ALS(筋萎縮性側索硬化症)に負けないで
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日本ALS協会への質問状
・いのべたさんからのご提案ですが、管理人としても意義があると考え、皆様からのご意見をいただきたく、掲載いたします。

・ALSの治療研究は急速に進展していますが、薬剤の臨床試験実施や承認にかかる年単位の時間は待てるものではなく、迅速な臨床試験の実施と、薬剤承認過程の短縮が望まれます。

・これらの要望の実現のためには、組織的な取り組みが必要であり、そのためには、最大の当事者団体である日本ALS協会の活動が重要と思われます。

・そこで、現段階での日本ALS協会の立場と、今後の方針を、協会員、当事者に対して明確にしていただく意味でも、以下の3つの質問を提出したいと考えています

1.日本ALS協会の設立以来、「医療・福祉体制の確立」「ALSの原因究明・治療法の開発」 を協会の最大の目的とされていますが、ALSの原因究明・治療法の開発について現状、どのような認識をお持ちでしょうか。

2.今後、ALSの原因究明・治療法の開発に向けてどのような方針・活動をお考えでしょうか。 また、患者が一刻も早く治療を受ける為に最も重要なことは何だとお考えでしょうか。

3.現在、協会運営の中で最も苦労されることは何でしょうか。

・以上となります。質問内容などについて、皆様からのご意見・ご要望をよろしくお願いいたします(コメント欄にてお願いいたします)。
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平成27年1月号
・1月に掲載した記事を振り返ります

基礎研究
・平成27年1月は、ALSに対する基礎的研究についての報告が、世界トップクラスのjournalに多く掲載された1ヶ月でした。Nature Communications、The Journal of Neuroscienceなどの雑誌で、過去数年では年間でも1桁程度の掲載数であったALSについての論文が、この1ヶ月間で8本程度掲載されました。偶然かもしれませんが、基礎研究の確実な進展を感じます。アイスバケツチャレンジにより例年の3倍の資金を集めたアメリカALS協会などによる研究支援活動を受けた研究の成果も徐々に出てきています。今後の大きな成果に期待されます。

Brainstorm
・Brainstorm社の神経幹細胞移植である、NurOwn細胞のイスラエルでの第2a相臨床試験の最終結果が公表されました。オープン試験のため、客観性に欠ける点は懸念材料ですが、12名中10名で何らかの臨床的効果がみられたとの報告は、現在進行中のアメリカでの第2相臨床試験の結果に期待がもてるものです。

Genervon
・Genervon社のGM604も話題になりました。GM604は多くの作用機序を有するとされる開発中の薬剤です。第2a相臨床試験の結果は期待のもてるものでしたが、その参加者で、比較的症状が進行した1名の患者に対してFDAがcompassionate use(Expanded Access)の承認を行い、その経過が公表されたことから、世界中で多くの関心が集まりました。アメリカでも早期承認を求めて、議員への請願を行うための署名活動がおきています。FDAの判断が注目されます

患者申出療養制度
・日本でも新たな法律を制定の動きがあります。患者申出療養制度(仮)と呼ばれるこの制度は、アメリカでのExpanded Accessに対応するもので、難病患者の権利を拡大するものです。様々な議論がありますが、今国会で可決された場合、臨床試験段階の薬剤が、一定の条件をクリアした場合に、使用許可される可能性があります。真に有効な治療法が開発された場合(副作用のリスクはありますが)、治験への参加を除いて、国内在住のALS患者が治療の適応を受けることができる最短の方法になるため、施行が望まれます。

ALS協会への質問状
・いのべたさんのご提案で、日本ALS協会への質問状を提出することとなりました。日本では当事者の主体的権利意識がアメリカよりも希薄であり、多くの難病団体がそうであるように、活動が保守的になりがちです。日本ALS協会の活動も、役員の皆さんの尽力により成立しているもので、様々なご苦労がおありだと思います。しかし、急速に再生医療が進歩する現状において、どこかもどかしさがあり、協会員としては、ALS研究への支援などの活動により積極的に、一層力をいれていただきたいものです
TDP-43の断片化のパターンがTDP-43の排泄と細胞毒性を決定する
・大阪大学の研究グループからの報告です

▽TDP-43と、そのC末端断片であるCTF25は、ALSと前頭側頭型認知症において重要な役割を果たします。培養細胞や動物モデルにおいてTDP-43の過剰発現はCTF25の産生をもたらしますが、CTF25を生じる切断部位と、その生物学的活性の詳細については不明でした。

▽研究者らは、N末端から数えて174番目のアスパラギン酸(Asp174)がCTF25を産生する切断部位であることを明らかにしました。TDP-43は最初にAsp174の後部で切断され、その結果caspase-3/7が活性化し、さらにTDP-43の断片化が促進されます。また、この切断を阻害することにより、TDP-43の排泄が高度に遅延し、細胞死が誘発されました。

▽さらに、小胞体膜結合酵素であるcaspase-4がAsp174での切断を担う酵素であることが判明しました。このcaspase-4を阻害すると、TDP-43の断片化が抑制され、細胞生存性の減弱につながりました。

▽以上の所見は、caspase-4によるAsp174後部での切断がTDP-43排泄の起点となり、TDP-43の過剰発現に起因した細胞死を防ぐために必要であることがわかりました。

(この研究は大阪大学のLiらによって報告され、平成27年1月26日付のNature Communications誌に掲載されました)
引用元
http://www.nature.com/ncomms/2015/150129/ncomms7183/full/ncomms7183.html
ALSにおいてなぜ上位運動神経細胞変性が生じるか
・1月28日付ScienceDailyの記事からです

▽Nouthwestern大学の研究者らは、上位運動神経細胞が変性するメカニズムの一部を初めて明らかにしました。

▽1月16日付のCerebral Cortex誌に掲載された記事によると、研究者らは、上位運動神経細胞の変性メカニズムを調べるため、新たなモデルマウスを開発しました

▽研究の結果、小胞体のストレスが増大することが、上位運動神経細胞変性の要因であることがわかりました。治療法開発に際して、今回の知見が手がかりとなる可能性があります。

▽新たに開発されたモデルマウスは、UCHL1蛋白質の機能喪失を伴うものであり、ヒトにおいてもUCHL1遺伝子変異が運動神経病に関与している可能性が示唆されています。

▽UCHL1蛋白質の機能喪失は、蛋白機能制御経路を障害し、小胞体ストレスを増大させ、上位運動神経細胞の生存に影響を与えることがわかりました

▽上位運動神経細胞は、全脳神経細胞数20億個のうち、わずか15万個からなります。この運動神経細胞が、情報を統合し、脊髄に脳からの情報を伝える重要な役割を果たします。

▽従来は、脊髄運動神経細胞(下位運動神経)がALSの病態において重要であり、上位運動神経細胞の喪失は二次的な影響と考えられていました。しかし2012年、研究者らはALSの病態の早期においても、上位運動神経細胞において、樹状突起棘の喪失がおきていることを報告しました

▽今回の発見は、上位運動神経細胞をターゲットとした治療法の開発に有用であり、小胞体ストレスを原因とする多様な神経変性疾患に対しても適応可能な知見になりうるかもしれません

引用元
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150128141922.htm
Newron社が血管内皮増殖因子の第2相臨床試験開始をアナウンス
・ALS TDIの1月27日付spotlightからです

▽平成27年1月にNewron Pharmaceuticals社は、ALSに対する、血管内皮増殖因子(VEGF)製剤であるsNN0029の有効性に関する第2相臨床試験を、まもなく開始することを公表しました

▽血管内皮増殖因子は、運動神経細胞の健全性維持に役割を果たしていると考えられており、前臨床試験段階において、SOD1変異モデルマウスで、生存期間の延長効果がみられています(それほど効果は大きなものではありませんでした)

▽第1相臨床試験では、3つの異なる用量のsNN0029が用いられ、合計19名のALS患者がエントリーしました、10名がプラセボに割り当てられ、8名がsNN0029に割り当てられました。薬剤は、埋め込み型のポンプと脳内カテーテルから注入されました。症例数が少ないため、有効性に関する十分な検討はなされていませんが、高用量を投与した群では、いくつかの指標で有意な効果が確認できたとのことです。さらに安全性が確認できたとのことです。

・第2相臨床試験の結果が注目されます

引用元
http://blogs.als.net/post/Newron-Announces-Phase-2-Clinical-Trial-of-sNN0029-(VEGF).aspx

http://www.newron.com/en
ALSの原因となるFUS/TLS遺伝子変異はSMNとU1-snRNPとの関係性において、機能獲得と機能喪失により障害をもたらす
・ALSの一因と考えられているFUS/TLS遺伝子変異の病態メカニズムについての報告です。家族性ALSの原因遺伝子は多様ですが、運動神経細胞喪失という表現型は共通していることから、特定の変異についての研究が進展することにより、異なる遺伝子変異間の共通した病態メカニズムが明らかになるかもしれません。

▽FUS/TLS蛋白質はRNA結合蛋白質であり、ALSの原因遺伝子の1つとして知られています。FUS/TLSは、核内低分子RNAと蛋白質との複合体であるU1-snRNP(RNAのスプライシングに関与する複合体の一種)と、SMN蛋白質(運動神経病の原因となる蛋白質)との複合体に直接結合します。

▽変異したFUS/TLS蛋白質は、SMN蛋白質との相互作用の異常亢進をもたらし、SMN蛋白質の機能障害をもたらします。その結果、核内低分子RNAの発現量が変化します。また変異したFUS/TLS蛋白質は、U1-snRNPとの相互作用が減少します。

▽包括的なRNA解析の結果、変異に起因したRNAのスプライシング活性の喪失がみられ、異常蛋白質生成の減少がみられましたが、正常FUS/TLS蛋白質喪失によって生じた変化を補償することはできませんでした。

▽以上の結果は、ALSに関連したFUS/TLS遺伝子変異は、SMN蛋白質との相互作用亢進に起因した異常機能の獲得(gain of function)と、U1-snRNPを介したRNA処理過程の減弱という正常機能の喪失(loss of function)の両者をもたらすことにより、ALSに病態に関与していることを示唆しています。

(この研究は、アメリカ、 University of CaliforniaのSun Sらにより報告され、平成27年1月27日付のNature Communications誌に掲載されました)
引用元
http://www.nature.com/ncomms/2015/150127/ncomms7171/abs/ncomms7171.html
AAVで神経栄養因子と神経細胞接着分子を導入したヒト臍帯血由来細胞はALSモデルマウスにおいて治療的効果を示す
・ALSに対する新たな治療的アプローチの報告です

▽研究グループは、アデノ随伴ウイルスベクターにより、血管内皮増殖因子、グリア細胞栄養因子、神経細胞接着因子などの遺伝子を導入したヒト臍帯血細胞を用いて、ALSモデルマウスに移植し、治療的効果の有無について検討しました

▽その結果、握力テストなどでの筋力改善や、生存期間の延長が、血管内皮増殖因子と神経細胞接着因子を導入した細胞を移植した場合、グリア細胞栄養因子と神経細胞接着因子を導入した細胞を移植した場合のいずれにおいても観察されました。

▽移植後10週間で導入した遺伝子の発現が、モデルマウスの脊髄において観察され、移植後5ヶ月たっても、移植した細胞は観察可能でした。これら移植した細胞の長期生存は、免疫抑制剤を使用しなくても可能でした。

▽以上の結果は、遺伝子導入したヒト臍帯血細胞が、ALSに対して有効な遺伝子-細胞移植治療となる可能性を示唆するものです。

(この報告はハンガリー、Asklepios-MedのIslamovらにより報告され、平成27年1月26日付のCurrent gene therapy誌に掲載されました)
引用元
http://benthamscience.com/journal/abstracts.php?journalID=cgt&articleID=128002
ALSの病態機序に新たな視点
・ Harvard-Massachusetts Institute of Technology (MIT) Division of Health Sciences & Technology (HST)の1月21日付のNewsからです

▽最近の研究から、ALSの病態にミクログリアとよばれる免疫系細胞が関与している可能性が示唆されています。

▽今回、研究グループはALS患者に対してPET(positron emission tomography)を用い、生体内でのミクログリアの活性化の状況を調べました

▽[11C]-PBR28と呼ばれる免疫関連蛋白質に特異性の高い親和性を示す放射性リガンドを用い、中枢神経での免疫系の活性化状況が調べられました

▽その結果、ALS患者の大脳皮質運動野と皮質脊髄路において、ミクログリアの活性化亢進が観察されました。このことは、グリア細胞が疾患に関与しているとの仮説を支持するものです。

▽さらに、グリア細胞の活性化の程度は、疾患の重症度および上位運動神経障害の重症度と関連していました。このPBR28を用いた画像技術を用いることにより、抗炎症作用を期待して投与される薬剤の有効性の判定や、用量を決定する際の判断材料になることが期待されるとのことです

▽今後はさらに研究を進め、患者のサブグループで違いがあるのかどうか、疾患の進展に伴いグリア細胞の活性化の程度の変化があるのかなどを調べたいとしています。

引用元
http://www.nmr.mgh.harvard.edu/news/20150121/new-study-sheds-light-als-mechanisms
AB Science社のMasitinibの第3相臨床試験
・平成27年1月13日付のNasdaqの記事からです

▽Masitinibは免疫系細胞である、肥満細胞とマクロファージをターゲットとしたチロシン・キナーゼ阻害薬です。現在スペインで200名程度の患者を対象とした第3相臨床試験が進行中です。

▽48週間で行われているこの臨床試験に対して、Data and Safety Monitoring Board (DSMB:臨床試験の安全性を監視し、継続や中断を判断する専門家集団)が安全性に関するデータにより、臨床試験の継続を推奨したとのニュースです。

▽Masitinibは、炎症反応を抑制することによりALSの進行遅延効果が期待されている薬剤です。免疫系の肥満細胞は、運動神経の生存や機能に関与していることから、ALSの病態に関与していると考えられています。

▽Masitinibは、c-KitとLynとよばれる、2種類のリン酸化酵素を選択的に阻害し、肥満細胞の応答を調節します。このことによりALSに対する治療的効果が期待されています。動物モデルではリルゾールとの併用ないし単独の使用により、病態進行の遅延効果が確認されています

▽第3相臨床試験の結果が期待されます(特殊な事例と思われますが、現在の第3相臨床試験は、2013年に45名を対象に施行中だった第2相臨床試験が、試験中に認可されて第3相臨床試験にそのまま人数を増やして転換したもののようです。2015年末に結果が判明するようです)

引用元
http://globenewswire.com/news-release/2015/01/13/697134/10115407/en/AB-Science-The-Data-and-Safety-Monitoring-Board-Recommends-the-Continuation-of-Phase-3-Study-of-Masitinib-in-Amyotrophic-Lateral-Sclerosis.html
エダラボン続報
・かなくん さんからご提供いただいた情報です
・臨床試験に関わる情報を、千葉県の神経内科医院に問い合わせてくださいました。
その結果、以下の情報が得られたとのことです
1.エダラボンの治験は、こちらで掲載の論文以降に、有効な結果がでた。孤発性がほとんどで、家族性は1,2例。進行が6か月⇒9カ月までに抑制できた。(改善ではない)それ以降は、追跡調査を行っていないので、不明。
2.進行による増悪以外に副作用として、悪化することはない薬である。
・かなくん さんありがとうございます。


・エダラボンについては、EUにてTreeway社がorphan drugとして申請を行ったようです。そのことがALS TDIの掲示板にて話題になっていました。しかし、やはり上記論文が引き合いにだされ、なぜ申請がなされたのかわからないとのコメントがみられました。ALSの病態が多様なため、多様な集団に1つの薬剤を適応しても結果が得られないではないかとのコメントもありましたが、追加で行われた臨床試験が論文として公表されることが期待されます。
オバマ大統領がPrecision Medicine(個別化医療)支援を表明
・ALS TDIのspotlight記事からです

・オバマ大統領が年頭教書において、Precision Medicineの重点的な支援を表明しました

・Precision Medicineとは、ヘルスケアを個別にカスタマイズする医療モデルのことで、医療的決断、提供される医療の内容などを患者ごとに個別化し提供することです。Precision Medicineにおいては個別に最適化された医療を提供するために診断過程が重要であり、遺伝子レベル、分子レベルの特性まで明らかにすることにより個別化を行うことを目指します。

・ALSにおいても原因遺伝子レベルまで明らかにして、将来的にオーダーメード医療を提供することが目指されており、ALS TDIも2013年にPrecison Medicineに関連するプランを立ち上げ、2014年8月から患者のエントリーを開始しています。詳細な病歴聴取、経過観察や、遺伝子情報の収集、患者からのiPS細胞の作成などが行われています。2015年3月までに100名程度の参加者が集まる見込みとのことです

・日本でもiPS細胞の作成など含めたPrecision Medicineの早期普及が望まれます

引用元
http://www.als.net/Media/5478/News/
iPS細胞由来の運動神経細胞が、成熟した脊髄運動神経細胞の表現型を示す
・これまでiPS細胞から運動神経細胞を誘導し、筋肉まで軸索を伸長させることは困難といわれていました。しかし今回、動物実験においてそれが観察されたとの報告です。

・これまではALS細胞におけるiPS細胞の治療的適応の候補は、神経栄養因子などを分泌する細胞への分化誘導が主な選択肢でしたが、今回の研究結果は、iPS細胞を直接運動神経細胞に分化させることを可能にすることが期待できる技術であり、iPS細胞によるALSの根本治療への期待が高まります。

▽iPS細胞由来の運動神経細胞は、ALSなどの運動神経疾患に対する細胞置換療法として、治療的適応の可能性があります。しかしながら、iPS細胞由来運動神経細胞の生理学的な性質はほとんどわかっておらず、また本来の脊髄運動神経細胞との性質の比較や、ES細胞(胎児幹細胞)由来の運動神経細胞との性質の違いもわかっていませんでした

▽今回、研究者らは、プロテオーム解析(構造と機能を対象としたタンパク質の大規模な解析)を初めてiPS細胞由来運動神経細胞に対して行いました。またES細胞由来の運動神経細胞との蛋白質発現形式の比較を行い、発現蛋白質構成要素の違いが4%未満と類似していることを示しました

▽マウスのiPS細胞を運動神経細胞に分化誘導し、LIMホモドメイン蛋白質(DNAに結合し遺伝子発現を調整する蛋白質)であるLhx3(運動神経細胞に関する遺伝子の転写を調節する因子)の発現を確認しました。このiPS細胞由来運動神経細胞を胎生期のニワトリ胚の神経管に移植したところ、iPS細胞由来運動神経細胞は、選択的にLhx3陽性運動神経細胞により支配される筋肉細胞に対して、軸索を伸長しました

▽試験管内での実験により、iPS細胞由来運動神経細胞は、解剖学的に成熟を示し、数週間ニワトリ筋線維細胞と培養したところ、機能的な神経筋接合部を形成しました。電気生理学的にも、受動的な膜電位を示し、運動神経細胞に特徴的な発火特性を示しました。

▽さらに、iPS細胞由来の運動神経細胞を、腓腹筋を支配する脛骨神経を切断したマウスに移植したところ、機能的な神経筋接合部を再生し、筋肉の収縮力の回復と、筋萎縮の回復が観察されました

▽これらの結果は、ALSなどの運動神経変性疾患に対する置換療法として、iPS細胞由来運動神経細胞の移植が有望であることを示唆しています

(この研究は Harvard Stem Cell Instituteなどの研究グループにより報告され、平成27年1月21日付のJournal of Neuroscience誌に掲載されました)
引用元
http://www.jneurosci.org/content/35/3/1291.abstract
ALSモデルマウスにおいては病態進行中に骨格筋における自食作用の抑制がおきている
・ALSにおける骨格筋の病態に注目した報告はあまりありませんでしたが、骨格筋における自食作用の減弱の可能性についての報告です。自食作用をターゲットとした新たな治療戦略として注目される報告です。

▽ALSの運動神経細胞変性においては、異常蛋白質の封入体が関与しているといわれています。自食作用は、異常折り畳み蛋白質と、損傷を受けた細胞内器官をリソソームで分解する細胞内過程であり、細胞の生存機能と、疾病の病態において重要な役割を果たしていると考えられています。

▽運動神経細胞の変性過程において、自食作用が果たす役割を理解する努力と、ALSの治療ターゲットとして運動神経細胞の自食作用に着目する試みがなされています。

▽しかしながら、自食作用の障害がもたらす結果は細胞によって異なっており、状況は複雑で、矛盾する結果が報告されているものもあります。

▽研究者らは、SOD1変異(G93A)ALSモデルマウスの骨格筋における自食作用を調べました。モデルマウスの病態進行期において、正常な食餌量を与えた場合、オートファゴソーム形成の増加が観察されました。

▽一方、自食作用を誘導する環境刺激(飢餓状態にcolchicineを与えた場合)により、正常マウスでは骨格筋における自食作用の亢進がみられます。しかしながら、ALSモデルマウスでは、飢餓状態などの刺激は、自食作用の減弱をもたらしました。

▽免疫学的手法により、アポトーシスの関連した切断型caspase-3蛋白質の増加は、自食作用に関連したいくつかの重要な蛋白質(自食作用とアポトーシス経路に関与するBeclin-1など)の切断をもたらすことがわかりました。

▽以上より、細胞保護的な自食作用経路が、ALSモデルマウスにおいては抑制されており、これによりアポトーシスが誘導されることがわかりました。

▽骨格筋における異常な自食作用活性が、ALSにおける骨格筋変性と病態進行に関与している可能性があります

(この研究はアメリカ、Rush UniversityのXiaoらによって報告され、平成27年1月19日付のPhysiological Reports誌に掲載されました)
引用元
http://physreports.physiology.org/content/3/1/e12271.long
パーキンソン病関連遺伝子が、脳の運動神経細胞変性と関連する
・ALS associationのNEWSからです

▽パーキンソン病に関連した遺伝子の機能喪失が、脳の運動神経細胞のストレスを増大させ、神経変性につながることがわかりました。この研究結果はCerebral Cortex誌に掲載されました

UCHL1遺伝子とよばれるこの遺伝子は、パーキンソン病のまれな原因遺伝子として当初発見されましたが、近年では、上位運動神経細胞喪失を伴う非パーキンソン病関連疾患との関連性が報告されています。

▽上位運動ニューロンは脳と脊髄を連絡する神経で、ALSにおいても障害がみられます。

▽この遺伝子の正常機能を調べるため、研究グループはUCHL1遺伝子の機能をノックアウトしたモデルマウスを作成しました。その結果、UCHL1蛋白質喪失が、選択的に上位運動神経細胞の障害を引き起こすことがわかりました

▽これら神経細胞の変性は、細胞の蛋白質の質を保持するシステムに関連したストレス応答(小胞体ストレス)を伴っていました。このことは小胞体ストレスが疾患の病因として重要であることを示唆しています

▽この結果は、小胞体が運動神経の健全性維持に重要な役割を果たしていることを示唆しています。UCHL1遺伝子はALSの原因遺伝子としては同定されていませんが、ALSにおいても共通した機序が働いている可能性があります

▽新しく開発されたモデルマウスは、運動神経の健全性を維持するための薬剤開発にも有用な可能性があります

引用元
http://www.alsa.org/news/archive/parkinsons-gene-targets-motor-neurons.html
genervon社のGM6についてと、患者申出療養制度の経緯
・先日genervon社がcompassionate useの情報を公開しましたが、それに対する反響は世界的に大きなものになっているようです。

・アメリカでも早期承認プロセス(条件付き承認)への移行を求めて請願運動が起きているようです。

・以下のサイトでも当事者がweb上で署名を求め、議員への嘆願として提出するために賛同を求めています。

https://www.change.org/p/food-and-drug-administration-accelerated-conditional-fda-approval-of-genervon-s-gm6-for-use-in-als

・ALS-TDIの掲示板では、ブラジルやオーストラリア、フィンランドなどの当事者からの書き込みがみられます。

・一方でまだ早期臨床試験段階であり、結果そのものが十分な確証のないものであるため、慎重な見方をする書き込みもあるようです

・さて、日本では患者申出療養制度についての動向が注目されます。

・平成26年4月当初は”選択療養制度”との言葉で提案されており、”患者が自己選択で受けることができ、医師との診療契約を保険者に届け出ることで可能”となっており、これに対しては、日本医師会も「安全性や有効性を客観的に確認するプロセスがない。副作用や医療事故が起きた場合も、問題の所在が保険診療なのか、保険外診療なのかの見極めは困難であり、公的医療保険制度の信頼性が失われる」として反対していました。

・しかし、その後、改訂がなされ、平成26年6月13日に政府の規制改革会議により、現在の”患者申出療養制度”に変更されました。このことを受けて、日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会は同日、合同で記者会見を開き、安全性・有効性の確認と将来的な保険収載を目指す点が盛り込まれたことを、「最低限の担保がされた」として、新制度を了承する意向を示しています。

・その後厚労省は10月7日の社会保障審議会・医療保険部会で同案を提示。そこで4つの論点を提示、細部については幾つか意見が出たものの、おおむね了承されています。この場でまとまった患者申出療養制度は

(1)対象は、基本的には限定しないが、一定の安全性・有効性が認められたものとし、明らかに保険収載の見込みがないものは対象外

(2)リスクが高い医療は臨床研究中核病院と特定機能病院での実施が基本で、リスクが中程度の医療はそれ以外の協力医療機関も実施可能、

(3)「患者の申出」が起点で、申請は、主治医等が説明し、患者が理解・納得した上で行う

(4)国は「患者申出療養会議(仮称)」を設置し、新規に「患者申出療養(仮称)」で行う医療については、臨床研究中核病院の申請から原則6週間で審査を行い、可否を判断するが、6週間にこだわらず、安全性は十分に確認する
という制度になります。

・今年の通常国会にて法案として提出され、可決されれば、治療の選択肢に新たな道が拓けるものと思われます

・厚労省の以下のページの”患者申出療養(仮称)について”もご参照ください
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000061913.html
患者申出療養制度
・患者申出療養制度については、様々な意見があるようです
・ネット上でもいろいろと記事があったのですが、日本医師会が患者申出療養制度について反対している、とも解釈できるような記事があり、ちょっと気になったので、医師会のホームページから以下のpdfファイルを紹介します
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20140613_1.pdf
”今般発表された「患者申出療養(仮称)」では、実施時に安全性・有効性をきちんと確認するとともに、作成した実施計画を国において確認し、その結果の報告を求め、安全性・有効性を評価した上で、将来的に保険収載を目指すという点が盛り込まれたことについては、最低限の担保がされたと考えています。”
との記載がありますので、日本医師会としては慎重な立場をとりつつも、反対ではないようです。
一方で民医連や県の保険医協会によっては反対の立場を表明している団体もあるようです。
また情報がありましたら、お寄せいただきますよう、よろしくお願いいたします
TDP-43陽性封入体を有するALS脊髄運動神経におけるhnRNPA1の喪失
・九州大学の研究グループから病態機序に関する報告です

▽ALSにおいては、運動神経細胞における、TDP-43を構成成分とする封入体形成が特徴です。TDP-43はhnRNP(heterogeneous nuclear ribonucleoprotein)ファミリーに属するDNA結合蛋白質です。

▽hnRNPA1とhnRNPA2/B1は、TDP-43蛋白質のC末端と相互作用をするhnRNPです。

▽研究グループは、免疫組織化学的技法を用いて、TDP-43とhnRNPA1の関連性を、ALSの脊髄運動神経細胞において調べました。6名のALS患者からの脊髄組織と、比較対照群として6名の筋ジストロフィー患者の脊髄組織が用いられました

▽対照群では、運動神経細胞におけるhnRNPA1の免疫反応性は核において強くみられ、細胞質では弱く、微細な顆粒状に観察されました。一方で、ALSにおいては、運動神経細胞におけるhnRNPA1の免疫反応性は核において弱く観察されましたが、細胞質の糸状の封入体中においては観察されませんでした。

▽ALSの運動神経細胞におけるhnRNPA1の顕著な減少とTDP-43の細胞質内における凝集は、ALSの病態においてmRNAの処理過程が強く障害されていることを示唆しており、このことが、運動神経細胞死につながっている可能性を示唆するものです

(この研究は九州大学のHondaらによって報告され、平成27年2月号のNeuropathology誌に掲載予定です)
引用元
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/neup.12153/abstract;jsessionid=4899003FC4D7792AE514E5328CDBB519.f01t03
日本国内での未承認薬のCompassionate useについて
・いのべたさんが、国内でのCompassionate use(未承認薬剤を人道的見地から使用すること)制度の整備状況について調べてくださいました。

こちらのコメント欄からご参照ください

・特に今国会で法案が提出されている”患者申出療養制度”がALSに対して認可されることは重要事項と思われます。

・アデノ随伴ウイルスベクターを用いた遺伝子治療については、嚢胞性線維症については第2相臨床試験が終了する段階まで臨床試験が進行しています。もともとヒトへの病原性が確認されていないこともあり、安全性が高いと考えられています。状況が許せば、遺伝子治療研究所で開発中のアデノ随伴ウイルスベクターを用いた遺伝子治療などを、一刻も早く受けることができるために、法制度の確立が必要と思われます。

・いのべたさんありがとうございます
Compassionate useについて
・Genervon社のGM6のCompassionate useと関連した話題が、平成27年1月8日に開催されたALS associationのWebinarにおいて取り上げられていました
・要点をご紹介します
・WebinarではCompassionate useという語句の使用は推奨されず、正式にはExpanded Accessというそうです。

▽このWebinarでは60歳のALS女性の症例が報告されていました。大学教授であった彼女は、臨床試験への参加を希望しました。臨床試験中であったtirasemtivの使用を希望しました。

▽臨床試験中の薬剤を使用するための手段はあるのでしょうか?どのような手続きを踏めばいいのか、費用はどうなるのか?などが問題です

▽このような臨床試験中の薬剤の使用はExpanded Accessといわれています

▽Expanded Accessは、開発中の未承認薬や、FDAのリスク軽減戦略に基づいて管理中である既承認薬について、代替的治療法がない生命に関わる疾患や病態の治療において、特例的にFDAが使用を認可するものです。

▽原則的には未承認薬の使用は認められていません。しかし通常の薬剤の審査プロセスを通すと、臨床試験からFDAの審査まで長期間かかります。

▽そこでFDAは生命リスクの高い状態について、特例を設けました。それがExpanded Accessであり、以下の3つの要件が必要とされます
1.薬剤が生命リスクの高い疾患を対象としたものであり、代替的治療法がないもの
2.期待される有益性が、リスクを上回ること
3、Expanded Accessは、臨床試験の進捗と無関係であること

▽さらに以下の点も要求されます
1.個別の症例を対象にする場合:その症例について使用する合理性があること、さらに患者数が増加した場合、group IND(investigational new drug:治験薬についての申請資料提出)が必要となる
2.約100名未満の患者を対象にExpanded Accessを承認する場合:用量と投薬期間について安全性が確認されていること、有効性についての予備的な試験結果が存在すること
3.100名以上の患者にExpanded Accessを承認する場合:第3相ないし第2相臨床試験において、有効性に関するエビデンスが存在すること。生命リスクが高いことが臨床的根拠をもって確立されている疾患であること
などです

▽1名の患者がExpanded Accessに参加する場合は以下の手順をふみます
1.患者ないし医師が製薬会社に連絡を取り、薬剤の提供と、費用について相談する
2.製薬会社が薬剤提供に同意した場合、主治医は以下の手続きを行う必要がある
・単一患者に対する投薬とモニタリングのプロトコル作成
・同意書式の作成
・所属組織の治験審査委員会に申請し、承認を得ること
・FDAに個別患者のIND(新薬申請)について申請し、承認を得ること
・患者の保険が治療と経過観察をカバーできるか確認すること

▽集団でのINDの場合には、以上の過程を主治医と製薬会社が行うようです

▽製薬会社としては、集団でのINDを通常行うようです。プロトコルを個別化する必要がなく、費用がかからないことと、患者への差別化が少ないことなどの理由のようです

▽実際に行われたケースとして、AID治療薬で臨床試験に参加できなかった21000名の患者を対象にした場合や、非小細胞癌治療薬のイレッサで、第2相臨床試験と平行して、25000名が参加したもの、慢性骨髄性白血病治療薬のgleevecで7500名が参加したもの、臨床試験に参加後、終了後もそのまま継続して投薬を続けた場合などがあるようです

▽Expanded Accessには費用がかかるため、アメリカではALS患者のための基金(ALS-ETF)が2012年に設立されているようです。

▽冒頭の60歳の女性に戻りますが、この女性はALS-ETFにより準備された集団INDに参加することにしたとのことです。ALS-ETFは製薬会社と、最適な費用で薬剤を提供できるよう協議し、薬剤投与の安全性、有効性などについてのプロトコル作成を専門家と協議しました。またFDAに提出する書類作成を行ったとのことです

・FDAのホームページにて、Expanded Accessについて解説したページがあり、以下のような点が、Expanded Accessの障壁になるとの記載がありました
1.主治医がリスクなどのため未承認薬の使用を承認しない場合
2.製薬会社が、臨床試験外での使用を承認しない場合
3.製薬会社に、未承認薬の在庫がない場合
4.Expanded Accessを申請可能なのは免許をもった医師のみで、申請にも多大な手間とコストがかかること。保険会社も未承認薬の使用で生じた副作用は保障しないことが多いこと

・日本ではこのような制度に対応するものがあるのでしょうか?

引用元
http://vimeo.com/116354668
FDAのサイトでExpanded Accessについて解説したページ
http://www.fda.gov/forpatients/other/expandedaccess/default.htm
ALSモデルマウスにおける、咀嚼関連運動神経と眼球運動関連運動神経の細胞膜ホメオスタシス異常
・ALSにおいては障害を受けやすい運動神経細胞と、比較的保持される運動神経細胞があります。この両者の違いがどのような点にあるのかについての基礎研究の報告です

▽ALSにおいては運動神経細胞の過剰興奮性が報告されており、興奮毒性による細胞死に先立って観察されます。しかしながら、過剰興奮性が比較的変性を起こしにくい運動神経細胞においてもみられるのかどうかは明らかではありませんでした。

▽また均質な運動神経プール由来の運動神経細胞が全て同様な過剰興奮脆弱性を示すのかどうかも明らかではありませんでした。なぜなら、伝導速度が速く、易疲労性を示す筋線維を支配し、発火閾値の高い運動神経細胞は、伝導速度が遅く疲労抵抗性を示す筋線維を支配する運動神経細胞よりも、より変性を起こしやすいことが知られているからです。

▽研究者らは、咀嚼筋を支配し、ALSにおいて神経変性が生じやすい三叉神経の運動神経細胞の興奮特性と、ALSにおいて神経変性が生じにくく、疾患抵抗性を示す、眼球運動を支配する動眼神経の運動神経細胞の興奮特性とを、発症前のALSモデルマウス(SOD1変異(G93A)マウス)において、電気生理学的に調べました

▽その結果、変異SOD1蛋白質は、全ての運動神経細胞においてみられましたが、過剰興奮性は、全ての運動神経細胞において共通した性質ではないことがわかりました。

▽ALSにおいて脆弱で変性しやすい三叉神経の運動神経細胞においても、発火閾値の高い運動神経細胞では、発火閾値の低下が起こり、一方でもともと発火閾値の低い三叉神経細胞の一群では、発火閾値の上昇が起きていました。このような複雑な変化は、ALSに対して抵抗性の高い眼球運動を支配する運動神経細胞ではみられませんでした。

▽このような三叉神経での発火特性の複雑な変化が、実際に咀嚼関連運動の開始において、障害が生じることが、シミュレーションにおいても示されました、変性しやすい運動神経細胞の興奮特性の変化の、分子病態的なメカニズムを明らかにすることにより、ALSに対する治療戦略の開発につながる可能性があります。

(この研究は、アメリカ、 University of CaliforniaのVenugopalらにより報告され、平成27年1月14日付のJournal of Neuroscience誌に掲載されました)
引用元
http://www.jneurosci.org/content/35/2/707.abstract
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