ALS(筋萎縮性側索硬化症)に負けないで
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ALSに対するエリスロポエチンの第3相多施設プラセボ対照二重盲検比較試験
・一部で有効性を期待する報告もあったエリスロポエチン製剤ですが、第3相試験の結果は残念なものとなりました

▽イタリアで行われた第3相臨床試験です。この臨床試験では、リルゾール100mgに併用し、エリスロポエチン製剤4万単位ないしプラセボ(偽薬)が静注にて2週間に1回、12ヶ月間投与されました。

▽103名がエリスロポエチン投与、97名がプラセボを投与されました。

▽12ヵ月後の結果は、死亡率や気管切開率、非侵襲的人工換気の導入率、ALSFRS-Rの得点変化など、全てがプラセボとの統計的有意差なく、エリスロポエチン製剤の治療的有効性を確認することはできませんでした

(この研究は、イタリア "Carlo Besta" Neurological InstituteのLauriaらによって報告され、平成27年1月16日付のJournal of neurology, neurosurgery & psychiatry誌に掲載されました)
引用元
http://jnnp.bmj.com/content/early/2015/01/16/jnnp-2014-308996.abstract
ALSモデルマウスにおける神経筋接合部でのグリア細胞の早期からの機能異常
・基礎研究ですが、ALSモデルマウスにおける神経筋接合部でのグリア細胞機能異常についての報告です
・Brainstorm社のNurOwn細胞は、神経幹細胞を髄腔内および筋肉内投与を行っていますが、NurOwn細胞における、グリア細胞由来栄養因子などの産生能が報告されており、有効性があるならば、筋肉内投与の治療的根拠を与える報告かもしれません

▽ALSにおける病態は、運動神経細胞喪失が、神経筋接合部での神経の脱支配に先立って生じます。この神経筋接合部での神経の脱支配の機序についてはよくわかっていません

▽軸索をとりまくシュワン細胞などのグリア細胞の機能亢進が、運動機能低下に先立って起こることが報告されており、これらグリア細胞の病態への関与が注目されています

▽シナプス前のシュワン細胞や神経筋接合部におけるグリア細胞は、神経筋接合部の形態的安定性や、機能的統合、神経筋接合部の修復に関与しています。神経筋接合部の脱神経支配が早期から起こることから、これらグリア細胞の機能異常が脱神経支配に先立って生じていることが推測されます。

▽研究者らは、比較的進行の遅いALSモデルマウス(SOD1変異(G37R)マウス)を用いて、この仮説を検証しました。

▽その結果、生後120日目までの症状発現前においては神経筋接合部は正常な機能を示しましたが、シュワン細胞における細胞内カルシウム濃度は正常群よりも上昇しており、シナプス活動の変化が観察されました。

▽このような不適切なシュワン細胞の機能異常は、神経伝達物質放出量の増加に結びつき、シュワン細胞自身のムスカリン受容体の感受性亢進とも関連していました。

▽シュワン細胞におけるムスカリン受容体の機能変化は、病態発症前から持続しており、発症後の運動神経喪失の脆弱性とも関連していました。

▽これらの結果は、ALSの病態過程におけるシュワン細胞の機能変化を示唆するものであり、シュワン細胞の神経筋接合部維持機能の喪失の可能性を示唆するものです。シュワン細胞の機能異常が、ALSの病態に関与している可能性があります

(この研究はカナダ、Université de MontréalのArbourらによって報告され、平成27年1月14日付のJournal of Neuroscience誌に掲載されました)
引用元
http://www.jneurosci.org/content/35/2/688.abstract
ALSにおけるAMP活性化プロテインキナーゼの異常活性化はHuRの分布異常と関連する
・先日AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の活性化異常とALSとの関連性を報告した同じグループがAMPKと別の酵素との関連性について報告しています

▽mRNA代謝異常がALSの病態として報告されています。ヒト抗原R(HuR)は主要なmRNA安定化因子です。

▽研究者らは、AMPK活性の亢進により、HuRの異常な局在化が起こっていることをALS患者の運動神経細胞においてみいだしました。AMPKの活性化は、importin-α1のリン酸化を通じて、HuRの局在部位を変化させることが、マウスモデルでの実験で明らかになりました

▽アデノシンA2a受容体を刺激することにより、AMPKによって引き起こされたHuRの局在化異常が正常化することがわかりました。

▽以上の結果は、運動神経細胞における異常なAMPKの活性化が、HuRの正常分布を乱し、RNA代謝異常を引き起こすことで、ALSの病態に関与している可能性を示唆するものです。同時にアデノシンA2a受容体の活性化やAMPK活性の抑制がALSに対して治療的効果を有する可能性があります

(この研究は台湾、National Defense Medical CenterのLiuらによって報告され、平成27年1月12日付のFederation of European Biochemical Societies lettersに掲載されました)
引用元
http://www.febsletters.org/article/S0014-5793(15)00003-4/abstract
Genervon社のGM6がFDAにより人道的使用(compassionate use)の認可
▽Genervon社のALS治療候補薬であるGM6(GM604)は、第2a相臨床試験を終了し、その結果をこちら(http://alexkazu.blog112.fc2.com/blog-entry-413.html)にてご紹介しましたが、FDAが人道的使用(Compassionate use:生命に関わる疾患を有する患者の救済を目的として、限定的状況において未承認薬の使用を認める制度)の認可を行いました

▽この認可は、進行期における治験参加ALS患者において、第2a相臨床試験の結果、症状改善効果が認められたことを受け、この患者に対して認可されたものです。

▽この患者は、46歳の男性であり、2005年の診断を受け、10年間の罹患歴があります。現在は四肢麻痺で、呼吸器管理中の進行期の状態です。

▽12週間の臨床試験において、最初2週間で、6回GM6が投与されました。2週間後には、この患者は、発音の明瞭化が認められ、4週後には嚥下量が150%から200%増加しました。また経口水分摂取能力の改善が自覚的に認められ、ストローで一度に飲み込みが可能な量も当初の5-8cmから10-15cmに改善しました。

▽こうした会話能力や吸引能力、嚥下能力については、舌と口唇を支配する運動神経細胞機能の改善効果を示唆するものです。副作用はありませんでした。

▽髄液中のバイオマーカーである、SOD1やシスタチンC、総タウなどの量も、開始時点では全て正常下限以下でしたが、2週間後には全て正常範囲に戻りました(これらは進行期の患者での所見であり、発症2年以内の別の患者では、髄液中のSOD1や総タウは、開始時点では正常より高く、治療開始後に正常化したとのことです)。

▽GM6は多数の内因性シグナルの制御因子であり、多くの遺伝子発現を調整し、ALSに対する治療的な効果が期待されています。

▽今回のcompassionate useの認可された患者は、発症10年と非典型的な経過をとるケースであり、一般化はできない可能性はありますが、GM6はFDAよりfast trackとorphan drug指定を受けており、今後の第3相臨床試験の進展が期待されます。

引用元
http://www.genervon.com/genervon/about_pressreleases.php
AMP活性化プロテインキナーゼの活性化は、TDP-43の異常局在化に関与する
・孤発性ALSの病態において重要な役割を果たすとされているTDP-43をターゲットにした新たな治療戦略の可能性についての報告です

▽TDP-43は核のRNA結合蛋白質であり、様々な細胞内経路に関与しています。またTDP-43陽性細胞内封入体の存在はALSの特徴的な病態の1つです

▽ALSにおいてはTDP-43が核内から細胞質内に異常に局在化しています。今回研究者らは、TDP-43の細胞質内での異常局在化の際、活性化したAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の増加がみられることを見出しました

▽運動神経細胞モデル(NSC34)ないしマウスの脊髄におけるAMPKの活性化は、TDP-43の異常局在化を誘発し、ALSに類似した病態をもたらしました

▽NSC34細胞においてAMPK-α1の産生抑制ないし、変異AMPK-α1蛋白質発現による正常AMPK-α1の抑制を行うと、TDP-43変異モデルマウスにおいて、病態進行の遅延がみられました

▽以上の結果は、TDP-43の細胞質内における異常局在化において、AMPK-α1の活性化が重要な役割を果たすことを示唆しており、AMPK活性化の抑制が、ALSに対する治療戦略として有望であることを示唆するものです

(この研究は、台湾、National Defense Medical CenterのLiuらによって報告され、平成27年2月号のHuman Molecular Genetics誌に掲載予定です)
引用元
http://hmg.oxfordjournals.org/content/24/3/787.abstract
日本ALS協会への働きかけ
・いつもコメントなどでお世話になっているいのべたさんが、こちらのコメント欄にて、ALS協会への働きかけと、その際のお話の概略を紹介してくださいました。
・いのべたさんありがとうございます

・日本で最大の当事者団体であり、発言力も最もあると思われるため、ALS協会の活動への期待は大きいものがあります

・日本でのALS研究の進展や、当事者の社会的保障の充実などは最重要課題と思われます。積極的な提言が期待されます。

・アメリカでは、ALS協会はNPO団体にあたり、同様にアメリカ筋ジストロフィー協会も同じような位置づけでありながら、資金力も膨大(アイスバケツチャレンジにより、全世界では200億円以上、アメリカALS協会には100億円以上が集まったとのことですが、アメリカALS協会がアイスバケツチャレンジ以前の2013年に研究資金として学術団体に供与した資金の額は10億円近い規模で年間予算は30億円規模のようです。以下のfinancial reportより。)であり、また協会が主催をして有名タレントや当事者が出演し、疾患について啓蒙する全米に放映されるチャリティー番組(MDA Show of Strength)を1966年以降毎年アメリカの労働者の日に放送しており、社会的啓蒙活動の規模も桁違いです。

・このような資金力、活動力と同じとまではいかなくても、アメリカの1/10の予算規模でもあれば、かなりの活動ができるのではないでしょうか。継続的、定期的な活動が重要と思われます。
核小体ストレスとストレス顆粒形成の障害が、C9ORF72変異における、開始コドン非介在性リピート関連翻訳による細胞傷害性に寄与する
▽ALSと前頭側頭型認知症(FTD)は、C9ORF72遺伝子の非翻訳領域における6塩基配列(GGGGCCないしGGCCCC)の繰り返し配列数の過剰伸長に起因します。

▽開始コドン非介在性リピート関連翻訳(RAN translation)は開始コドンを介さない非定型的な翻訳形式であり、GGGGCC配列ないしGGCCCC配列より5種類のジペプチド反復配列蛋白質(2種のアミノ酸が反復配列した蛋白質)が生じうることがわかっています

▽これら5つの蛋白質はpoly-グリシン-プロリン(GP)、poly-グリシンーアラニン(GA)、poly-グリシン-アルギニン(GR)、poly-プロリンーアルギニン(PR)、poly-プロリンーアラニンの5種類です

▽これらのRAN蛋白質の凝集が起きていることがALS患者において観察されていますが、RAN蛋白質の凝集が神経細胞毒性を有するのかどうか、明らかではありませんでした

▽今回、研究者らは、これら5種類のRAN蛋白質の性質を調べました。その結果、これら5種類のRAN蛋白質のいずれもが、細胞モデルにおいて凝集性を示さず、これら蛋白質の代謝はユビキチンープロテアソームシステムや自食作用の影響を受けませんでした

▽さらに、poly-GRとpoly-PR蛋白質は核小体に局在化し、核小体の主要な構成要素であるヌクレオホスミンを移動させ、結果的に核小体ストレスの増大と細胞死につながりました(このような性質はpoly-GA、poly-GP、poly-PAではみられませんでした)

▽このようなpoly-GRとpoly-PR蛋白質による核小体機能の障害は、リボソームのRNA合成の抑制と、ストレス顆粒形成の障害に関連していました。

▽以上の結果は、C9ORF72遺伝子変異に起因したALS/FTDの病因は、RAN蛋白質の凝集によるのではなく、RAN蛋白質による核小体ストレスが原因であることを示唆するものです。

(この研究は中国、Soochow UniversityのTaoらにより報告され、平成27年1月9日付のHuman Molecular Genetics誌に掲載されました)
引用元
http://hmg.oxfordjournals.org/content/early/2015/01/09/hmg.ddv005.abstract
ALS関連遺伝子変異を有するヒトiPS細胞由来の運動神経細胞は生存可能だが機能不全を示す
・ALS患者由来のiPS細胞を用いた研究成果です。この分野の研究がさらに進展し、早期の病態解明が実現することを期待します。

▽研究者らは、健常ヒト由来iPS細胞と、TDP-43をコードするTARDBP遺伝子変異、ないしC9ORF72遺伝子変異を有するALS患者由来のiPS細胞を運動神経細胞に分化誘導し、性質を調べました。

▽健常者ないし患者由来のiPS細胞から分化誘導した運動神経細胞は、正常な生存機能を示しました。しかし患者由来のiPS細胞から誘導した運動神経細胞は、遺伝子変異の型によらず、発火初期には過剰興奮性を示し、その後徐々に発火しなくなる性質を示し、シナプス活動も漸減しました。

▽このようなシグナル出力機能の喪失は、電位依存性Naチャネル電流とKチャネル電流の進行性の減少を反映したものであり、細胞の明らかな生存機能の喪失を伴わずに観察されるものです。

▽これらの実験結果は、ALSにおける早期からのイオンチャネルの機能不全を示唆するものであり、このような異常が、結果的に神経変性経路の起点となり、最終的にはALSにおける運動神経細胞の喪失につながっている可能性があります。

(この研究はアメリカ、 University of St. AndrewsのDevlinらによって報告され、平成27年1月12日付のNature Communications誌に掲載されました)
引用元
http://www.nature.com/ncomms/2015/150112/ncomms6999/full/ncomms6999.html
新しい技術が神経変性疾患の病態解明に有用かもしれない
▽Utrechi大学の細胞生物学者らは、神経細胞内の選択的な一部分を、細胞内の別の場所に移動させる技術を開発しました。この技術により、細胞内器官が機能を発揮する際に、細胞内に存在する部位がどのような意義を有するのかについて正確に調べることが可能となります

▽この部位特異性を調べることにより、ALSなどの神経変性疾患の病態解明に役立つことが期待されています。

▽この技術は、全ての細胞に対して応用可能ですが、神経細胞の研究への応用が興味深い分野です。他の細胞と違い、神経細胞が損傷を受けた場合、他の細胞に置き換わることは困難です。このことは、とりわけ神経細胞の成長や損傷に対する修復機構が、神経系の健常性を維持することに重要なことを意味しています。

▽ALSなどの疾患は、この機構に障害が生じると考えられています。とりわけ、細胞内の輸送機構の障害が1つの病因として推測されています。

▽このたび開発された技術により、細胞内輸送機構の修復が、神経細胞損傷の回復の手助けになるかどうかが明らかになるのではないかということです。

▽細胞が正常な機能を保持するためには、細胞にエネルギーを供給するミトコンドリアなど細胞内器官の働きが必要です。この細胞内器官の場所が適切であることが、細胞が正常な機能を果たすために重要であることがわかっています。

▽しかし、これまで、細胞内の特定の器官の場所を人工的に移動させることはできませんでした。今回開発された技術により、選択的に細胞内器官の場所を移動させたり、局所的に細胞内輸送機構をコントロールすることが可能になるとのことです。

▽この技術は、細胞骨格の特定の運動蛋白質(kinesin, dyneinやmyosin)を用い、光感受性のヘテロ二量体化をさせることにより、光学的に運動制御を行うものです。

▽研究者らは、細胞生存下において、海馬の神経細胞を用い、細胞内のエンドソームを神経成長円錐から移動除去することにより、神経成長が抑制されることを見出しました。

・将来的には、iPS細胞などからALS患者の神経細胞を分化誘導し、この技術と組み合わせることで、病態解明が進展することが期待されます

(この研究はオランダ、Utrecht UniversityのBergeijkらにより、平成27年1月7日付のNature誌に掲載されました)
引用元
http://medicalxpress.com/news/2015-01-technique-neurodegenerative-diseases.html

http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/full/nature14128.html#author-information
難病患者の登録ネット化…国立精神・神経医療研究センター
・麦酒王さんからの情報です
・平成26年12月18日付の読売新聞の記事からです。
引用元
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=109764

▽神経や筋肉の難病の治療法開発を目指し、国立精神・神経医療研究センター(東京都小平市)は、インターネットによる患者情報登録システムの運用を開始したとのことです。
▽「最先端の医療と難病患者を迅速につなぐ役割を果たし、画期的な治療法を生み出していきたい」とのことです。
・新規登録はこの春からとのことで、まずは筋ジストロフィーなどが対象とのことで、ALSについての記載はありませんでした。
・今後データが一元化され、治療法開発や、治験の迅速な進行などに役立つことが期待されます。
・麦酒王さん、ありがとうございました。
皮質脳波によるブレイン・マシン・インターフェースのための患者特異的な適合形状を有するシート型電極
・大阪大学の研究グループからの報告です
・3Dプリンタを用いて、ブレイン・マシン・インターフェースの発展につながる技術が開発されたとの報告です

▽脳の機能はミリメートルの単位で局在化していることが推測されますが、臨床的に使用される脳表電極の電極間距離は10mm程度にとどまる現状とのことです。

▽一方で、脳表電極の平面的な形状的問題により、一部の電極は、皮質電気活動の測定に失敗することもあります。

▽研究グループは3Dプリンターを使用して、患者特異的な脳溝形状に適合するシート状の移植電極を作成し、ブレイン・マシン・インターフェースに応用可能な、質の高い皮質電気活動の計測を実現しました。

▽電極間の距離は2.5mmということです。迅速な製造が可能で、ラットでの実験では安全性が高いことが確認されています。

▽ALS患者などからγ周波数帯域の有意な脳波シグナルを検出することに適していることが期待されており、より高性能なブレイン・マシン・インターフェースの開発に寄与することが期待されます

(この研究は大阪大学のHirataらにより報告され、平成26年8月の Annual International Conference of the IEEE Engineering in Medicine and Biology Society.のproceedingsとして掲載されました)
引用元
http://ieeexplore.ieee.org/xpl/articleDetails.jsp?arnumber=6944798
アイルランドにおいては多専門的なクリニックアプローチがALSの生存期間を改善する
▽多専門的なクリニックでのケアを受けることがALSの予後を改善するとの報告があります。今回研究者らはアイルランドにおいて、国内の2つの地域、アイルランド共和国(RoI)と、北アイルランド(NI)において、住民を対象としたALS患者登録に基づく、各地域でのALSの生命予後を調査し、多専門的な集中的サービス提供が、地域密着型の一人の専門家によるケアと比較して優位性があるかどうかを検証しました

▽アイルランドはRoIとNIの2つの地域に二分され、それぞれが独立したヘルスケア・システムを有しています。また各地域が、それぞれ全登録制のALS患者登録簿を有しています。2005年から2010年までに登録された719名のALS患者について、解析されました

▽その結果、RoI地域の多専門家によるALSクリニックのケアを受けた患者は、NIの地域密着型ケアを受けた患者と比較して、平均8ヶ月間、有意に生存期間の延長がみられました。

▽この結果は、性別、発症年齢や発症地域、リルゾール使用の有無、胃瘻造設の有無、非侵襲的人工換気使用の有無などの交絡因子について調整を行った多変量解析を行っても、有意差が保持されていました。

▽RoI地域の患者は496名、NI地域の患者は207名であり、リルゾールの使用率はRoI地域で80%、NI地域では90%でした。RoI地域で多専門家ALSクリニックのケアを受けたのは66.5%、NI地域では全員が地域専門家ケアを受けていました。

▽胃瘻を造設した割合は、多専門家クリニックケアの患者では22.9%、地域専門家ケアでは29.2%でした。また非侵襲的人工換気については、多専門家クリニックケアでは38%で地域専門家ケアでは15.4%でした。しかしこれらの差を調整後も生存期間は有意に多専門家クリニックケアを受けた患者群で長かったということです。胃瘻造設時期や、非侵襲的換気導入時期については有意差はありませんでした。

▽多専門家によるケアでは神経内科医、ALS看護師、理学療法士、作業療法士、言語療法士、栄養士などからなるチームによるケアが行われ、1度の診察は2-3時間を要し、終夜酸素飽和度測定等を含む呼吸機能の評価が毎回受診する度に行われました。理学療法士は呼吸障害や神経学的障害の観点から、リハビリを提供し、気道分泌物のマネジメントやカフ・マシンの使用訓練などが行われました

▽言語療法士は、嚥下機能についての評価と、訓練を提供しました。抗コリン作用のある薬剤(アミトリプチリン、グリコピロニウム)、スコポラミン・パッチによる気道分泌抑制や、難治性のケースでは、唾液腺へのボツリヌス毒素注入や、放射線照射が行われました。

▽最適な栄養量が栄養士により評価され、サプリでの栄養補助が推奨されました。急速な体重減少や、嚥下困難の増悪、早期からの呼吸不全のみられる患者については、多専門家職種による介入法についての検討会議が行われました。

▽3名のALS専門看護師が訪問看護を行い、ALSのマネジメント法についての助言を家族や本人に行いました。

▽以上のような多専門家によるケアにより、生存期間の延長効果がみられた理由ははっきりとわかりませんが、臨床的予後を改善しうる可能性があり、推奨されます

・訳注:原因遺伝子レベルの解析まではされていないため、一部の予後良好群による影響などの交絡因子を除外できていない可能性はあります。
(この研究は、アイルランド、Trinity Biomedical Sciences InstituteのRooneyらによって報告され、平成26年12月30日付のJournal of neurology, neurosurgery, and psychiatryに掲載されました)
引用元
http://jnnp.bmj.com/content/early/2014/12/30/jnnp-2014-309601.abstract
ミトコンドリア透過性阻害剤である新規小分子薬剤のGNX-4728はALSモデルマウスにおいて治療効果を有する
▽ALSの病態にミトコンドリアの関与が疑われていますが、そのメカニズムについてのはっきりとした証拠はつかめていません。

▽研究者らは、ミトコンドリア膜透過性遷移孔(mPTP)の透過性を変化させる小分子が、ALSに対して治療的効果を有するとの仮説のもとで、動物モデルにおいてこの仮説を検証しました。

▽ALSモデルマウスにおいて、プラセボ対照の比較試験が行われました。研究者らはmPTPの透過性を阻害する薬剤であるGNX-4728を用いて、治療的効果の有無を検証しました。GNX-4728はミトコンドリアのカルシウム保持能を増大させることから、mPTP透過性を阻害すると考えられています。

▽SOD1変異(G37R)ALSモデルマウスに対してGNX-4728を投与したところ、治療的効果が観察されました。GNX-4728は、ALSモデルマウスの生存期間を約2倍に延長しました。

▽GNX-4728は、運動神経細胞変性、ミトコンドリア変性を防ぎ、脊髄での炎症反応を抑制し、横隔膜の神経筋接合部での神経支配を保持しました。

▽以上の結果は、mPTPに作用する薬剤が、ALSに対して治療的効果を有する可能性を示唆するものです

(この研究はアメリカ、Johns Hopkins UniversityのMartinらによって報告され、平成26年12月19日付のFrontiers in cellular neuroscience誌に掲載されました)
引用元
http://journal.frontiersin.org/Journal/10.3389/fncel.2014.00433/abstract
SIL1蛋白質はALSにおいて、運動神経細胞のサブタイプに選択的な小胞体ストレスを制御する
・新たな治療候補の報告です
・アデノ随伴ウイルスベクターによる遺伝子治療法の候補になります

▽運動神経細胞のサブタイプに特異的な小胞体ストレスに関与する機構と、それに関連したALSにおける軸索の病態はよくわかっていません。

▽研究者らは、小胞体をとりまく分子レベルの環境が、運動神経細胞のサブタイプ毎に異なる特徴を示すことを明らかにしました。

▽Marinesco-Sjogren症候群(MSS)における変異遺伝子である、cochaperone(シャペロンによる蛋白質の折り畳みなどの機能を補助する蛋白質)であるSIL1蛋白質が、疾患抵抗性を有する運動神経細胞において発現がみられ、一方、小胞体ストレスの影響を受けやすく、疲労抵抗性の弱い運動神経細胞においてはSIL1蛋白質の発現がみられないことがわかりました。

▽MSSのモデルマウスにおいて、SIL1蛋白質の機能が喪失した場合、運動神経細胞における小胞体の恒常性維持機構が破綻することがわかりました。SOD1変異ALSモデルマウスにおいてSil1遺伝子の対立遺伝子のうちの片方をノックアウトすると、小胞体ストレスが増大し、ALSの病態増悪がみられました

▽SIL1蛋白質濃度は、進行性にかつ選択的に、疲労脆弱性を示す運動神経細胞において減少していました。SIL1蛋白質の減少は、疲労脆弱性を有する運動神経細胞の興奮性の減弱と関連し、特異的な小胞体シャペロンの発現に影響を及ぼします。

▽アデノ随伴ウイルスベクターにより、SIL1遺伝子を家族性ALSの運動神経細胞に導入することにより、小胞体ホメオスタシスの回復と、筋力低下の遅延、生存期間の延長効果が確認されました。

(この研究はスイス、University of BernのFilézac de L'Etangらにより報告され、平成27年1月5日付のNature Neurosciense誌に掲載されました)
引用元
http://www.nature.com/neuro/journal/vaop/ncurrent/full/nn.3903.html
Brainstorm社1月5日付Press release他
・昨日のwebcastで放送されたNurOwn細胞の第2a相臨床試験の結果がbrainstorm社のHPにて掲載されていました
・昨日の記事に一部誤りがありましたので(誤:静的肺活量→正:努力性肺活量)修正しています
・以下記事の内容です(昨日の記事と重複する部分もあります)

▽イスラエル、 Hadassah Medical Centerで行われたNurOwn細胞の第2a相臨床試験の最終結果です

▽この試験では、NurOwn細胞が髄腔内カテーテルより体重1kgあたり最大200万個、筋注として合計最大4800万個移植されました

▽重要なことに、ほとんどの被験者が臨床的有効性を実感することができました。12名の患者について、移植後3-4ヵ月後の時点で、92%の患者がALSFRSないし努力性肺活量により評価した疾患進行の遅延を感じていました。

▽ALSFRS尺度で評価した場合、最初の3ヶ月間の観察期間中では、平均1.41点の増悪ペースでしたが、移植後3ヶ月間は0.78点/月であり45%の進行度改善が、移植後6ヶ月間では0.6点/月であり、57%の進行度改善がみられました

▽努力性肺活量(FVC)では、最初3ヶ月間の観察期間では、平均2.6%の増悪ペースでしたが、移植後3ヶ月間は0.7%/月と73%の進行度改善が、移植後6ヶ月間では0.86%と67%の進行度改善がみられました

▽今回は単回投与でしたが、それでも有望な結果がえられたことから、今後多数回投与による臨床試験を行いたいとしています。

引用元
http://www.brainstorm-cell.com/index.php/news-events/331-january-5-2015

・昨日のwebcastの結果をうけてALS TDIの掲示板ではこの話題に関して当事者含めた投稿がみられました
・中には試験がオープン試験であり、FVCについても慣れの効果があるため、結果の解釈には慎重になるべきとの投稿や、遺伝子異常については地域間格差が大きいため、遺伝子異常のサブタイプについても報告し、解析を行うべきであるなどの投稿がありました。
アセチル化のスイッチがTDP-43の機能と凝集性を制御している
・孤発性ALSの病態に関与すると考えられている、TDP-43蛋白症の新たな治療戦略となりうる発見の報告です

▽TDP-43はALSや前頭側頭型認知症の病態において主要な役割を果たしています。TDP-43はRNA結合蛋白質としての性質が明らかになってきましたが、TDP-43の機能を制御する機構についてはほとんどわかっていませんでした。

▽研究者らは、リシンのアセチル化が、TDP-43の機能と凝集性をコントロールする、翻訳後修飾であることを新たに発見しました。

▽TDP-43のアセチル化は、RNA結合能を障害し、不溶性凝集体の形成、過剰リン酸化TDP-43の生成など、ALSやFTLD-TDPの病態にみられる病的な封入体類似物の形成を促進します。

▽さらに、培養細胞での生物化学的実験により、酸化ストレスが、アセチル化TDP-43の凝集促進の引き金となり、細胞防御機構の発現につながることがわかりました

▽重要なことに、アセチル化したTDP-43による損傷は、ALS患者の脊髄中において観察され、異常なTDP-43のアセチル化とRNA結合能の喪失が、TDP-43蛋白症発症に結びつくことを示唆しています

▽従って、TDP-43のアセチル化を防ぐことが、TDP-43の機能を正常化し、TDP-43蛋白症の新たな治療戦略になりうることがわかりました

(この研究は、アメリカ、University of North CarolinaのCohenらにより報告され、平成27年1月5日付のNature Communications誌に掲載されました)
引用元
http://www.nature.com/ncomms/2015/150105/ncomms6845/full/ncomms6845.html
Brainstorm社第2a相臨床試験最終結果webcast
・本日日本時間の午後10時30分よりBrainstorm社のイスラエルでの第2a相臨床試験の最終結果についてのwebcastが行われました
・スライドはなく音声のみでしたので、こちらでご報告できる内容は断片的なものになります(正確な情報については、今後公表される正式なものをお待ちください)

▽この臨床試験は20歳から75歳までの発症2年以内でALSFRS得点が30点以上のALS患者14名を対象として行われました

▽イスラエルのHadassah Hebrew University Medical Centerで行われた単一施設のオープン試験です

▽患者の骨髄から間葉系幹細胞が採取され、神経栄養因子を分泌する細胞に分化培養された後、合計24ヶ所に筋注され、髄腔内に挿入されたカテーテルを通じて髄液中にも注入されました。

▽最初3ヶ月間は自然経過が観察されました。その後単回の幹細胞移植が行われ、移植後6ヶ月間経過が観察されました

▽14名に対して3つの異なる用量の幹細胞移植が行われましたが、今回の報告は全体の結果が主でした。理由としてはどの用量でもあまり用量依存性無く有効性が確認されたから、ということです

▽ALSFRS-Rのベースラインの得点は平均37.9点でした。最初3ヶ月間の未治療観察期間では1ヶ月あたり平均1.4点の増悪ペースでしたが、移植後の3ヶ月間は平均0.78点/月、4ヶ月から6ヶ月目までは平均0.6点/月の増悪ペースとなり、進行遅延がみられたとのことです。

▽%努力性肺活量(%FVC)については、ベースラインで平均87%でしたが、最初3ヶ月間の未治療観察期間では平均2.6%/月の増悪ペースが、移植後の最初3ヶ月間は平均0.7%/月、4ヶ月から6ヶ月目までは平均0.87%/月と増悪の遅延がみられたということです。

▽6ヶ月間で自然経過と比較して、平均57%ほどの進行遅延がみられたことになります。

▽全体として治療反応性がみられたのは14名中10名でした。中には明らかな改善効果(ALSFRSで4点程度)を示した患者もおり、効果は腕力や歩行機能の改善などで、1ヶ月目から明らかだったとのことです。

▽現在アメリカでは48名を対象とした、第2相の多施設での無作為割付プラセボ対照比較試験が進行中です。2015年中には結果の大勢が判明するとのことです。またイスラエルにおける第3相臨床試験についても2015年中に開始したいということです。

・アメリカで進行中の臨床試験の方が、イスラエルのものより試験の質がはるかに高いため、こちらの結果がどうなるか、期待されます。
VCP関連疾患において、Cre-LoxPによる変異VCP(R155H)の部位特異的切断は治療候補となる
・家族性ALSの一部の病態に対する遺伝子治療法候補に関する報告です
・Cre-LoxPLoxPとよばれる特定のDNA配列にはさまれたDNA領域をCre酵素が切断し、部位特異的にDNA配列を組み替える技法のようです

▽骨Paget病と前頭側頭型認知症を伴う封入体筋炎はVCP(Valosin Containing Protein)遺伝子の変異に起因します。

VCP遺伝子変異は家族性ALSの2-3%にみられ、遺伝性封入体筋炎の10-15%に合併するALSの病因としてしられています。

▽VCP関連疾患において最も高頻度にみられるR155H変異を部位特異的に切断するため、研究グループはタモキシフェンにより切断変異を誘発可能なCre-ER(TM)-VCP(R155H/+)モデルマウスを開発しました

▽妊娠中マウスに対してタモキシフェンを投与することで、出生マウスのVCP遺伝子のエクソン4とエクソン5領域が切断され、VCP遺伝子の組換えがおきていることがQ-PCR解析により判明しました。

▽Cre-LoxP技術により遺伝子組み換えを行ったマウスにおいては、筋力の改善と、筋線維構造の正常化、自食シグナル経路の正常化とアポトーシス減少、中枢神経変性の減少、病態の軽減が観察されました。

▽この結果はVCP関連疾患において、Cre-LoxP技術により変異エクソン領域を切除することが、治療戦略として有望であることを示唆しています。

(この研究はアメリカ、University of California-IrvineのNalbandianらによって報告され、平成26年12月29日付のHuman Gene Therapy Methods誌に掲載されました)
引用元
http://online.liebertpub.com/doi/abs/10.1089/hgtb.2014.096?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori%3Arid%3Acrossref.org&rfr_dat=cr_pub%3Dpubmed&
ホモシステイン誘発性ヒト単球細胞の活性化にはトランスグルタミナーゼ2が関与している
・本年もよろしくお願いいたします。
・Brainstorm社とNeuralstem社の第2相臨床試験の結果は今年前半にははっきりすると思います。幹細胞移植に関する臨床試験のみならず、日本の遺伝子治療研究所の臨床試験の早期開始なども期待されます。
・今年1年がALSの治療法に関する明るい話題が多い年となることを期待します。

▽異常なトランスグルタミナーゼ2蛋白質の発現とそれに関連した蛋白質シグナルの活性化はALSや多発性硬化症、パーキンソン病などの神経変性疾患の病態と関連していると考えられています

▽これら変性疾患では神経炎症反応が、活性化したミクログリアや単球などの炎症細胞により誘発されていると考えられています。興味深いことに、軽度から中等度の高ホモシステイン血症が、これら神経変性疾患において存在しうることが報告されています

▽研究グループはヒトTHP-1単球細胞を用いて、ホモシステイン濃度が軽度に上昇した環境においてトランスグルタミナーゼ2の果たす役割について調べました。

▽単球細胞をホモシステイン溶液中で培養したところ、活性酸素種の濃度が2倍になり、過酸化脂質と8-hydroxyguanosine濃度が上昇し、グルタチオン濃度が減少し、細胞の抗酸化作用が50%減弱しました。

▽ホモシステインにより誘発された酸化ストレスは、トランスグルタミナーゼ2発現と活性の上昇と関連し、同時にNF-κBの活性化もみられました。

▽トランスグルタミナーゼ2を特異的に抑制するR283を加えると、NF-κBの活性化はみられなくなりました。ホモシステイン暴露はTNF-α、IL-6、IL-1β、Herpなど小胞体ストレスに関連したマーカーや炎症マーカーのmRNA上昇をもたらしました。これらの上昇もトランスグルタミナーゼ2阻害剤のR283投与により抑制されました

▽異常の所見は、トランスグルタミナーゼ2が、ホモシステイン誘発性の炎症反応や小胞体ストレス、酸化ストレスなどの関与する単球活性化に際して重要な役割を果たしていることを示唆しています。

▽トランスグルタミナーゼ2の抑制が、軽度の高ホモシステイン血症を伴うALSなどの神経変性疾患の治療戦略となりうる可能性があります。

(この研究はイタリア、Polyclinic University of MessinaのCurro Monicaらにより報告され、平成26年12月30日付のFree Radical Research誌に掲載されました)
引用元
http://informahealthcare.com/doi/abs/10.3109/10715762.2014.1002495
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