ALS(筋萎縮性側索硬化症)に負けないで
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ALSにおける有害蛋白質の蓄積機序の一部が判明
・ALS NEWS TODAYの3月20日付記事からです

▽最新号のMolecular Cell誌に掲載された報告によると、C9orf72遺伝子関連ALSにおける異常蛋白質の凝集機序が明らかになりました

▽ストレス顆粒は、細胞がストレス下において形成される、RNA結合蛋白質の巨大な液滴様の凝集体です。ストレス顆粒は細胞のストレス応答において重要な役割を果たします

▽正常細胞においては、ストレス顆粒の形成は緻密に制御されており、形成と分解は可逆的です。

▽しかしALSにおいては、ストレス顆粒形成が制御されておらず、有害RNA結合蛋白質の凝集体のとなります

▽これら凝集体は、ALSの病態において重要な役割を果たし、ストレス顆粒関連蛋白質の変異の一部が家族性ALSの病因となることがしられています

▽一部の家族性ALSの病因であるC9orf72遺伝子変異はストレス顆粒の形成異常と関連します。この遺伝子異常によりストレス顆粒の粘稠度が増し、より固体に近い性質としてふるまうことがしられています。

▽今回、研究者らは、C9orf72遺伝子変異により生じた異常蛋白質、特にアルギニンが豊富なジペプチド繰り返し蛋白質により、RNA蛋白質の凝集が生じ、ストレス顆粒の粘稠度が変化することを明らかにしました

▽このように分子病態機序が明らかになることにより、異常蛋白質の凝集過程を阻害する治療法の開発が進展することが期待されます。

引用元
https://alsnewstoday.com/2017/03/20/new-toxic-pathway-identified-for-protein-aggregates-in-neurodegenerative-disease/
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酵母のミトコンドリアが細胞質の蛋白質凝集体を消失させる
・ALS RESEARCH FORUMの3月4日付記事からです

▽3月1日付のNature誌の報告です。酵母においては、凝集蛋白質は、ミトコンドリアの外膜に集まり、その後シャペロンが蛋白質の凝集構造をほどき、膜輸送孔から蛋白質がミトコンドリアマトリックス内に輸送され、ミトコンドリア内において分解されることがわかりました。

▽細胞質の守護者としてのミトコンドリア(MAGIC:mitochondria as gurdian in cytosol)と名づけられたミトコンドリアのこの機能はヒトにおいても存在すると考えられています

▽ミトコンドリアは電子伝達系を有し、ATPを産生し、細胞にエネルギーを供給する機能を有することで有名です。しかし、今回の報告により、別の機能も有することが明らかになりました

▽研究者らはαーシヌクレインやTDP-43などの凝集体についてもミトコンドリア膜に集まり、エネルギー産生に負荷をかけると考えており、ミトコンドリアの機能低下により有害蛋白質の除去が障害され、病態発現につながるのではないかと考えています。

▽今後ミトコンドリアと神経変性疾患の病態との関連性がさらに明らかになり、治療法開発につながることが期待されます

引用元
http://www.alsresearchforum.org/its-magic-yeast-mitochondria-make-cytosolic-protein-aggregates-disappear/
VEGFはALS細胞モデルにおけるTDP-43凝集を緩和する
▽脊髄運動神経細胞の細胞質におけるTDP-43やFUSの異常局在化は、ALSの病態として観察されます。今回研究者らは孤発性ALSの細胞モデルを用いて、VEGFの効果を検証しました

▽運動神経細胞モデルであるNSC-34細胞を、ALS患者由来の髄液に暴露し、その後にVEGFを投与しました

▽髄液暴露後においては、TDP-43およびFUS蛋白質の細胞質への異常局在化が観察されました。しかし、その異常局在化はVEGF投与により抑制されました

▽同時に核膜の形態的異常なども改善しました。しかしながら、凝集蛋白質の細胞質への異常局在化は完全には正常化はしませんでした。

▽以上の結果は、VEGFがTDP-43およびFUSに起因した病態を緩和することができる可能性を示唆しており、今後の治療的応用が期待されます

(この研究はインド、National Institute of Mental Health and Neuro SciencesのShantanuらにより報告され、平成29年2月2日付のJournal of Chemical Neuroanatomy誌に掲載されました)
東北大学から家族性ALSの原因遺伝子についての報告
・麦酒王さんからご提供いただいた話題です

・東北大学が日本人における家族性ALSの原因遺伝子を解析し、発症に関わる遺伝子変異を複数明らかにしました
引用元
http://s.news.mynavi.jp/news/2017/02/01/087/index.html

・今後の治療法開発に結びつくことが期待されます

・麦酒王さん、ありがとうございました
補体シグナル経路の抑制はALSモデルマウスの病態を改善する
▽近年、ALSにおいては補体系の活性化が報告されており、活性化産物のC5aは受容体であるC5aR1を通じて病態進展作用を有する可能性があることが報告されています

▽今回研究者らはC5aR1の拮抗薬であるPMX205を、発症前および発症後のモデルマウスに経口投与し効果を検証しました

▽その結果、発症前に投与した群では、発症遅延効果と、有意な筋力改善効果、進展遅延効果などが観察されました。

▽この効果は、炎症促進性の単球や顆粒球の減少や、ヘルパーT細胞の増加などを伴うものでした。発症3週後に投与開始した群においても、病態緩和作用や生存期間延長効果がみられました

▽以上の結果は補体系C5aR1シグナル経路を阻害することが、ALSにおいて治療的に作用する可能性を示唆するものです

(この研究はオーストラリア the University of QueenslandのLeeらにより報告され、平成29年1月27日付のBritish journal of Phamacology誌に掲載されました)

ALSに関連したRNA結合蛋白質のZfp106はC9orf72遺伝子変異に起因した細胞毒性から細胞を保護する
C9orf72遺伝子の第1イントロンの6塩基(GGGGCC)繰り返し配列の過剰伸長は家族性ALSの原因となります。しかし反復配列に起因した病態については十分わかっていません。

▽これまでに、反復配列を有するRNAが凝集体を形成し、RNA結合蛋白質の結合が阻害される結果、運動神経細胞でのRNA代謝が変化し、細胞傷害が生じるメカニズムが提唱されてきました

▽今回、研究者らは、GGGGCC反復配列RNAに特異的に結合するRNA結合蛋白質であるZfp106を同定しました。

▽Zfp106は、多くのRNA結合蛋白質と相互作用をし、その中にはTDP-43とFUSも含まれます。

▽Zfp106 ノックアウトマウスは重度の運動神経変性を示しました。Zfp106はC9orf72遺伝子変異ショウジョウバエALSモデルにおいて、神経毒性を抑制することが示されました。

▽Zfp106はALSの治療戦略において、有望な研究対象となる可能性があります

(この研究は、アメリカ、University of CaliforniaのCelonaらにより報告され、平成29年1月10日付のElife誌に掲載されました)

神経毒性を有するアストロサイトは活性化ミクログリアにより誘導される
▽活性化アストロサイトは中枢神経損傷や疾患により生じます。しかしその機能についてはよくわかっていません。

▽今回、研究者らは、活性化アストロサイトのサブタイプであるA1 アストロサイトが、神経炎症に関与する活性化ミクログリアにより誘導されることをみいだしました。

▽活性化ミクログリアは、IL-1α、TNF、C1qを分泌することによりA1 アストロサイトを誘導します。これらのサイトカインはA1 アストロサイトの誘導に必要かつ十分な物質となります

▽A1 アストロサイトは神経成長やシナプス形成、神経生存を支持する機能を喪失し、神経細胞とオリゴデンドロサイトの細胞死をもたらします

▽A1 アストロサイトの生成を阻害したところ、生体内での軸索切断した中枢神経細胞の細胞死が妨げられました。

▽さらに、ALSを含む様々な神経変性疾患において、A1 アストロサイトが多く誘導されていることがわかりました

▽以上の結果は、神経変性疾患においてA1 アストロサイトが神経細胞死に寄与していることを示唆するものであり、今後の治療法開発において新たな視点を提供するものです

(この研究はアメリカ、Stanford UniversityのLiddelowらにより報告され、平成29年1月18日付のNature誌に掲載されました)
ALSの病態をさらに解明(東大グループなど)
・かきのたねさんからご提供いただいた情報です

・グルタミン酸AMPA受容体のカルシウム透過性異常が孤発性ALSの病態に関与することを報告してきた東大などの研究グループが、さらに病態の詳細なメカニズムについて明らかにしました。
http://www.m.u-tokyo.ac.jp/news/press.html#20170104

・今後病態の全容が明らかになり、治療に結びつくことが期待されます

・かきのたねさん、ありがとうございました
筋線維はALSの神経筋接合部変性遅延のためFGFBP1を分泌する
▽神経筋接合部の発達と維持のために筋肉が分泌する因子についてはよくわかっていません。今回研究者らは筋線維が神経筋接合部においてFGFBP1(fibroblast growth factor binding protein 1)を分泌することをみいだしました

▽発達段階においてFGFBP1発現は増加しますが、加齢やALSモデルマウスにおいては神経筋接合部変性に先駆けて、FGFBP1の発現が減少することがわかりました

▽FGFBP1を除去すると、神経筋接合部の構造異常が発達段階のマウスにおいてみられました。またSOD1変異ALSモデルマウスにおいてFGFBP1を除去すると、神経筋接合部変性が促進しました

▽さらに、FGFBP1発現は、骨格筋と神経筋接合部におけるTGF-β1の蓄積により阻害されることがわかりました

▽以上の結果は、FGFBP1および、TGF-β1が神経変性疾患において神経筋接合部変性を遅延させる治療的ターゲットとして有望である可能性を示唆するものです

(この研究は、アメリカ、Virginia Tech Carilion Research InstituteのTaetzschらにより報告され、平成29年1月4日付のJournal of Neuroscience誌に掲載されました)
バロー神経研究所とIBM Watson HealthがALSの新規原因遺伝子候補を同定
▽バロー神経研究所とIBM Watson HealthはALSと関連性のあると考えられる新規遺伝子を同定したことを公表しました

▽この発見が、新規治療ターゲットの発見につながることが期待されています

▽今回の発見は、人工知能であるIBM Watsonの力によるものです。研究者らは今後、IBM Watsonを治療ターゲットや新規治療法の発見のために応用していきたいとしています

▽バロー神経研究所とIBMは昨年から共同研究を開始し、IBM Watsonの機械学習や自然言語処理などの認知処理技術が、病態関連蛋白質の探索のために応用されました

▽その結果、1ヶ月ほどで約1500の遺伝子がALS関連遺伝子候補として抽出されました。精査の結果、上位10個の遺伝子候補のうち8つがALSと関連していることが明らかになりました。

▽さらに5つは今回の発見で初めて関連性が明らかになった遺伝子でした。人工知能のアルゴリズムを使用しなければ、このような発見のためにはさらに年単位の時間を要したと考えられるとのことです。

▽今後は治療薬候補の同定などにも応用が期待されています

引用元
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2016-12/sjha-bin121416.php
ALSにおいて保護的作用を有する蛋白質を同定
・NEWS MEDICALの11月18日付記事からです

▽Virginia Techの研究者らは、ALSにおいて神経筋接合部の保護作用を有する可能性のある内因性物質を同定しました。この結果は最新号のThe Journal of Neuroscience誌に掲載されます。

▽その物質はFGFBP1とよばれる成長因子であり、通常筋繊維から分泌され、神経筋接合部を維持する機能を有すると考えられています

▽ALSモデルマウスでは、免疫系に関与するTGF-βの産生亢進がみられ、TGF-βにより筋線維から成長因子の分泌が阻害されていることがわかりました。TGF-βは病態進展に伴い分泌されますが、シナプスに蓄積し、FGFBP1の産生を阻害するとのことです。

▽これらの蛋白質をターゲットにし、シナプス機能を保持することにより治療的な効果が期待できる可能性があります。

引用元
http://www.news-medical.net/news/20161118/Scientists-identify-naturally-occurring-molecule-that-plays-protective-role-in-ALS.aspx
名古屋大学からの研究報告
・名古屋大学のPress Releaseからです

・名古屋大学などからなる研究グループは、家族性ALSの病因となりうる2つの遺伝子変異(SOD1変異、SIGMAR1変異)において、共通した病態機序が存在することをみいだしました。

引用元
http://www.nagoya-u.ac.jp/about-nu/public-relations/researchinfo/upload_images/20161108_riem.pdf#search='mitochondriaassociated+membrane'

・今後の研究の進展が期待されます
孤発性ALSにおける遺伝子変異の探索
・ALS NEWS TODAYの11月7日付記事からです

▽ドイツで行われた研究により、孤発性ALS患者における、神経変性疾患に関連した遺伝子変異の保有率が調べられました

▽約10%のALS患者が家族性であり、残りの患者は孤発性ないし非遺伝性ALSといわれています。SOD1遺伝子変異がALSの病因として同定されて以降、現在までに30種類以上の遺伝子変異が家族性ALSの発症に関連していることが報告されています

▽今回研究者らは80名のALS患者(92.5%が孤発性)を対象に、既に知られているALS関連遺伝子の変異の保有率について調べました。

▽その結果、60%(48名)の患者の血液サンプルにおいて、ALS発症に関連する54の遺伝子変異の存在がみいだされました。

▽同時に研究者らはC9orf72遺伝子の繰り返し配列の伸長数についても調べました。その結果、5名の孤発性ALS患者において過剰伸長が、4名では中等度の伸長がみいだされました。

▽以上の結果は、一部の家族性ALS患者においてみられうる遺伝子異常が、孤発性ALS患者においても存在しうることを示唆しています

▽さらに、15名の患者においては、少なくとも2つのALS関連遺伝子変異を同時に保有していました。保有する遺伝子変異の数が多いことは、病態がより重篤であることと関連していました。

▽また、ALS以外の神経変性疾患と関連した遺伝子変異も12名の患者でみられました。このことはALSが他の神経変性疾患と分子病態機序を共有しているとの仮説を支持するものです

▽このような研究が進展することにより、ALSに対して、より個別化した医療を提供する糸口になることが期待されます。

引用元
https://alsnewstoday.com/2016/11/07/new-als-gene-variants-identified-many-in-sporadic-als-patients
G-CSFはSOD1変異モデルマウスの骨格筋機能不全を改善する
▽G-CSF(Granulocyte Colony-Stimulating Factor)はSOD1変異モデルマウスの病態改善効果があることが報告されてきました。しかしながら、G-CSFが骨格筋や筋芽細胞に直接的な効果を有するのかどうかはよくわかっていませんでした

▽今回、研究者らは、G-CSFとその類似体であるpegfilgrastim(PEGF)のSOD1変異モデルマウスの骨格筋マーカーや筋芽細胞に与える影響について調べました

▽その結果、PEGFは、モデルマウスにおいてその受容体であるCsf3rの発現増加をもたらし、変異SOD1蛋白質に起因した骨格筋マーカーの増加を減少させることがわかりました。さらに筋芽細胞の増殖を直接的に刺激することがわかりました

▽以上の結果は、G-CSF類似体であるPEGFがALSモデルマウスにおいて病態改善効果を有することを示唆しており、G-CSFとPEGFが骨格筋における直接的な病態緩和作用を有することを示唆するものです

(この研究は、スペイン、Universidad de Zaragoza-CITAのRandoらにより報告され、平成28年8月20日付のNeurodegenerative Diseases誌に掲載されました)
BDNFはALS細胞モデルの機能的回復を促進する
▽ALSにおいては、BDNF、IGF-1、FGF-2、VGFなどの神経栄養因子のmRNA濃度が減少していることが報告されています。孤発性ALS患者由来の髄液を用いた細胞実験においても同様の現象が再現されています

▽今回、研究者らは孤発性ALSの細胞モデルを用いてBDNFの作用について調べました。

▽ALS患者由来の髄液に暴露されたNSC-34細胞を用いて、内因性BDNF発現量、BDNF受容体のTrkB、リン酸化ニューロフィラメントなどが測定されました

▽その結果、モデル細胞においては内因性BDNF発現量の減少がみられました。BDNF投与により、減少していた内因性物質の発現量の回復がみられました。またカルシウム代謝の正常化によるアポトーシスの抑制作用も推測されました。一方で細胞内器官の構造変化については部分的にしか回復しませんでした

▽以上の結果は、BDNF投与が部分的に変性変化を改善しうる可能性を示唆するものです。しかし全ての変化を改善しうるわけではないことから、BDNF以外の栄養因子の投与も必要である可能性が示唆されました。BDNFのALSに対する有効性に関する臨床試験の結果が芳しくなかった理由の1つである可能性があります。

(この研究は、インド、National Institute of Mental Health and NeurosciencesのShruthiらにより報告され、平成28年9月13日付のNeurodegenerative Diseases誌に掲載されました)
特定のRNA結合蛋白質がALSの一部の病態に関与する可能性
・ScienceDailyの10月20日付記事からです

▽遺伝性ALSはALS全体のわずか10%を占めるのみですが、それらの多くがRNAに結合する蛋白質の変異に起因するものです。カリフォルニア大学の研究者らは、今回RNA結合蛋白質であるhnRNP A2/B1の変異に起因したALSの病態について調べました

▽10月20日付のNeuron誌に公表された結果です。研究者らは、まずALS患者の皮膚検体を採取し、hnRNP A2/B1変異の有無について調べました。その結果4名中3名においてこの蛋白質の遺伝子変異がみられました。

▽さらに、研究者らは、採取した細胞からiPS細胞を作成し、そこから運動神経細胞を分化誘導しました。この細胞における変異hnRNP A2/B1蛋白質の影響を調べるために、数千種類の遺伝子の活性が調べられ、健常者と比較されました。

▽その結果、ALSに関連したhnRNP A2/B1変異は、核内の不溶性hnRNP A2/B1蛋白質の増加によると思われる、RNAの広範なスプライシングの異常をもたらし、運動神経細胞死をもたらすことが明らかになりました

▽また、ALS患者由来の運動神経細胞をストレス下に暴露すると、健常者由来細胞と比較して、hnRNP A2/B1蛋白質がストレス顆粒中に凝集しやすいことが明らかになりました。

▽ストレス起因性の過剰反応を弱めるような治療戦略や、これらRNAをターゲットにした治療法開発が、異常蛋白質の発生を防ぎ、治療戦略として有望な可能性があります

引用元
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/10/161020120832.htm
C9orf72蛋白質はコフィリンと相互作用し運動神経細胞におけるアクチンの動態に影響を与える
C9orf72遺伝子のイントロン領域における6塩基繰り返し配列の過剰伸長はALSと前頭側頭型認知症をもたらす遺伝子異常としてしられています。しかし、ALSの病態を主因となるものが、機能喪失なのか、過剰伸長RNAなのか、⾮ATG依存性翻訳によるジペプチドなのか、よくわかっていません。

▽今回、研究者らは、運動神経細胞におけるC9orf72のインタラクトーム解析を行い、C9orf72蛋白質がコフィリンやその他のアクチン結合蛋白質との複合体中に存在することを見出しました

C9orf72遺伝子除去運動神経や、ALS患者由来リンパ芽球、患者iPS細胞由来運動神経細胞においては、コフィリンのリン酸化が亢進していました。C9orf72蛋白質は低分子GTP結合蛋白質であるArf6とRac1の活性を調節し、LIMK1/2(LIM-kinases 1および2)の活性亢進をもたらしました。このため、C9orf72遺伝子を除去すると、運動神経における軸索のアクチン活性が減弱することがわかりました。

▽C9orf72蛋白質は、正常機能として、軸索のアクチン動態を制御している低分子GTP結合蛋白質の機能を調整していることがわかりました。

(この研究は、ドイツ、University Hospital of WuerzburgのSivadasanらにより報告され、平成28年10月10日付のNature Neuroscience誌に掲載されました)
血液中の抗体がALSのバイオマーカーや重症度の指標になる可能性
・ALS NEWS TODAYの10月6日付記事からです

▽sulfoglucuronosyl paragloboside (SGPG) と呼ばれる糖脂質に対する抗体の一群は神経疾患と関連があることが指摘されてきました。

▽SGPGは運動神経細胞膜に発現し、免疫系の異常により抗SGPG抗体が産生され、運動神経を攻撃する可能性があります

▽これまでALS患者の一部において、抗SGPG抗体の存在が指摘されてきました。今回、研究者らは113名のALS患者と50名の健常者を対象に抗SGPG抗体の存在の有無などを比較しました。

▽その結果、ALS患者の13%において抗SGPG抗体が検出されました。またALS患者において、高齢であるほど、また疾患の重症度が高いほど、抗SGPG抗体の存在率が高まりました。抗SGPG抗体の存在は、ALSのバイオマーカーになりうるのみならず、新たな治療戦略の開発においても有用である可能性があります。

引用元
https://alsnewstoday.com/2016/10/06/antibodies-may-serve-as-biomarkers-diagnosing-als-and-disease-severity
オリゴデンドロサイトと運動神経細胞死の関連性
▽オリゴデンドロサイトはALSの病態に寄与している可能性が近年報告されています。今回研究者は試験管中での実験によりSOD1変異マウス由来のオリゴデンドロサイトが、健常マウスの運動神経細胞の過活動性をもたらし、運動神経細胞死をもたらすことをみいだしました

▽さらにヒトALS患者由来のオリゴデンドロサイトを作成し、それらの培養液を投与した場合や、共に培養した場合に、運動神経細胞死が生じることがわかりました。

▽培養液による運動神経細胞死は、乳酸産生と放出の減少と関連していることがわかりました。一方共生培養した際には乳酸の産生とは関連せず、可溶性因子以外の関与が考えられました。

▽ヒトSOD1ショートヘアピンRNAを投与し、オリゴデンドロサイトが未成熟な段階で、SOD1遺伝子の発現阻害をしたところ、運動神経細胞死が阻害されました。一方オリゴデンドロサイトが成熟後に投与しても、効果はありませんでした。

▽早期からのSOD1遺伝子のノックダウンは細胞毒性を回復しましたが、C9orf72遺伝子の過剰伸長を有する細胞においては、効果はみられませんでした。

▽以上の結果は、SOD1遺伝子変異は直接的ないし間接的にオリゴデンドロサイトの毒性発揮に関与しており、早期からのSOD1阻害により病態改善効果が期待できる可能性を示唆するものです

(この研究は、イギリス、University of SheffieldのFerraiuoloらにより報告され、平成28年9月29日付のPNAS誌に掲載されました)
蛋白質凝集を阻害する新たな発見
・ScienceDailyの9月22日付記事からです

▽ノースカロライナ大学の研究者らは、SOD1蛋白質凝集による病態が、SOD1蛋白質の安定化により改善しうることを示し、Structure誌に公表しました。

▽今回研究者らは、SOD1蛋白質の安定化が運動神経保護作用を発揮することを示したのみならず、初めてSOD1蛋白質を安定化させる変異をもたらす方法を示しました。

▽この変異はリン酸化を模倣する変異(phosphomimetic mutation)であり、正常細胞において内因性に備わった蛋白質凝集阻害作用であると考えられます。

▽SOD1蛋白質のリン酸化機構について理解することは、細胞が毒性を有するSOD1蛋白質の凝集に対してどのように対処しているかについての知見をもたらすのみならず、新たな治療法開発の視点を与えうるものです

▽SOD1蛋白質では二量体を形成し、正常機能を発揮しますが、三量体を形成した場合に、毒性を発揮することが推測されています。研究者らは特定の部位のリン酸化により三量体形成を阻害し、安定化させうることをみいだしました。

▽細胞モデルでの検証においても、変異SOD1蛋白質にリン酸化模倣変異を導入したところ、病態が改善し、細胞死を防ぐことができました。

▽SOD1変異に起因したALSは全体の1-2%を占めるのみですが、その他のALSにおいても、SOD1蛋白質の凝集が病態に関与することが報告されており、この治療戦略が治療的に有効である可能性もあります。

引用元
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/09/160922124305.htm
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