ALS(筋萎縮性側索硬化症)に負けないで
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プリオン様RNA結合タンパク質が関連する疾患
RNA結合タンパク質の変異は、どのようにしてヒトの疾患、特に神経変性疾患を起こすのだろうか。H Kimたちは、前頭側頭型認知症を伴う封入体ミオパチーを有する2家系で、2つのRNA結合タンパク質hnRNPA2B1とhnRNPA1に生じた変異を突き止めた。どちらの変異も、プリオンタンパク質と類似点があって凝集する傾向を持つタンパク質ドメインの、高度に保存された部位に存在する。この凝集は、今回見つかった2つの変異によって増強される。hnRNPA2の変異が生じたプリオン様ドメインは、酵母プリオンタンパク質のドメインと機能的に置換可能で、そのプリオン様の挙動を再現できる。これらの結果は、筋萎縮性側索硬化症などの変性疾患やプロテイノパチー(タンパク質症)の発症機序に関係してくる。

正常なハエ(左)とhnRNPA2変異を持つハエ(右)。
正常なハエ(左)とhnRNPA2変異を持つハエ(右)。

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RNA代謝が神経変性と結びつく
哺乳類のRNAキナーゼであるCLP1が見つかったのは5年ほど前のことだが、当初in vivoでの機能は不明だった。その後、RNA代謝は生物学で重要な位置を占めるようになり、そして今回ノックアウトマウスを用いた研究で、CLP1が運動ニューロンで機能することが明らかにされた。不活性型CLP1キナーゼを発現するマウスでは、脊髄運動ニューロンが徐々に消失し、末梢神経の変性が見られ、運動機能障害が生じて最終的に呼吸不全が起こる。CLP1活性の消失は、チロシンtRNA前駆体の異常なプロセシングに由来する低分子RNA断片の蓄積を引き起こす。これらのtRNA断片により、細胞は酸化ストレス誘導性のp53活性化、およびp53依存性の細胞死に対して高感受性となる。p53を遺伝学的に不活性化すると、変異マウスはCLP1不活性化による神経筋症状から救済される。これらのデータは、tRNAプロセシング、新しいRNA種、およびp53によって調節される進行性の下位運動ニューロン消失の間のこれまで知られていなかった結びつきを明らかにしている。これらの知見は、筋萎縮性側索硬化症や脊髄性筋萎縮症などの疾患の分子基盤を説明するのに役立つかもしれない。

脳の細胞レベルで物理的な損傷が生じる可能性があることを発見
新しい環境を探索しようとしたり、難しい内容を理解しようとしたときなどに、脳の細胞では DNAレベルの物理的な損傷が生じている可能性があるという研究結果が発表された。
量子物理学の難しい記事などを読むと頭が痛くなる、と文句を言う人は多いかもしれない。
そうした表現は象徴的なものだろうが、しかし、もしかしたら難しい内容は、実際に脳の細胞へ物理的な損傷を与えている可能性があるという研究結果が発表された。

カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の研究チームが「Nature Neuroscience」に発表した論文によると、研究チームは人間の早発性アルツハイマー型認知症に関連づけられるいくつかの突然変異を遺伝子操作によって模倣したマウスを使って研究していた。実験の一環として、チームはマウスの脳にDNA損傷の兆候を探した。その結果、概してマウスの脳が活動状態にあるとき、具体的にはマウスに新しい環境を探索させた後に、損傷の兆候が増加することがわかった。

この結果だけでも興味深いが、本当に驚くのはアルツハイマーを発症しやすくせず、脳障害リスクが上昇した状態になかった対照群のマウスの調査結果だ。この対照群にも、同環境でのDNA損傷の兆候がみられたのだ(ただし、アルツハイマーを発症しやすくしたマウスに比べてレベルはやや低かった)。

このとき生じたDNA損傷は、「二重鎖切断(double-strand break)」という種類のもので、DNAの二重らせんが両方とも切れ、1個のDNA分子が2つに分かれてしまう損傷だ。
研究チームはDNAそのものをマウスの脳から分離してみた。その結果、刺激の多い環境におかれたマウスには、DNA損傷がより多くみられることが確認された。そのようなマウスでは、40%もの細胞に損傷の兆候を示すDNAが見つかった。

こうした損傷は神経活動のみによっても起きるのかを調べるため、研究チームは麻酔をかけたマウスの目に光を照射した。 これでも損傷が生じた。脳そのものの神経活動を活性化させても結果は同様だった。また、さまざまな抑制因子を使って、原因をグルタミン酸という1つの神経伝達分子にまで絞り込むことに成功した。

神経活動は、そもそも多くのエネルギーを消費するものだ。また高い代謝活性は、DNAに損傷を与えうる酸素ラジカルを生成する傾向にある。ところが、抗酸化物質を用いてもDNAの損傷は防げず、この結果は原因をどこか別のところに求める必要があることを示しているとみられる。研究チームは、神経発火に続く遺伝子活性の変化が原因である可能性を示唆している。

この現象は長期的な損傷を与えるのだろうか。研究チームが明らかにした限りでは、この損傷は1日以内に修復されるため、問題は一時的なものに終わるはずだと考えられている。
また他の複数の研究から、知的に活発であり続けると、老化に伴って生じる一般的な種類の認知機能低下を防ぐのに効果があることが明らかになっている。それでも今回の研究は、病態、この研究の場合は アルツハイマーの病態に関連づけられる損傷が増えると、修復システムによる修復が追いつかなくなり、病気の進行に寄与する可能性を示唆している。

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