ALS(筋萎縮性側索硬化症)に負けないで
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ALSにおけるサプリメント
・コメント欄で亜鉛サプリメント摂取についてご質問がありましたので、関連する論文について少し調べてみました。

・やや古い論文ですが、2008年のPhys Med Rehabil Clin N Am. 2008 August ; 19(3): 573–に掲載された論文”Nutrition and Dietary Supplements in Motor Neuron Disease”から、ALSとサプリメント、栄養の記載について抜粋します

栄養と生存期間

▽低体重や栄養不良はALSにおいては望ましくない状況です。BMIが18.5より低いことは、独立した予後不良因子として知られています

▽この点において、胃瘻からの経腸栄養は、体重の安定化に寄与し、メリットがあります。またイタリアでの観察研究の結果によると、経口栄養継続群と比較して、胃瘻造設群では、生存期間に3倍の差があったとのことです。これらのデータについては議論の余地があるところですが、栄養状態が良好であることは重要といえます。

サプリメントについて

▽有効性について十分な科学的根拠はありませんが、ALS患者の75%がなんらかのサプリメントを摂取しているとのデータがあります。

サプリメントの有効性についての仮説

・酸化ストレス

▽酸化的損傷は、運動神経細胞死に関与する要因であると考えられています。活性酸素は脂質や蛋白質、DNAと反応し、細胞の損傷をもたらします。神経細胞は代謝が活発であり、活性酸素種も多く発生します。神経細胞は脂質やイオンを豊富に含んでおり、活性酸素種の影響を受けやすいと考えられています。

▽グルタチオンペルオキシダーゼ、カタラーゼ、SODなどは、全て内因性の抗酸化作用物質です。SOD1蛋白質の変異は家族性ALSの病因となっています。

▽酸化的損傷のマーカーである、カルボニル化蛋白や、8-hydroxy-2-deoxyguanosine(8-OHdG)は、孤発性ALS患者の運動皮質において増加が認められています。血漿中の8-OHdGとTBARS(thiobarbituric acid reactive substances)も孤発性ALS患者において増加が報告されています。

▽抗酸化作用を有するサプリメントを摂取することにより、酸化的損傷が減少するのであれば、有効性が期待できる可能性があります

・細胞興奮毒性

▽グルタミン酸は、中枢神経における主要な興奮性伝達物質です。シナプスにおいてグルタミン酸の再取り込みが障害されると、神経細胞のカルシウムチャネルの持続的な活性化が起こり、フリーラジカルの産生が増大し、ミトコンドリアなど細胞内器官の障害が生じます。

▽孤発性ALS患者の脳脊髄液中において、グルタミン酸濃度の上昇が報告されています。リルゾールはシナプスでのグルタミン酸の放出を阻害することで治療的効果が期待される薬剤です。

▽グルタミン酸系を抑制する作用を有するようなサプリメントがあれば、治療的効果が期待できるかもしれません

・ミトコンドリア機能異常

▽孤発性ALS患者や、SOD1変異モデルマウスにおいて、ミトコンドリア機能異常を示唆する報告がなされています。ミトコンドリア電子輸送系の構造的異常やミトコンドリアDNA変異がALSの病態の一部をなすとの報告もあります。ミトコンドリアの主要な機能は、酸化的リン酸化によるエネルギー産生です。

▽神経細胞ではエネルギー需要が高いため、ミトコンドリアによるエネルギー供給は重要であり、神経細胞には多数のミトコンドリアが存在しています。何らかの原因によりミトコンドリア機能が障害されたり、ミトコンドリア自体の機能異常が存在すると、フリーラジカルの産生が増大し、細胞内カルシウム濃度の増大が生じ、細胞損傷の原因となります。

▽フリーラジカルによる損傷の影響を軽減するようなサプリメントや、ミトコンドリア膜の安定化などをもたらすサプリメントがあれば、ALSに対して治療的効果が期待できる可能性があります。

各種サプリメントの有用性についての科学的根拠

・ビタミンE

▽ルー・ゲーリックが1940年代にビタミンEの異性体であるα-トコフェロールを週に1回筋注を受けて以来、経験的にビタミンEは最も広くALSにおけるサプリメントとして流通しています。しかし有効性についての科学的根拠は確立していません。

(前臨床段階のデータ)

▽SOD1変異モデルマウスにおいて、ビタミンEサプリは、生存期間の延長効果は認めませんでした。しかし発症を遅らせ、病態進行速度を部分的にゆるやかにすることを示唆するデータが得られています。

▽SOD1変異モデルマウスでは、過酸化水素産生が増加しているといわれており、その結果ヒドロキシフリーラジカルが増加しているといわれています。αートコフェロールは、ヒドロキシラジカルを直接的に中和する作用があり、治療的効果が期待されます。

(臨床試験のデータ)

▽ALS患者において、ビタミンE欠乏症が存在するかどうかを検証した3つの臨床試験では、いずれもビタミンE欠乏の存在は支持されませんでした。

▽発症前からのビタミンE使用と、ALS発症リスクの関連性については、大規模な疫学的観察研究が存在しています。1982年にアメリカで行われた研究では、96万人近い成人が参加しました。その結果、10年以上にわたり規則的にビタミンEを摂取しているヒトは、ALSに起因した死亡率が有意に低いとの結果でした。ビタミンE使用者は、非使用者と比較して、ALSに起因した死亡率が62%低いとの結果でした。

▽この研究結果は、先日ご紹介した研究と同様に、観察研究ですので、科学的根拠の質のレベルとしては高いものではなく、確証のない結果ではありますが、ビタミンEサプリメントが広く使用されている現状の一因となっています

▽別の症例対照研究では、132名のALS患者と、年齢、性別のマッチした220名の健常者とで、多価不飽和脂肪酸摂取量、ビタミンE摂取量とALS発症リスクとの関連性が検討されました。その結果、不飽和脂肪酸摂取量が上位30%以内の群では、下位30%以内の群と比較して、60%ほどALS発症リスクが低く、ビタミンE摂取量が上位30%以内の群では、下位30%以内の群と比較して、ALS発症リスクが50%低いことがわかりました。

▽これらの観察研究による報告を総合するとビタミンE摂取は、ALS発症に対して防御的に働く可能性があります。しかし、より科学的に質の高い研究である、介入研究の結果では、ビタミンEのALSに対する有効性は支持されていません。

▽フランスでは、289名のALS患者を対象に、α-トコフェロール1000mg摂取群と、プラセボ群の二群に分けた無作為割付二重盲検比較試験が12ヶ月間で行われました。その結果、機能尺度や生存期間の有意な延長効果はみられませんでした。

▽ドイツでは、160名のALS患者を対象に、さらに高用量の5000mgのビタミンE摂取群と、プラセボ群とで二重盲検比較試験が18ヶ月間で行われましたが、生存期間や機能尺度において有意な治療的効果はみられませんでした。

・ビタミンB群

▽葉酸やメチルコバラミンなどのビタミンB群サプリはしばしばALS患者で摂取されているサプリメントです。

▽SOD1変異モデルマウスにおいては、ホモシステイン濃度の上昇が観察されています。ビタミンB12と葉酸は、ホモシステインをメチオニンに変換する役割に関与しています。その結果、ホモシステイン濃度の減少が期待できます。ビタミンB6もまた、ホモシステインを含硫アミノ酸に変換する経路に関与しています。

▽1998年にALS患者に対して、メチルコバラミン大量投与の有効性を確認する無作為割付二重盲検比較試験が行われました。24名のALS患者が対象となり、第1群に対しては、25mg/dayのメチルコバラミン筋注が連日28日間施行され、第2群に対しては0.5mg/dayの低用量のメチルコバラミン筋注が28日間施行されました。

▽その結果、大量のメチルコバラミンを筋注した群においては、12名中8名で筋活動電位の振幅がベースラインよりも有意に改善したとの報告がなされました。ALS患者の一部の群においては、高用量のメチルコバラミン投与により神経機能が改善する可能性を示唆するものです。

▽臨床機能の改善効果がみられたかどうかについては報告されていませんが、このような試験の結果が、ビタミンB群サプリメントが広く使用されている現状につながっています

・亜鉛

▽亜鉛はSOD1蛋白質と協働して作用するため、治療的効果の可能性が示唆されていました。ALSモデルマウスにおける変異SOD1蛋白質は、亜鉛結合能の障害が報告されており、細胞傷害性を有するとされます。

▽亜鉛サプリメントは、メタロチオネイン転写活性化をもたらし、抗酸化作用を促進するといわれています。したがって、特に亜鉛はSOD1蛋白質変異を有する家族性ALSに対して有効性が期待できるのではと考えられていました。

▽ALSモデルマウスに対する亜鉛サプリメントの有効性を検証した報告が2つあります。1つ目の実験ではSOD1変異モデルマウスに対して2つの異なる用量(75mg/kgおよび375mg/kg)の亜鉛投与がされ、プラセボ投与群と比較されました。結果は期待に反して、亜鉛投与群では生存期間が短縮しました。亜鉛投与量が多いほど、生存期間は短縮しました。この結果は、亜鉛投与が疾患の進展を促進させることを示唆させるものでした。

▽2つ目の実験では、1つ目の実験よりも少ない用量の亜鉛がSOD1変異モデルマウスに投与されました(12mg/kg)。その結果、モデルマウスの生存期間を11日ほど延長する効果がみられました。しかし亜鉛の用量を18mg/kgとしたところ、生存期間は短縮しました。またこの生存期間短縮の影響は、亜鉛と銅を同時に投与すると消失しました。亜鉛投与の際には、銅を同時に投与することが、毒性を緩和するために重要であるようです。

▽亜鉛のサプリをヒトに使用する際には、用量に慎重な注意が必要です。過剰摂取により中毒症状を呈する危険があります。

・メラトニン

▽メラトニンは抗酸化作用を有する物質です。グルタチオンペルオキシダーゼを活性化させ、一酸化窒素合成を抑制します。運動神経細胞培養液において、メラトニン投与は、用量依存性にグルタミン酸誘発性の細胞死を抑制しました。

▽ALSモデルマウスにおいて、症状発現前にメラトニンを投与したところ、症状発現の遅延と、生存期間の延長が確認されました。しかし症状発現後にメラトニンを投与しても、生存期間の延長効果はみられませんでした。

▽ALS患者に対しては、31名のALS患者に対して300mg/dayの高用量メラトニンが24ヶ月間投与され、健常者と比較されました。酸化的ストレスの度合いが、血中カルボニル化蛋白の量で比較されました。ベースラインではALS患者は健常者より有意にカルボニル化蛋白が高値を示していました。4ヶ月の治療後には、ALS患者と健常者でカルボニル化蛋白量は同じレベルとなり、メラトニンによる抗酸化作用の発揮を示唆する結果でした。この研究では症状進展の度合いなどの治療的効果については報告されていません。

・クレアチン

▽クレアチンは前臨床試験段階において、有効性が期待された物質です。クレアチンはミトコンドリアでのエネルギー産生を促進し、おそらくは細胞へのグルタミン酸取り込みを抑制するのではないかと考えられており、その結果運動神経細胞保護効果が期待されていました。同時にミトコンドリア膜の安定化による抗酸化作用も期待されていました。SOD1変異ALSモデルマウスにおいては、クレアチンは用量依存性に運動神経細胞死を抑制し、生存期間を延長しました。

▽動物実験では、期待される結果も得られていたクレアチンですが、ヒトを対象とした臨床試験では、有効性を確認することはできませんでした。これまでクレアチンの有効性について検証した3つの臨床試験がありますが、いずれも有効性は確認できない結果となりました。

・Coenzyme Q10

▽Coenzyme Q10は、ミトコンドリアの電子輸送系において重要な機能を果たしており、抗酸化作用を有するといわれています。ALS患者における血中Coenzyme Q10濃度は健常者と変わりませんが、酸化Coenzyme Q10の量が孤発性ALS患者で増加していることが報告されており、酸化Coenzyme Q10は過酸化水素産生などにつながり、酸化ストレスの増大につながります。

▽31名のALS患者を対象としたオープン試験において、Coenzyme Q10とビタミンEの同時投与が行われ、安全性評価の結果、試験期間中において安全性が確認されました。

▽一方で、プラセボの臨床経過と比較解析した場合、Coenzyme Q10の機能尺度に対する有効性は、プラセボと有意差がないとの結果になっています。

▽2008年現在大規模な臨床試験が予定されています

引用元
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2631353/

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