患者の単核球においてはIL-6およびTNF-α産生の増加がみられました

▽以上の結果は、ALSの病態における免疫系のエピジェネティックな変化を裏付けるものであり、今後のさらなる病態解明が期待されます

引用元
http://www.alsresearchforum.org/twin-study-reveals-epigenetic-changes-that-impact-immune-function-in-als/
硫酸セリウムのナノ粒子がALSモデルマウスの病態を改善
▽硫酸セリウムのナノ粒子は活性酸素種や活性窒素種の中和作用を有します。酸化的ストレスはALSの病態の一部と考えられており、硫酸セリウムのナノ粒子(CeNP)が治療的有効性を発揮することが期待されます

▽今回研究者らは、SOD1変異ALSモデルマウスにおいて、症状発現後より週に2回CeNPを静注し、治療的効果を検証しました。

▽その結果、生存期間の有意な延長(約11日間)を認めました。CeNPの抗酸化作用が治療的効果を発揮した可能性があり、今後の臨床試験での検証が期待されます

(この研究は、アメリカ、St. Lawrence UniversityのDeCkteauらにより報告され、平成28年7月4日付のNanomedicine誌に掲載されました)
IP3受容体2の除去はALSモデルマウスの病態を増悪させる
▽孤発性ALS患者においては、IP3受容体2をエンコードするITPR2遺伝子の発現が亢進しています。今回、研究者らはIP3受容体2遺伝子の発現がALSモデルマウスの脊髄で亢進していることをみいだしました

▽IP3受容体2遺伝子の発現亢進はリポポリサッカライドにより誘発され、このことは炎症に対する補償的反応であることを示唆しています。

▽SOD1変異ALSモデルマウスよりITPR2遺伝子を除去すると、生存期間の短縮がみられました。さらに免疫応答の増強が観察され、IL-6やIFNγ、IL1αなどの炎症促進性サイトカインの発現亢進がみられました。

▽以上の結果は、IP3受容体2は、炎症による悪影響から保護的な作用を発揮しており、ALS患者においてIP3受容体2の発現を亢進させることが、治療的に作用する可能性を示唆するものです

(この研究は、ドイツ、University of LeuvenのStaatsらにより報告され、平成28年7月4日付のHuman Molecular Genetics誌に掲載されました)
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