ALS(筋萎縮性側索硬化症)に負けないで
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滋賀医科大学分子神経科学研究センター神経難病治療学分野(新着情報)
ALSの病原タンパクの一つであるTDP-43のRRM2ドメイン内の特定のアミノ酸が、同蛋白質の構造維持とDNA/RNA結合に重要であり、ALS病態に関することを示した、京都大学、兵庫医科大学、和歌山県立医科大学との共同研究成果がPLOS ONE誌にオンライン掲載されました。小代さん、井戸さんが中心になって進めた研究です。

滋賀医科大学 分子神経科学研究センター神経難病治療学分野
http://www.shiga-med.ac.jp/~uru/
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ALS患者の疾患進行を示す遺伝子を特定
筋委縮性側索硬化症(ALS)患者の疾患進行の指標となる遺伝子が特定された。ルー・ゲーリック病としても知られるALSは、徐々に身体が麻痺し、死に至る神経変性疾患である。10万人に約5人が罹患し、治療法はわかっていない。

米メソジスト病院(ヒューストン)の研究グループは、炎症を抑制するT細胞の欠如によってALSの衰弱性症状が増大するようであることを突き止めた。具体的には、研究対象としたALS患者の80%で、遺伝子FoxP3(抗炎症作用をもつT細胞の産生を制御する遺伝子)の発現が疾患進行の指標となることが示された。ALSの進行が速い患者ではFoxP3発現レベルが低い確率が高く、FoxP3発現レベルが高いと疾患の進行が比較的遅かったという。この知見は、「EMBO Molecular Medicine Journal」オンライン版に11月9日掲載された。

研究の筆頭著者である同病院神経学助教授のJenny Henkel氏は、「今回の研究は、FoxP3の低発現レベルが急速な疾患進行の指標となることから、制御性T細胞が疾患の進行を遅らせる可能性を初めて示したものである。将来的な疾患の進行および生存の予後指標としてFoxP3の発現レベルを利用できる可能性がある」と述べている。

炎症とALSの進行との関連は十分に裏付けられており、同疾患に関連する多数の遺伝子が特定されているという。「炎症がALS患者の疾患を悪化させるが、一部の患者ではこの炎症が抑制されている。今回のデータから、制御性T細胞によって炎症を抑制できることが示唆される」とHenkel氏は述べている。

同氏は、ALS進行を促進する炎症を制御するための特定の標的に近づきつつあり、同疾患の新たな治療法の開発にも近づいているとも述べている。

Scientists ID Gene That Shows Progression in ALS Patients
http://consumer.healthday.com/Article.asp?AID=671494
TDP-43タンパク質の安定化が神経難病ALSの発症時期のカギ
理化学研究所(野依良治理事長)は、脳や脊髄の病巣に蓄積するTDP-43タンパク質※1の安定化が、全身の筋肉まひを起こす神経変性疾患「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」の発症時期を決定する要因であることを明らかにしました。理研脳科学総合研究センター(利根川進センター長)運動ニューロン変性研究チームの山中宏二チームリーダー、渡辺祥司研究員(現 同志社大学高等研究教育機構 助教)らによる成果です。
神経変性疾患の1つで、全身の進行性の筋肉まひを引き起こすALSには、非遺伝性と遺伝性があり、90%が非遺伝性です。ALS発症の原因は不明のままで、発症メカニズムの解明と有効な治療法の開発が望まれています。近年、ALSの病巣にTDP-43タンパク質が異常に蓄積することや、TDP-43遺伝子の変異が30種類以上あることが発見され、病態解明の手がかりを得ました。しかし、これらがどのようにして疾患の発症につながるのかについては未解明でした。
研究チームは、変異TDP-43遺伝子を持つ遺伝性ALS患者81人の臨床情報を解析しました。その結果、ALSの発症年齢が早い患者ほど変異TDP-43タンパク質の半減期※2は長くなり、変異TDP-43タンパク質が安定化することを見いだしました。さらに、TDP-43タンパク質を任意に安定化させることが可能な細胞モデルを作り、解析したところ、TDP-43タンパク質の安定化により、ALS 患者の病巣で見られるTDP-43タンパク質の生化学的特徴であるタンパク質の切断や不溶化を再現し、細胞毒性を招くことが分かりました。
今回、遺伝性ALSについての知見を得ましたが、ALSの90%を占める非遺伝性ALSにおいても、TDP-43タンパク質の安定化が、ALS発症に関わる重要な要因である可能性が考えられます。今後、この細胞モデルを用いて、TDP-43タンパク質の安定化が引き起こす運動神経変性に至る機序を解明することにより、ALSの発症メカニズムの解明が進むことが期待できます。
この成果は、JST戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)の研究領域「精神・神経疾患の分子病態理解に基づく診断・治療に向けた新技術の創出」における研究課題「孤発性ALSのモデル動物作成を通じた分子標的治療開発」(研究代表者:祖父江元名古屋大学教授)、文部科学省新学術領域研究「脳内環境」の支援を受けて行われました。なお、米国の生化学・分子生物学会誌『The Journal of Biological Chemistry』に2013年2月号に掲載されるに先立ち、12 月12日(日本時間12月13日)にオンライン版に掲載されました。


独立行政法人理化学研究所プレスリリース
http://www.riken.go.jp/r-world/research/results/2012/121218/image/121218.pdf
Nature Communications
http://www.nature.com/ncomms/journal/v3/n12/abs/ncomms2303.html


全身の筋力が衰える難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)のうち、9割を占める遺伝要因がないタイプは、脳や脊髄の運動神経細胞を死滅させる二つの主要なメカニズムが関連していることが分かった。
東京大大学院医学系研究科の郭伸客員研究員や山下雄也特任研究員らが18日付の英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに発表した。二つのメカニズムは、たんぱく質の部品を正しく作る酵素「ADAR2」の働きが低下することがきっかけで起きる。今後、この酵素の働きを高める薬の開発が考えられるという。
糖尿病治療薬が多発性硬化症の神経細胞死を遅らせる
たまとまさんからの情報です。いつもありがとうございます。
http://blogs.yahoo.co.jp/tamatoma8versionup/45160580.html


糖尿病治療薬「グリベンクラミド」の効果

ドイツとスイス、ベルギーの大学による国際研究チームは、多発性硬化症(multiple sclerosis;MS)の治療のための新しい手掛かりを発見した。英国科学誌「Nature Medicine」に11月18日、公表した。
研究チームは、糖尿病治療薬に承認されているグリベンクラミドで、神経細胞死を遅らせることに成功した。グリベンクラミドは安全でかつ互換性のあることも証明済みである。すぐにでも患者に投与できる可能性があるという。
細胞膜にある特定のチャネルが活動していなかった時に、マウスの神経細胞のダメージが鈍った。神経細胞の炎症が進行しているにもかかわらず、神経細胞が生き残り、イオンチャネルの不活性化が生じたのである。

(Wikiメディアより引用)

一過性受容体電位メラスタチン4(TRPM4)の役割
研究チームは、一過性受容体電位メラスタチン4(TRPM4)が多発性硬化症での神経細胞の減少においてどのような役割を果たしているのかを研究した。

マウス実験において、機能しているイオンチャネルを持つマウスと多発性硬化症に類似した神経変性疾患を持つ遺伝的に欠陥のあるイオンチャネルを持つマウスとを比較。

その結果、TRPM4を持たないマウスの病気は緩やかに進行。免疫系の過剰反応により組織内は炎症を起こしていたものの、神経細胞は生き残った。同様の反応がグリベンクラミドを投与した時に見られたのである。

ヒト細胞培養による実験
どうしてそうなるのか、ヒト細胞培養によって実験を行った。そこで、多発性硬化症における神経組織の慢性的炎症がTRPM4チャネルを恒久的に開くことが分かった。それにより、充電されたナトリウム原子が常に細胞に流れ込むのである。

イオンバランスを保つために、細胞はより多くの水を取得する。その結果、神経細胞は膨らみ、死ぬのである。神経細胞死に関するTRPM4チャネルの重要な役割は、これまでのところ知られていなかった。

多発性硬化症とは
多発性硬化症は中枢神経系の脱髄疾患の一つで、脳や脊髄に生じた炎症により、神経が障害される難病である。手足のまひや視力の低下などの重篤な症状が現れ、その症状は悪化と好転を繰り返す。

多発性硬化症になるはっきりした原因はまだ分かっていないが、自己免疫説が有力である。白血球やリンパ球などの免疫系が、自分の脳や脊髄を攻撃するようになるのである。

他の神経変性疾患に対しても効果がある可能性
研究において、イオンチャネルの薬理的遮断が原則的に可能であることを示した。TRPM4チャネルは、多発性硬化症に対する新薬への糸口というだけでなく、パーキンソン病やアルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの他の神経変性疾患に対しても効果的かもしれない。

研究チームは今後、効果をさらに高めたTRPM4阻害剤の開発にも取り組んでいく予定である。
http://www.qlifepro.com/news/20121213/diabetes-drug-slows-neurodegeneration-in-multiple-sclerosis.html
おしっこから幹細胞を生成する(中国)
「おしっこから幹細胞を生成する」全く信じられない話だが、これはれっきとした事実であるそうだ。科学誌『Nature Methods』によると、論文を発表したのは中国科学院広州バイオ医薬と健康研究院の研究員・裴端卿氏と潘光錦氏だ。
これは全く偶然の産物だったという。別の実験中に、サンプルのおしっこにある特殊な操作をしたところ、おしっこから分離した細胞を神経幹細胞に誘導することに成功したそうだ。
おしっこからの神経幹細胞の生成・人体への移植が可能になればこれまで治療が困難とされてきたパーキンソン病などの神経損傷、神経退行性疾患の疾病の有効な治療手段となる。
しかし、おしっこ由来の神経間細胞には、医療現場において大きなメリットがある。自身のおしっこから生成した細胞は移植の際、拒絶反応がないと考えられる点だ。また、ほぼ全ての患者から採取可能という点も重要である。
安全性が立証され、実用化されれば、今まで治療の術がないと諦めていた人たちにとって希望の光となるに違いない。今後に期待の技術である。

我国科学家成功从人尿液细胞中获得神经干细胞
http://news.xinhuanet.com/2012-12/09/c_113960647.htm

Generation of integration-free neural progenitor cells from cells in human urine
http://www.nature.com/nmeth/journal/vaop/ncurrent/full/nmeth.2283.html
神経細胞死を引き起こす新たな仕組みを発見
たまとまさんのブログより転載です。ありがとうございます。
http://blogs.yahoo.co.jp/tamatoma8versionup#45152685

米国ALS協会の援助を受けた研究チームが、神経細胞が細胞死リスクがある状態に置かれる重要なプロセスを発見し、本日付けのProceedings of the National Academy of Sciencesに掲載された。今回の発見においてはALS(筋萎縮性側索硬化症)及びFTD(前頭側頭型認知症)で異常が知られる数種類のタンパク質それぞれの関連性について研究が行われた。

米国ALS協会のチーフサイエンティストであるLucie Bruijn博士は「今回の発見により、神経細胞にとっての複数の危機的な要素を、神経細胞死につながる一本の線の上に並べる事ができる。」と述べている。

線上の最初のタンパク質はTDP-43で、これが欠失するとALSやFTDを引き起こす事は既に知られているが、今回新たにTDP-43が不足した場合にソルチリン(sortilin)という別のタンパク質が過剰に生産される事が判明した。研究チームの発見によると、生産された過剰なソルチリンの一部が不良品となっている。

正常なソルチリンも異常ソルチリンも、神経細胞の成長因子であるプログラニュリン(progranulin)と呼ばれる別のタンパク質に結合する。しかし過剰な正常・異常ソルチリンがプログラニュリンと結合すると、神経細胞は重要な成長因子を欠乏する事になる。このようにTDP-43の不足は正常・異常ソルチリンの過剰を引き起こし、ソルチリンの過剰は神経細胞に保護的に働くプログラニュリンの減少をもたらし、プログラニュリンの欠乏が神経細胞死につながる。
この研究はMayo Clinic(米国フロリダ州ジャクソンビル)のMercedes Prudencio博士及びLeonard Petrucelli博士、International Center for Genetic Engineering and Biotechnology(イタリア・トリエステ)のEmanuele Buratti博士の主導で行われた
Prudencio博士は米国ALS協会から、ALS研究の為の研究奨励金を受け取っている。米国ALS協会ではALS研究に新しいコンセプトや手法を導入する事を特に重視しており、このプロセスに若い研究者が重要な役割を果たしている。この基金は1998年にALSで亡くなったMilton Safenowitz氏を偲んでご家族によりGreater New York支部を通して提供された。

Bruijn博士は「米国ALS協会の支援がDr. Prudencio氏の研究、そして研究を通じてこの分野を前進させる助けとなった事を非常に嬉しく思う。今回の成果はALSやFTDにおいてどの様に神経細胞死が引き起こされているのかを理解し、この経路をターゲットとした治療法を開発するために非常に重要だ。」と述べている。

ALS発症にタンパク質分解を行うプロテアソームの異常が関与
ALS発症にタンパク質分解異常 京大らのチーム解明(2012年12月10日)

 プロテアソームを作れないマウスの神経細胞が減少する様子。左から6週、12週、40週(京都大提供)
 全身の筋肉が徐々に動かなくなる難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」の発症に、病巣でタンパク質を分解できなくなる異常が関与することを京都大や慶応大、新潟大などのチームがマウスを使って確かめ、10日発表した
 遺伝的な要因がない孤発性のALSでの成果で、米科学誌電子版に掲載された。チームの高橋良輔京大教授は「ALSは有効な治療法がないが、発症の仕組みのさらなる解明や治療法開発につながる可能性がある」としている。 ALSでは、神経細胞内にTDP43など複数のタンパク質が蓄積する。このタンパク質を分解できないことが発症の一因と仮定されるが、詳しい仕組みは不明。

京大プレスリリース
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2012/121210_1.htm

PS:様々な知見が出てきましたね!これでALSを治癒する準備が整いつつあります。もう少しです。元気になったら何がやりたいとか、何が食べたいとか考えてくださいね。


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左から高橋教授、田代教務補佐員、漆谷准教授


神経細胞内メカニズム(京都大学医学研究科臨床神経学)
プロテアソームと神経疾患について判りやすく書いてあります。ぜひ見てください。
http://www.neurol.med.kyoto-u.ac.jp/brainenvironment/J/conference/c20111005/pdf/no2.pdf
オートファゴソームとリソソームの融合因子の発見
東京医科歯科大学大学院・細胞生理学分野の水島昇客員教授の研究グループは、細胞分解システムであるオートファジーに必要な分子を発見しました。

ポイント●オートファジーは細胞内分解システムのひとつで、細胞の新陳代謝、神経変性抑制、腫瘍抑制、栄養飢餓適応反応などに重要です。
●オートファジーは、細胞内の一部を取り囲んだオートファゴソームと、分解専門の小器官であるリソソームが融合することで成立します。
●今回、オートファゴソームとリソソームの融合の鍵となる分子を発見しました。

1) 研究の背景
細胞が健全であるためには、細胞内のタンパク質や小器官が適切に分解され、常に新しい状態に保たれることが重要です。
オートファジー(自食作用)は、そのために必要な細胞内の大規模分解系のひとつです。まず、細胞内の一部を取り囲んだ袋状膜構造であるオートファゴソーム((直径約1μm)が形成されます。
次に、分解専門の小器官であるリソソームがオートファゴソームに融合すると、オートファゴソームの内容物が分解されます(図1参照)。
オートファジーは細胞の新陳代謝、胚発生、神経変性抑制、腫瘍抑制、栄養飢餓適応反応、細胞内病原体分解などに重要な細胞機能で、現在注目されている生命現象の一つです。
しかし、これまで細胞質を取り囲んだオートファゴソームがどのようにリソソームと融合するのかがわかっていませんでした。

2) 研究成果の概要
 オートファゴソームが完成すると、シンタキシン17という分子がオートファゴソーム表面に呼び寄せられることを発見しました(参考図2)。
シンタキシン17は、細胞内の小器官や小胞同士を融合させるのに必要な分子群(SNARE(スネア)と総称されます)の一つです。シンタキシン17はリソソームの表面に存在するVAMP8という別のSNARE分子と結合し、それがオートファゴソームとリソソームの融合を引き起こします。
オートファゴソーム表面に結合するためには、シンタキシン17分子の一部(カルボキシル末端の特殊な配列部分)がヘアピン型に折りたたまれることが必要であることがわかりました。
また、シンタキシン17は、完成前のオートファゴソームである隔離膜には結合できません。このことから、なぜリソソームは完成したオートファゴソームとだけ選択的に結合するのかという未解決の問題にも答えをだすことができました。
3) 研究成果の意義
リソソームは細胞内の分解工場にあたるため、リソソームとの融合は危険です。今回の発見によって、なぜオートファゴソームはリソソームと融合できる特別な能力を与えられているかがわかりました。
オートファジーの活性低下が神経変性疾患や老化の原因のひとつと考えられているので、その基本原理を理解しておくことが重要です。

4)参考図1.オートファジーによる細胞内分解のしくみ
 細胞質の一部(たんぱく質やミトコンドリアなどの細胞内小器官)がまず隔離膜によって取り囲まれ、オートファゴソームが形成されます。次にオートファゴソームと、分解酵素を含んだリソソームが融合することによってオートファゴソームの内容物がまとめて分解されます。
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参考図2.シンタキシン17によるオートファゴソームとリソソーム融合のしくみ(今回の発見)

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オートファゴソームが完成するとそこにシンタキシン17が呼び込まれます。シンタキシン17はリソソームに存在するVAMP8という分子と結合し、それがリソソームとオートファゴソームの融合を引き起こします。シンタキシン17は形成途中の隔離膜には結合しないので、なぜリソソームは完成したオートファゴソームとだけ融合できるのかという謎も解決しました。

PS:これで難病である神経疾患への治癒への道が近づいてきました。
東京医科歯科大学プレスリリース『 オートファゴソームとリソソームの融合因子の発見』
http://www.tmd.ac.jp/press-release/20121207/index.html
活性酸素による核酸の酸化に起因する神経変性のメカニズムを解明
九州大学(九大)は12月3日、代表的な酸化塩基である8-オキソグアニン(8-oxoG)のゲノムDNAへの蓄積を抑制する酵素(MTH1とOGG1)が効率よく神経変性を抑制するのに対し、MUTYHは8-oxoGに誤って取り込まれたDNAを構成する4つの塩基のうちの1つであるアデニンの塩基除去修復を介して神経細胞死とミクログリオーシスを誘導することを明らかにしたと発表した。
同成果は同大生体防御医学研究・ヌクレオチドプール研究センターの中別府雄作 主幹教授、同 盛子敬 助教らによるもの。詳細は米国科学雑誌「Journal of Clinical Investigation」に掲載された。

活性酸素ストレスは、神経変性疾患の原因の1つとして注目されているが、それがどのような分子メカニズムで神経細胞脱落を引き起こすかは明らかではない。パーキンソン病やアルツハイマー病、ハンチントン病など多くの神経変性疾患で神経細胞のミトコンドリアDNAにグアニン塩基の酸化体である8-oxoGが多量に蓄積することが報告されているため、8-oxoGが酸化ストレスによる神経変性のマーカー(指標)の1つとして注目されるようになっているが、神経変性の原因となるかどうかは不明であった。

これまで研究グループは、酸化ストレスに曝された細胞内でヌクレオチドプール中のdGTPGTPGTP(デオキシグアノシン三リン酸:ヌクレオチドの1つ)が酸化されて8-oxo-dGTPとなり、DNA複製に際して核やミトコンドリアDNAに取り込まれて細胞死の原因となることを明らかにしてきた。

今回の研究では、活性酸素ストレスによって引き起こされる神経変性疾患モデルとして、サトウキビなどに付着するカビが産生するミトコンドリア神経毒3-ニトロプロピオン酸(3-NP)の動物投与により、引き起こされるハンチントン病モデルを用いてMTH1、OGG1、MUTYHの欠損の影響解析を実施した。ちなみに3-NPはミトコンドリアのコハク酸脱水素酵素の不可逆的阻害剤であり、ミトコンドリアでの活性酸素生成を亢進させ、ヒトやサル、マウスが摂取すると線条体の変性を引き起こし、ハンチントン病様の神経機能障害を発生するものである。

その結果、MTH1、OGG1、MUTYHの3つの遺伝子をそれぞれ単独に欠損したマウスとOGG1/MTH1の2重欠損マウス、して野生型マウスに3-NPを投与したところ、2重欠損マウスが最も重篤な運動機能障害を呈し、線条体に高度な8-oxoGの蓄積を伴う神経細胞脱落を呈することが明らかとなった。3-NPによる8-oxoGの蓄積は線条体変性の早期に主に中型有棘神経細胞のミトコンドリアDNAに認められ、ミトコンドリア機能障害を介してカルシウムで活性化される細胞内タンパク質分解酵素の一種であるカルパイン活性化を伴う神経細胞死を引き起こした一方、線条体変性の後期には神経細胞脱落部に増生したミクログリアの核DNAへの8-oxoG蓄積が認められ、単量体のADP-riboseを結合させて重合体のpoly[ADP-ribose]を合成する酵素「poly[ADP-ribose]ポリメラーゼ(PARP)」の活性化とアポトーシス(プログラム細胞死)誘導因子(AIF)の核移行が認められたという。また、3-NPによる線条体神経細胞脱落、ミクログリオーシス、そして運動機能障害のいずれもカルパイン阻害剤、あるいはPARP阻害剤の投与により有意に軽減されることも確認されたという。
さらに、OGG1単独欠損マウスとOGG1/MUTYH2重欠損マウスの3-NP投与に対する応答を比較したところ、2重欠損
マウスにおいては運動機能障害が顕著に軽減し、線条体における神経細胞脱落およびミクログリオーシスもほとんど認められなかったほか、OGG1欠損マウス線条体の中型有棘神経細胞のミトコンドリアDNAとミクログリアの核DNAに認められた塩基除去修復の過程で生じる一本鎖切断の蓄積も2重欠損マウスにおいては完全に抑制されていることが確認された。

研究グループではこれまでの研究で、ヒトMTHを高発現するトランスジェニックマウスが3-NPによる8-oxoGの線条体蓄積と線条体変性に対して顕著な抵抗性を示すことを報告しているが、今回の2重欠損マウスが最も高いレベルの8-oxoGをミトコンドリアDNAに蓄積し、3-NPの神経毒性に対して最も高い感受性を示す事実と合わせて考えると、ヌクレオチドプール中のdGTPの酸化で生じた8-oxo-dGTPがミトコンドリアDNA中に取り込まれて蓄積したと結論付けられるという。

細胞分裂しない神経細胞では核DNAは複製されないが、ミトコンドリアは神経細胞の機能維持に不可欠なエネルギーを供給するためにそのDNAを常に複製し、新たなミトコンドリアをシナプスなどに供給している。ヌクレオチド
プール中に生じた8-oxo-dGTPがDNA中に取り込まれるためにはDNAの複製が不可欠だが、3-NPを投与した2重欠損マウスの神経細胞では複製するミトコンドリアDNAにのみ8-oxoGが高度に蓄積し、その後の複製に際してDNA中に
存在する8-oxoGに対して取り込まれたアデニンをMUTYHが除去することで開始される塩基除去修復の中間産物である一本鎖切断の生成が過剰となり、ミトコンドリアDNAが分解枯渇したと考えられると研究グループではしており、その結果として、ミトコンドリア膜電位が維持されなくなり、細胞質に放出されたカルシウムによって活性化
されたカルパインに依存した神経細胞死が誘導されることとなるとしている。

一方、神経細胞死は炎症反応としてミクログリアの活性化と増殖を誘発するが、活性化ミクログリアはそれ自身がNADPH oxidase(NOX)などにより活性酸素を生成するため、ミクログリアのヌクレオチドプールにも8-oxo-dGTPが蓄積。ミクログリアはその増殖に際して核DNAを複製することから、ヌクレオチドプールからその核DNA中に8-oxoGが取り込まれて蓄積され、核DNA中に多量に蓄積した8-oxoGもその後の複製に際してアデニンと対合し、MUTYHによる塩基除去修復の標的となるため、核DNAの新生鎖に一本鎖切断が蓄積し、PARPが活性化され、その下流でミトコンドリアに局在するAIFが切断され核に移行してアポトーシスを誘導することが明らかとなった。
このような状況はミクログリオーシスをさらに増悪させ、線条体の変性を著しく促進するものと考えられるという。8-oxoGはアルツハイマー病やパーキンソン病患者の剖検脳の解析でも神経細胞のミトコンドリアに顕著に蓄積 することが知られている。研究グループでは、このような神経変性疾患や活性酸素ストレスが関わるその他の臓器の変性疾患の発症にも今回明らかとなった分子メカニズムが関与する可能性が強く示唆されるとしており、ヒトのMTH1、OGG1、MUTYH遺伝子にはさまざまな遺伝子多型が報告されており、その解析から神経変性感受性の診断が可能になることが期待されるとする。また今後は、MTH1とOGG1の発現誘導および機能亢進、MUTYHの発現、機能抑制を分子標的とした新たな創薬により、老化とともに発症頻度が増加する変性疾患の新たな治療戦略の提供が可能になるものとの期待も示している。

▽九州大学プレスリリース
http://www.kyushu-u.ac.jp/pressrelease/2012/2012_12_03.pdf
肥満状態の肝臓でのインスリンの働きの低下は不良タンパク質の分解の異常が原因
肥満状態の肝臓でインスリンの働きが低下しているのは、細胞内の品質不良なタンパク質を分解する装置の異常が原因であることを、金大の研究チームが4日までに解明した。インスリンの働きの低下は、メタボリック症候群や糖尿病を促進する原因の一つとされており、今回の発見が新たな治療法の開発につながることが期待される。
 インスリンは、糖の吸収やエネルギーの蓄積に重要な役割を担うホルモンで、体内の血糖値を低下させる。
栄養の取りすぎや肥満がインスリンの働きを妨げることは知られているが、その仕組みは解明されていなかった。
 研究チームはマウスと細胞による実験を実施。肥満状態の肝臓では、細胞内の品質不良なタンパク質を分解する装置「プロテアソーム」の機能が低下。品質不良なタンパク質が分解されずに、細胞内のタンパク質合成を担う「小胞体」に蓄積され、インスリンの働きを妨げていることを証明した。小胞体に蓄積された不良なタンパク質の質を改善すると、インスリンの働きが向上することも確かめた。
 医薬保健研究域医学系の篁俊成(たかむらとしなり)准教授、金子周一教授らによる研究で、成果は3日付の米国糖尿病学会誌電子版に掲載された。

金沢大学プレスリリース
http://www.kanazawa-u.ac.jp/university/administration/prstrategy/eacanthus/1212/04.html

神経細胞内メカニズム(京都大学医学研究科臨床神経学)
プロテアソームと神経疾患について判りやすく書いてあります。ぜひ見てください。
http://www.neurol.med.kyoto-u.ac.jp/brainenvironment/J/conference/c20111005/pdf/no2.pdf
ALS患者用PC操作装置を開発
全身の筋肉が動かなくなるALS=筋萎縮性側索硬化症の患者向けに、腕を動かそうとするときに皮膚の表面に流れるごく弱い電流を検出して、パソコンを操作する装置を筑波大学などの研究グループが開発しました。

筑波大学の山海嘉之教授などの研究グループが開発した装置は、腕を動かそうとするときに運動神経から皮膚の表面に流れるごく弱い電流を検出し、パソコンの画面に表示された文字盤から文字を指定していくものです。
2日夜、東京で開かれたグループの会合で、重度のALSの患者が装置の実演を行いました。病気の進行で動かなくなった腕に電流を検出する電極の入ったシートを貼り、スタッフの指導で文字を指定する練習をすると、5分ほどで「これは夢と現実のかけはしです」という文章を入力することに成功しました。
ALSの患者が意思を伝えられるよう、これまで、指やあごのわずかな動きを利用したパソコンの操作技術が実用化されていますが、症状が進んだ患者は使えませんでした。患者や家族などで作る日本ALS協会の川口有美子理事は「体がまったく動かない患者でも意思疎通が図れる画期的な装置で、一刻も早く実用化してほしい」と話していました。
研究グループでは、今後、装置の改良を重ねることにしていて、山海教授は「患者会の協力を得て、1年以内に実用化にめどをつけたい」としています。
NHKニュース(動画あり)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121203/k10013907921000.html
パーキンソン病のサル 骨髄幹細胞で症状改善 東北大など
パーキンソン病を発症させたサルの骨髄に含まれる幹細胞から神経伝達物質ドーパミンを分泌する神経細胞を作り、同じサルの脳内に移植して症状を改善させることに、東北大や理化学研究所などのチームが成功、3日付の米科学誌電子版に発表した。
手の震えや小刻みな歩行などの運動障害が現れるパーキンソン病は、脳内でドーパミン量が低下して起きるとされるが、根本的治療法はない。骨髄は白血病の治療で採取方法が確立しており、東北大の出沢真理教授(細胞組織学)は「近い将来に人間への応用が期待できるだろう」と話している。
チームはパーキンソン病のサル5匹の腰骨に針を刺して骨髄液を採取。骨や神経のもとになる間葉系幹細胞を分離し、さまざまな物質を加えながら培養、ドーパミン細胞に成長させた。
この細胞をドーパミンが減った脳の部分に移植すると、移植4カ月後ぐらいから、餌を取ろうとする手の動きが改善した。少なくとも8カ月後までは効果が持続、解剖すると移植した細胞が生着している様子を確認できたという。 自らの細胞のため拒絶反応がなく、がんにもならなかった。
パーキンソン病の治療研究では、京都大のチームが人間の人工多能性幹細胞(iPS細胞)や胚性幹細胞(ES細胞)をドーパミン細胞に成長させてサルの脳に移植し、症状を改善させることに成功している。

河北新報 2012年12月04日火曜日
http://www.kahoku.co.jp/news/2012/12/20121204t15005.htm
論文(英語)Autologous mesenchymal stem cellderived dopaminergic neurons function in parkinsonian macaques
http://www.jci.org/articles/view/62516
パーキンソン病治療へ光:自己の細胞を用いた新たな治療法の可能性
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20121203_03web.pdf

注記:ドーパミンと神経疾患について
パーキンソン病やアルツハイマー病、ALS、てんかんは、その種の病気です。例えばパーキンソン病は、中脳の黒質と呼ばれる部分の神経細胞が侵され、ドーパミンという神経伝達物質が減っていき、手足などの運動障害が徐々に進行して行く病気です。
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